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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
第二章 修行、そして旅に出る

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話しやすい人

 気まずい雰囲気の中、何て答えればいいのか。

適当な事を言ってもこの人の事だから直ぐにバレてしまうだろうし……


「……?シャルネ殿?」

「えっと、あの……その、えーあ、あ」

「もしかして言いづらい事でもあるのですかな?」

「そう、じゃなくて……えっと、ほら外で凄い爆発が起き、て……森が無くなっちゃったから」

「あぁ、なるほど……私はシャルネ殿が話し終わるまで待っておりますゆえ、落ち着いて話して大丈夫ですぞ」


 何かを察したような顔をしたマチザワさんが、笑顔で私の言葉を待ってくれる。

けど、下手な事を言ったら私が犯人だって自白してしまう事になるだろうし、そう思うと、どうすればいいのかなぁって。

素直に全部話してしまえれば楽だけど、そんな事をしてしまったら態々首都の裏口から秘密裏に入った意味が無いし……あっ!そうだ。


「あの、最近私達森で……秘密の特訓をしてたんですけど、この前凄い大きな蛇にあって……」

「あぁ、あの大蛇騒動ですな?あの際の騒ぎは私も存しておりますぞ」

「その時はなんとか、えーあ、あ」

「もしかして言いづらい事でもあるのですかな?」

「そう、じゃなくて……えっと、ほら外で凄い爆発が起き、て……森が無くなっちゃったから」

「あぁ、なるほど……私はシャルネ殿が話し終わるまで待っておりますゆえ、落ち着いて話して大丈夫ですぞ」


 何かを察したような顔をしたマチザワさんが、笑顔で私の言葉を待ってくれる。

けど、下手な事を言ったら私が犯人だって自白してしまう事になるだろうし、そう思うと、どうすればいいのかなぁって。

素直に全部話してしまえれば楽だけど、そんな事をしてしまったら態々首都の裏口から秘密裏に入った意味が無いし……あっ!そうだ。


「あの、最近私達森で……秘密の特訓をしてたんですけど、この前凄い大きな蛇にあって……」

「あぁ、あの大蛇騒動ですな?あの際の騒ぎは私も存しておりますぞ」

「うん、それで……」

「あの件で結構パニックを起こした方達がいましたからなぁ、シャルネ殿もしんどかった事でしょう」


 あれ?マチザワさんってもしかして会話がしやすい人かも?、これは勇気を出してちゃんと話してみようかな。


「うん、それでね?昨日も同じように森に行って訓練をしようとしたんだけど……またあの大蛇に会って戦う事になってね?」

「なんと!?あの天を仰ぐ程の大蛇と!?」

「そうなの!それで、こう私が拳でドーン!と殴ったら怯んで、その隙をカー君が武器で攻撃したりしてね?」

「きゅっ、急に話し方が流暢になりましたな……」


 何か驚いたような顔をしてるけど、このまま勢いである事無い事話しちゃえ。

そうすればマチザワさんも納得して帰ってくれるかもしれないし!


「それで、大蛇が身体を急に膨らませたかと思ったら、口から気持ち悪い色をした毒の息を吐き出して、それに触れた草木が色を無くしたかのように枯れたりして、危ないっていう時にゼンさんが、剣で毒の息を切り裂いて守ってくれてね?」

「あぁ、ゼンは相変わらず規格外なのですな……、私やセイラと共にいた時も良く俺に斬れない物なんて、あんまりないと自慢気に語っていたのを思い出しましたぞ」

「そうなんだ?ほんと凄いよね、ゼンさんって魔法を斬っちゃうし、あぁいう気体も自信ありげに両断しちゃうんだもん、凄いよね!」

「え、えぇ……そうですな、ところでそれと森が消えたのにどのような繋がりが?」

「そこは今から話すんだけど、大蛇の全身が風船みたいに膨らんだかと思ったら、今度はカチッ、カチッって言う音がして口から炎を吐き出してね?そこで私が思ったの!これはもしかして可燃性のガスなんじゃないかって!」


 勿論内容は嘘だけど、ここまで物語を作って話せるってもしかしたら、脚本家の才能があるかもしれない。

いやぁ……、これも大人になってからアニメとかを見たりしてたからかも、そう思うと経験って馬鹿に出来ないなぁ。

現にマチザワさんも、驚いた表情をしながら私の話に聞き入ってるし。


「そ、それでどうなったので?」

「森が燃え上がって、逃げ場が無くなっちゃって……これは絶体絶命ってなった時に、気づいてね?ほら、体内のガスを使って炎を吐くって事は、体内で爆発させたらどうなるのって、だからゼンさんに言って……また身体を膨らませるのを待ったの」

「……つまり、膨らませたと同時に、ゼンが切り裂いたと?」

「うん、それで体内から飛び出したガスが外の火に引火して……大爆発を起こしたと思ったら……凄い衝撃に皆吹き飛ばされて」

「森が消し飛んでいたというわけですな?」


 納得したような表情を浮かべながら、マチザワさんが私の言葉をメモに書き残して行く。

これで私が即席で考えた嘘だとバレたら、どんな反応をするんだろうなぁって思うけど、これに関しては私が黙っていれば問題無いと思う。


「そんな大規模な戦闘なら、目撃者がいてもおかしくないですが……、シャルネ殿が仰るのなら、このマチザワ信じましょう!……ところでそれと首都に入ったのと何処に繋がりがあるので?」

「それは……ほら、あの状況で森に行った私達が正面から入ると、問題が起きちゃうでしょ?だから、ゼンさんの指示で首都の裏口みたいな所に行って事情を話して入れて貰ったの」

「……あそこを?ゼンが居た時とは違って場所が変わっていたのに良く場所が分かりましたな……、それなら後日兵士の詰所に確認をさせて頂きますぞ」

「え、あぁ、うん」


 確認をされたら私のついた嘘がバレてしまうかもしれない。

それはさすがに……ちょっと、いや、大分良くないんじゃないかな。

マチザワさんが信じてくれたのに、それを裏切る事になっちゃうし……いや?そんな事を思うくらいなら最初から嘘なんてつかないで、全部素直に言っちゃえば良かったんじゃない?、あぁでもそんな事したら私達が森で何をしていたのか全部バレちゃう。

何て言うか頭の中がぐるぐるして、どうすればいいのか分からなくなってきたかも。


「ところでシャルネ殿」

「……え!?な、なに!?」

「先程の話を改めて考えてみると、先程の話に色々と違和感を感じるところがありましたが、本当に今の内容で良いのですな?」

「え、あ、うん」

「分かりましたぞ……、その内容が本当かどうかは同じように事情聴取を行っているプリムラスグロリア様とセイラに話せばわかる筈ですからな」


……マチザワさんはゆっくりと立ち上がり『では、私はこれで帰らせて頂きますぞ、シャルネ殿、色々と聞いてしまいましたが、次会う時はお互いに戦う事になるでしょう……、このマチザワ、その時を楽しみにしておりますぞ!』と、笑顔で話しかけると、そのまま家を出て行くのだった。

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