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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
第二章 修行、そして旅に出る

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ゼンさんのお土産

 あの後、一人でぽけーっとしていると日が暮れた辺りでゼンさんが帰って来る。

その手に持っている袋からは、凄い美味しそうな匂いがして思わず涎が垂れそうになって……


「シャルネ、一人にして悪かったな、土産持って来たからこれで夕飯食おうぜ!」

「食おうぜって……、あ、なにこれ美味しそう、串に刺さったお肉や野菜に、焼きおにぎり!?」

「帰る途中で串焼き屋があってさ、いつも飯作って貰ってばかりだからたまにはこういうのもいいかなって」

「う、嬉しいけどお金の方は大丈夫なの?ほら、この前首都の裏口から入る時に沢山渡しちゃったし」

「バーカ、おまえがそんな事気にしないでいいんだよ、金の事は俺やカーティスが何とかするから安心しろって」


 何かその言い方だと、私が養われているヒモみたいでやだなぁ。

ほらこういうのってちゃんと皆で助け合ったり協力し合うものだと思うし……、けどこの世界でお金を稼ぐ方法何て分からない。

こういう時、何か出来たらなぁって思うけど、以前同じ事を考えて異世界に転生したんだから、元の世界の知識を生かしてチートをしてみようと思ったけど。

マヨネーズの作ろうとしたら、首都の中には同じ物があるし……なら醤油を作ってみたらどうだろうって試してみようと思ったら、作り方がめんどくさくて断念。

後日、買い物に出てみたら『せうゆ』という名前で瓶に入って売られてたのを見た時は思わず周囲の視線を気にする事を忘れて、その場で崩れ落ちてしまい、荷物持ちをしてくれていたゼンさんやカー君を心配させてしまった。


「けど、やっぱり……私に出来る事って料理とかそういうのしか、今の所ないからこれくらいならちゃんとやるよ?」

「だから大丈夫だって、旅に出た時の飯はシャルネに任せるけど、首都にいる時もそうだけど、こういう場所にいる時くらいは楽しようぜ?」

「んー、分かったけど……ゼンさん、そういえばマチザワさんに聞いたけど神社の方で事情聴取受けてるって聞いたけど、何か話したの?」

「ん?いや……、特に話してねぇな……あれこれ言ってもどうせボロが出るだけだから、シャルネが言う事が事実だって突っぱねて、美味い団子とお茶を楽しんで来ただけだよ」


 へぇ、美味しいお団子とお茶、いいなぁ……。

まぁ私もマチザワさんが作った美味しい朝食を食べたから、お互い様だけど、ちょっといや……かなり?羨ましいかも。

こう嫉妬するわけじゃないんだけどね?、そういう美味しいのって二人で食べたかったねぇっていうのは私の我が儘だったりする?、いやそれだとカー君をのけ者にしちゃって悪いからやっぱり三人かな。

んーけどそうしたら、既婚者で奥さんがいるから、浮気になっちゃうんじゃ?どうなんだろ。

でも、カー君の事だから気にしないだろうから、気にはしないだろうけど……奥さん達が気にするかもしれない。

けど今はそれよりも……


「へぇ……、ってもしかしてゼンさん、この買って来たご飯って自分だけ美味しい物を食べて来たから、そのお詫びって事!?」

「あ……バレたらしょうがねぇけど、そんなとこだな」

「まぁいいけど、それなら今度からちゃんと言ってよね?」

「何かこのやり取り、嫁と旦那みたいだな……マチザワが今の嫁と結婚した時に同じやり取り見た事あるぞ?」

「ゼ、ゼンさん何言ってんの!?」


 嫁と旦那って、私達まだそんな関係じゃないし。

それにそもそも交際すらしてないのに、いったい何を言ってるの?……いや、もしかして一緒に生活しているうちにゼンさんが意識するようになって、そうなったとかかも、もしそうだったらちょっとだけ嬉しいけど、嬉しいけどぉ!ほら、こういうのって順序が大事って言うかぁ。

