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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
第二章 修行、そして旅に出る

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森が無くなりました

 ゼンさんがカー君の魔法を切り裂いたのを見て一つだけ疑問に思う事がある。

いやね?魔法とはいえ霧をどうやって剣で斬ったの?っていうか、魔法って普通切れる物なの?

ほら、私の知ってる魔法の世界だと魔法を防ぐ為に自分の魔力を使ってシールドを張って守ったたり、身体の頑丈にして耐えるとかだし。

そもそも魔法何て不思議パワーを斬るとか、ん?あれ?それも良く考えてみたらファンタジーじゃない?

うん、私が固定概念に囚われてたのかも、例えばゼンさんに斬られた毒の霧が私の方に来てるのも、もしかしたら魔力の塊を飛ばせば消せる?


「……そう思ったら、取り合えずやってみようかな」


 私は魔法が使えなくても、魔力の塊なら飛ばす事が出来る。

けど自分で生成出来る魔力はどうしようもなく少なくて、使えたとしても大体二回か三回がいい所、じゃあどうすればいい?

そんなの簡単じゃない、【暴食と施し】の能力で悪魔の翼が生えている方の腕で触れば相手の生命力や魔力を吸い取る事が出来る。

なら自然の中、例えば空気の中にある魔力を吸収してしまえば?キューちゃんとの修行の時に、魔法を吸収できてたからそれの応用で同じような事が出来るんじゃない?、カー君の魔法で作られた毒の霧も一緒に取り込んで翼の羽ばたきに乗せて飛ばせば……


「……うん、やっぱり出来そう」


 意識を集中して空気中の魔力を左手に集めて体内に吸収して行くイメージをしてみると、少しずつだけど入って来る感覚がある。

しかも魔力だけじゃなく、とても小さな生命力もどうやら空気中にあるようで自然と体内から熱となり沸き上がって来て……


「シャルネおまえ……何をやって」

「ちょっと今試してるの」

「おまっ!」


 ゼンさんの声が聞こえるけど、体内に溜まった魔力と生命力が今にも弾けそうな程に体内で暴れまわっていてそれどころじゃない。

けど私の中にこれほどまでに凄い力があるなら、今開放したら目の前の毒の霧も一瞬で消し飛ばせる筈。

そう思って魔力と生命力を混ぜ合わせた力の塊を翼に乗せて羽ばたきながら前方へと飛ばそうとすると……


「ばっかおまえ!そんなんやったら森が消え……くっそ、聞いてねぇ!カーティスお前、こっちに来てちょっと手伝え!」

「手伝えって、何をすればいいんだい?」

「この前スコップでやった時みたいに、俺の後ろの地面を掘り返して壁を作れ」

「なるほど……」


 あれ?何だか私が悪者みたいになってるけど気のせいかな、けどこれって訓練だしゼンさんも俺を殺すつもりで来いって言ってたから、そんな反応しなくても良くない?


「ゼン、準備出来たよ」

「良しっ!シャルネ、もう撃っていいぞ……俺がカーティスの魔法のようにぶった切ってやるからな」


 ゼンさんが両手に持っている剣を地面に刺すと、魔力が両手に集まっていき二振りの剣が生成される。

何だっけ、心器とかって名前の魔法で作る特殊な武器や道具らしいけど、使い手の精神状態で能力が変わるとかそんな不安定な物じゃなかった?

でも、ぶった切るって言ってるから大丈夫なのかも……、取り合えずもうこれ以上は抑えきれないから、二人に向けて勢いをつけて打ち出すと……


「……俺が切れると信じた以上、切れないものはあんまりねぇ!」

「なんかかっこいいのか、かっこよくないのか今一良く分からない気がするけど、大丈夫なのかい?」

「うるせぇっ!そんな茶々入れんなら、お前事ぶった切るぞ!」


 何故か毒の霧を吹き飛ばすのではなく、飲み込んで大きくなっていく魔力の塊に向かって二振りの剣を交差させるようにして突っ込んで行く。

そして雄たけびのような声を上げながらぶつかると……本当に二つに切れた。


「あ、やっべ!」

「え?」

「うん、これはまずいね」


 切られて二つに分かれた魔力の塊が、土の壁からずれて森の奥へと消えて行く。

そして奥の方から轟音と共に立っていられない程の衝撃波が来て、声を上げる事すら出来ずに吹き飛ばされていく。

そして地面に身体を打ち付けバウンドを繰り返し、奇跡的に何にも当たらずに何度も転がった後


「うぅ、痛くは無いけど視界がグラグラ揺れてて気持ち悪い」

「ばっか、俺はいてぇよ、カーティス!無事か!?」

「……何とか生きてるよ」

「何とかでも生きてるなら何とかなる、それよりもシャルネ!殺す気で来いとは言ったけど、森を滅ぼせなんて俺は言ってねぇぞ?後カーティスもだ、仲間を巻き込みかねない猛毒の霧を魔法で出すなら、予め相談するなりしろ!」


 痛そうに顔を歪めたゼンさんが武器を杖のようにして立ち上がると、周囲を見渡しながら私達に注意をする。

けどその顔は何処か、言っても意味無いだろうなぁって言うような諦めのような物を感じてちょっとだけ、こっちも気持ちが複雑だ。


「……分かった、そうするよ」

「わ、私も!」

「ほんとかよ……、今までの行動から考えると怪しいもんだ」

「私ゼンさんには嘘つかないし、約束したら守るよ?」

「そういう言い方、美人が言うと卑怯だから止めろ、今はそれよりもだ……あの一撃で森そのものが消えちまったけど、これどうやって言い訳すればいいと思う?」


 ゼンさんがそう言いながら前を指差すとそこには、今までそこにあった森がまるで掘り返されたようになっていて、樹々は全てなぎ倒され地面は草が一つも残っていない。

これに関しての言い訳を私なりに考えて見るけど……特に何も思いつかず。


「カ、カー君はどういう言い訳がいいと思う?」

「……これは素直に謝った方がいいんじゃないかな」

「ばっか、謝ったら俺達がやりましたって言ってるようなもんだろ、まぁ……今更隠す事何て不可能だろうけど……あっ!そうだ」

「ん?ゼンさん?」

「俺達は今日首都から出ていない事にしようぜ!」


……ゼンさんはそう言うと懐から大量のお金が入った袋を取り出す。

それで一体何をするのかな、もしかしなくてもなんか嫌な予感がする、そんな思いが脳裏に過ったと同時に『衛兵達のとこに行くと、あいつ等正直だから全部言っちまうだろ?だから、首都の兵士達専用の出入り口があるからそこから戻ろうぜ?なぁに、奴らは金が好きだからさこの大金握らせれば大丈夫よ!』とゼンさんが笑顔を作りながら言葉にするのだった。

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