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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
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イケメン二人に挟まれる予定の私っ!

 人の成長には痛みを伴う物だと思うから、戦闘の指導をして貰えるなら痛みがある方が良いと思う。

特に私の場合は前の世界で、小さい頃から自由何て無くて食べる物も食べられず飢えて来たけど、痛みは私を生かしてくれたし、これがあったから大人になって、様々な物を奪われ続けても日本の脚で立つことが出来た。

何よりも……、生きているという実感をくれた私の育ての親のような物だからこそ、出来れば怪我はしたくないけど、痛いと感じる程度の指導が欲しい。


「そして暫くして戦闘面において問題が無いと判断出来たら、そちらのゼンともう一人、魔族の者でカーティスという物がこの集落に居りますのでその三人で旅立って頂きます」

「はぁっ!?族長ちょっと待てよ、何で俺が!?」


 ゼンさんが一緒に付いて来てくれるみたいだけど、聞いて無いみたいで驚いている。

確かに良く見ると素人の私でも分かる位に引き締まった体をしていて、思わず口の端から涎が出そう。

これは気を抜いたらヤバいかもしれない、もしかしたらもう一人来てくれるかもしれないというカーティスっていう人も素敵な人だったらどうしようっ!、イケメン二人に囲われた美少女とか、絶対絵になると思うし、そんな二人と旅に出る何て何かが起きてもおかしくないんじゃないかな!?。


「あなたはこの集落で、私を除いたら一番強いではないですか、それに族長が不在になるわけにはいきませんし、何よりもこの世界の住人をお供に付けた方が様々な方面でスムーズに行くでしょう」

「……そうかもしれないけどさ」

「外の世界から来た異世界人の我らがぞろぞろと集団で様々な国を渡るよりも、人族のお供がいるというだけで周囲の印象は変わるものです、ゼンとシャルネ様はどうやら初対面なのに既に打ち解けているようだから尚の事好印象になるでしょう……、それにあなたはこのような狭い集落で過ごすよりももっと様々な世界を見なさい」



特にほら、物語でもあるじゃない?、ヒロインの女性に主人公とその仲間の一人が恋心を抱いてしまって、海の浜辺で『主人公っ!お前にヒロインを渡せるかよっ!俺があいつを幸せにしてやるんだっ!』ってなって、『いや、あいつの事は俺が絶対幸せにして見せるっ!だから俺はヒロインと一緒になりたいんだっ!』って殴り合うシーンとかっ!、その後にお互いに認め合って、『主人公、お前ならヒロインを任せられる、頼んだぜ』とかいう青春シーンっ!そんなのが起きたらどうしようっ!


「様々な世界をか、確かに俺はこの国【栄花】から出た事ねぇからなぁ……、確かに族長の言うようにもっと外を見るべきかもしれないけど、俺が居なくなったら誰がこの集落を守るんだよ?」

「それ位私一人いれば充分です、それにいざとなったら皆で戦うので問題ありませんよ」

「皆で戦うって、戦に疲れた奴等が集まって出来た場所なのに大丈夫なのか?」

「えぇ、疲れたとは言え戦えないとは言ってませんからね、自分達の居場所を守る為なら全力を尽くしますよ……、という事でシャルネ様、早速戦闘の指導を致しましょうか、ゼンはその間にカーティスを探して来て下さい、きっといつもの場所で畑仕事をしている筈です」

「はぁ、そこまで言われたら断れないじゃん……、分かった行ってくるわ」


 ……そして最終的には、ゼンさんとカーティス二人を私が婿にして三人で幸せな生活を送る何ていいかもしれない。

異世界逆ハーレム物……正直ありっ!


「シャルネ様?……、あのシャルネ様!?」

「ふ、ふひ……、ひゃ、ひゃい!?」

「あの……今迄の話聞いておりましたか?」

「は、はい、ゼンさんとカーティスさんと私で旅に出るんですよね?ちゃんと聞いてましたっ!……後、戦闘の指導でしたよねお願いしますっ!」

「聞いているなら結構、では始めますよ?」


 始めるってもしかして今から!?、待ってまだ心の準備が出来てないっ!。

どうやって戦えばいいのかすら分からないのに、キューちゃん何か袖の中から御札を取り出してるんだけど、やだっ!こんな所で私の冒険は終わってしまうの!?


「まずはシャルネ様、ご自覚があると思いますが現在の姿はこの世界に適応した姿で本来の姿ではありません、なので元の姿に戻る必要があります」

「……元の姿ですか?」

「えぇ、まずはご自身の背中に羽がある想像をしてみてください、そこで感じる物がありましたら外に開放するイメージで」


 良かった、最初からクライマックスじゃなかったよ。

取り合えず言われた通りに意識して見ると、見えないけど確かに羽がある感覚がある。

これを外に開放するイメージ……こうかなっ!


「おっ、おぉ!?」

「まさか一度で出来るとは見事です……、魔神様と天神様の御子に相応しい立派な羽ですね、しかも魔神様の血が濃いのでしょう、頭にも可愛らしい小さな羽が」

「あ、頭にも羽!?……ほんとだ、触るとなんかぴょこぴょこしてる」

「えぇ……、服装と相まってより神秘的で素敵でございますね……、後はその状態から実戦を交えて訓練致しましょう」


 キューちゃんはそう言うと、両手に持っていた複数の御札を上空に投げるとそれが青い炎に包まれて宙に浮いた。

何だっけ、狐火?そういうのに近い気がする。


「……この炎は触れた相手の傷を癒す効果がありますが、当たると多少熱いらしいので注意してくださいね」


……キューちゃんはそういうと、九本の尾に青い狐火を乗せたと思うと尻尾を器用に動かしてこちらに投げて来た。

多少熱いという事はもしかして、お風呂のぬるま湯的な物かなって思って当たってみたら思わずびっくりする位に熱い。

これは……全部当たったらどうなるんだろうって考えると楽しくなってくる。

やっと、この世界に転生したんだっていう心で理解出来そうで自然と顔に笑みが浮かんだ。


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