こう、個人的に希望なシチュエーションと言えば、何て言えばいいのかな、ふとした瞬間に見せる雄の部分に、ときめいたかと思ったら、二人きりの時にいきなり壁に追いやられて、ドンっ!とされた後に


「おまえ、俺の女になれよなんて言われちゃったりして……ふひ、ふひひ、ぐふ」

「いや、おまえが何言ってんだよ気持ち悪い」

「気持ち悪い!?ちょっとゼンさん酷くない!?」

「鏡で自分の顔を見てから言えよ、そんな事よりさっさと食わねぇと冷めるけどいいのか?……まぁ、いらねぇなら全部俺が食うけど」

「あ、た、食べる!食べるから食べないで!」


 ゼンさんの手から串焼きと焼きおにぎりを奪い取ると、食べられてしまう前に口に入れる。

ほのかに香る、香ばしい匂いと口内に広がる焼きおにぎり特有の美味しさ。

一口だけでは物足りなくて、一気に全部頬張ってしまいたくなるけど、その気持ちを抑えて串焼きを食べる。


「ふぉ、ふぉぉ!?」

「……おまえ、キャラクター崩壊してねぇか?」

「ふぉひ、ふぉふぉふぉ、ふぉ!」

「何言ってんのか分からねぇから、全部食ってから喋れよ」


 口の中に残った焼きおにぎりの味が、串焼きの味を引き立てる。

首都では貴重な調味料らしい、塩と胡椒がお肉と野菜の味を引き立てて、ついついお行儀の悪い食べ方をしてしまう。

さすがにこれはドン引きされちゃったかもしれない、だって……ゼンさん曰く誰もが振り返る程の美少女がいきなりがっついてご飯を食べ始めるんだよ?、それって凄いイメージダウンだと思うし、嫌われちゃったらどうしようかな……。


「……まぁ、この組み合わせだとそうなるよなぁ、俺だって首都で暮らしていた時に、屋台で買って初めて食った時同じようになったし」

「おいし、けど……喉が」

「ん?あぁ、喉乾くよなぁやっぱり、ほら、レモン水もあるから飲んでみろ」

「え?あ、うん……あ、すご」

「だろ?口の中がさっぱりするし、後で胃に来るタイプの物を食っても、食後が楽になるんだぜ?飲んだら焼きおにぎりから食ってみろよ、もっと止まらなくなるぜ?」


 良かった、いっぱい食べる君が好きって思ってくれるタイプみたいで本当に良かった。

言われた通りにレモン水を飲んでみると、口の中の味がリセットされた気がする。

そして焼きおにぎりを口に入れると、さっきとは違うレモンの爽やかな香りと焼きおにぎりの香ばしさが合わさって、不思議な例えようもない美味しさが口内に広がって、まるで口の中が食事の宝石箱みたいで楽しい。


「さて、食いながら出悪いんだけどさ、聞いて欲しいのがあるんだけどいいか?」

「……ふぁに?」

「神社で行う試練の事なんだけど、あの森が吹っ飛んだ件で色々とプリムラスグロリアの方で、やらなければいけない事ができたらしくてさ、日程の変更をして欲しいって言われてさ」

「ひっへーほ、ふぇんほぉ?」

「無理に喋んなくていいぞ?まぁ……そんな感じで、来週にやる事になったから、カーティスが帰って来たら、例の意思疎通方法を徹底的に詰め込むぞ?」


……まだ大分試練まで余裕があったはずなのに、来週に変更になった事に驚いて、ご飯が喉に詰まりそうになるのを頑張って飲み込む。

そんな大事な事を話すんならご飯を食べ始める前に言って欲しかった。

そんな事を思いながら、カー君が帰って来た後の訓練がどうなるのか、ちゃんと意思疎通が出来るようになるのかと色々と考えてしまうのだった。

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