事情聴取されました。
あの後三人で急いで首都に戻ろうとすると、首都の関所へと並ぶ列がパニックを起こしていた。
まぁ……間違いなく、カー君が森で暴れたせいだと思うけど……
「早く入れろ!俺は見たんだっ!森で恐ろしいデカさの化け蛇が暴れてるのを!」
「私は森から有名な殺人犯や盗賊達が焦ったような顔をしながら、森から出て行くのをっ!」
「お、おでは……猪がいきなり飛び出して来て馬車を壊されたんだな!」
うわぁ、大参事……怖い位に大参事、大事な事だから二回言ってしまう位には酷い状況で、場を治めようとしている衛兵さん達が対応に困っている。
さすがにこれは私達のせいだと思うから、ちゃんと謝った方がいいよね。
「ゼンさん!そこにいるのはゼンさんじゃないですか!」
「ん?あぁ……誰だ?」
「いきなり名前を呼ぶなんて失礼だろ!……あぁ、俺達はここの衛兵をしているものでして……この国の英雄であるゼン様が見えたので少しだけお話が出来ないかなと」
「お話だぁ?そんな事よりも衛兵としての仕事をしろよ」
人の列から武装して腰に剣を差した二人組が来たかと思うと、いきなり敬礼みたいな仕草をしてゼンさんに話しかけてくる。
けど、いきなり友達みたいな距離感で来られて気に入らなかったのか、凄い機嫌悪そうな顔をしながら対応している彼を見て、内心びくびくしながらカー君の方を見ると
「……何だか森の方が凄かったらしいね」
「あぁ、うん……そうだね」
と呑気な言葉が帰って来たから今はあんまり気にしないようにする。
多分、私達が原因だってバレないように気を使ってくれてるんだろうけど、カー君と話していたらそのうちボロを出して疑われてしまうかもしれないから、悪いけど今は無視しちゃうけどごめんね?
「……申し訳ございません、けどこれも仕事なので」
「まぁ、仕事ならしょうがねぇな、で?何が聞きたいんだ?」
「実はあちらの列にいる方が、ゼンさん達が森から出て来たところを見たという事で事情聴取をさせて頂ければなと……」
「あ?今俺を見かけたからって言ったのに、その言い方は矛盾してねぇか?」
「あ……無理にとはいいません、えっとけどこれも仕事なので」
相手は仕事だって言ってるんだから答えてあげればいいのに……
「あ、あの……えっと、わ、わた」
「ん?あ……すごい、かわいい」
「……え?」
「ご、ごめんなさい!え、えっと……森の奥で、蛇がいて……ゼ……さんが倒し、く……たよ?」
「えっと……ごめんなさい、もっとはっきり話して頂けると」
ダメだ、ゼンさんやカー君とか仲が良い人や、ある程度交流がある人相手だったら話せはするんだけど……そうじゃない人ってなると緊張してどう話せばいいのか分からない。
「あぁ、こいつが言いたいのは、俺が森で蛇の化物を退治したって言ってんだよ」
「おぉ、そうなのですか!?それなら初めからそう仰って頂ければ良かったのに」
「あんな回りくどい聞かれ方したら、応え辛いだろ……取り合えずこれで事情聴取ははいいよな?」
「え?あ……はい、後は必要な事があった場合ご自宅の方へ伺わせて頂きますので……」
「来ねぇでいいよ、それに俺は暫く忙しいからさ……あぁ、ただなんだ?もし必要な事があったら、神社にいるセイラに言ってくれよ、俺の変わりに何でも答えてくれるだろうからさ」
ゼンさんはそう言うと衛兵さんに向かって手を振ると、私達の背中を押して首都へと入って行こうとする。
その際に……
「じゃあ、俺達は行くから後は頑張れよ?」
と言葉にすると感極まった顔をして、お礼の言葉を返す若い衛兵さんと、そんな彼を連れてめんどくさそうな顔をしながら列に戻っていく二人を見ながら首都へと入る。
「……カーティス、おまえ首都の近くで本来の姿に戻るの禁止な?」
「だね、俺もそれがいいと思う……」
「うん、凄い騒ぎだったもんね」
「まさか獲物を捕まえようとしたら、そんな大事になるなんてね……予想外だよ」
「予想外っておめぇ、あれはやりすぎだろあれは」
やり過ぎなのもそうだけど、森の生態系が壊れちゃったんじゃないかな……。
今思うと中には緑色の肌をした人みたいなのもいたような気がするし、豚の頭をした二足歩行の珍しい動物もいた気がする。
ファンタジー的な面から見ると、ゴブリンやオークとかって言われる魔族だろうし、多分この世界の人達と共存出来なくて森に住んでたんだろうなぁ。
そう思うと天族と魔族の神の間に産まれた子供として、転生したのに何だか悪い事をしてしまった気がする?、いや……でも野生の世界だと弱肉強食だって言うし、これはこれでしょうがないのかも、んー何だか頭がこんがらがって来た。
「あれが一番効率が良いと思ったんだけどね」
「それなら予め、何をしようとしてるのか詳しく説明してくれよ」
「うん、私達仲間なんだから……ちゃんと言葉にしよ?」
「……次からはちゃんとそうするよ」
……そんな話をしながら家に帰った私達は、そのまま用意されていた夕飯を食べたけど『これって誰が作ったのかな』と、不思議そうな顔をしているカー君を見て、そういえば幽霊さんの事話して無かった。
そんな事を思いつつ、色んな意味で騒がしい一日が終わるのだった。




