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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
第二章 修行、そして旅に出る

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環境破壊しちゃいました

 森に入って暫くした後……


「シャルネっ!そっち行ったぞ!」

「えっ!ちょ、無理っ!」


 野生の動物に遭遇した私達は、そのまま狩りという名の実戦訓練を始めたけど……実際に敵意を持った相手と戦うとなると恐怖の方が大きいというか、パニックになってしまってまともに思考をする事が出来なくなる。

なのに落ち着いて獲物をこちらに誘導してくるゼンさんは何なのかな、もしかしてこっちの事何も考えて無い?

いや、そんな事は無いと思うし信じたいけど、あの輝かしい程に眩しい笑顔で石を投げたりして巧みに進行方向を操ってる辺り、多分凄い楽しんでると思う。


「……これは実戦だぞ?生きるか死ぬか、喰うか喰われるかだ!ビビってんじゃねぇぞ!」

「で、でもっ!これ今までのとは違うしっ!」

「……ゼン、シャルネが怖がってるみたいだから、ここは俺がやるよ」

「カ、カー君!?」


 驚いて動けなくなってしまっている私の前に、スコップを持ったカー君が飛び出したかと思うと勢いよく地面に突き刺して……目の前を掘り返した。

いや、それだけならいったい何をしてるの?で終わってしまうけど、どう見ても物理的にありえない程に広い範囲をスコップを破壊しないがら掘り返して、目の前に迫っていた長い牙を持った猪みたいな動物が、土に飲み込まれて消えてしまう。


「お前……飯を土の中に埋めてどうすんだよ」

「後で掘り起こせば大丈夫じゃない?、それよりも俺の武器の使い方はどうかな」

「いや、思ってた以上にえぐい使い方してたから特に言う事ねぇよ、カーティスは自分がやりたいようにやればいいんじゃねぇか?型に嵌った動きするよりもその方がいいよお前は」

「ゼンさん、じゃあ私は?」

「お前はそうだな……こっちに向かってくる奴を見たら一瞬怯むのを何とかしろ」


 怯むなと言われても無理じゃない?だって……集落にいた時に襲われた時もそうだけど、驚いて咄嗟に掴んで殺してしまったり、あの気持ち悪い場所に訪れた時も同じような感じで相手を殺めてしまったし、元日本人でそういう争いとは無縁な世界に生まれた人に落ち着いて行動しろって言われても……。

あっちでも訓練された人はいるにはいたけど、それってそういう職業の人だからであって、一般的な人は本当にそういうのに耐性無かったし……いや、でも私が死んだきっかけになった事を思い出すと、私ってそういうのに立ち向かえる人なのかも?、まぁ刺されて死んじゃってこの身体に転生したけど、第二の人生なら思い切って動くのもありな気がする、いいよね?


「じゃあ次、次はちゃんとやってみる!」

「へぇ……?なら次の獲物探して来るわ」

「うん、任せて!」


 大鎌を構えて何度か振ってやる気があるように見せると……


「それなら俺もゼンの手伝いをするかな、確かこの森には魔族もいるって言ってたっけ」

「ん?魔族以外にもいるぜ?盗賊落ちした奴や、こんな時代だからしょうがねぇけど……相手を殺す事に楽しみを感じたやべぇ奴らだな」

「それなら俺が探して来るよ……」


 カー君がそう言いながら森の奥へと歩いて行き姿が見えなくなったかと思うと、見上げる程に大きい蛇へと姿を変えて、地響きと共に樹々をなぎ倒しながら何処かへと行ってしまう。


「あんな事されたら獲物を探すどころじゃなくて逃げんだろ……」

「えっと、ゼンさんこれどうしよう?」

「あぁ、あれはもう……しょうがねぇだろ」


 色んな動物が遠くから悲鳴のような鳴き声を上げながら、逃げるように私達の方へ走って来る。

ゼンさんが咄嗟に武器を構えたけど次の瞬間には、私を抱きしめるようにして持ち上げると木の上に飛び乗って高い所を確保すると……


「ちょっといきなり抱きしめられると恥ずかしいんだけど……」

「恥ずかしさよりも命の方が大事だろうが」

「そ、そうだけど……心の準備って言うのも必要だし」

「心の準備してる間に、雪崩れ込んでくる集団に巻き込まれたら意味がねぇだろ」


 確かにそうだけど、そうだけど……抱きしめるならもっとこう、一言欲しいのが個人的な気持ちというか。

それだけで少しだけ身構える事が出来るのに、そんな事を思いながら上から下を眺めると。前を走っている動物が躓いたのか体制を崩し、後ろの列に飲み込まれて消えて行く。

……けどそれだけじゃなくて、その躓いた子を乗り越えようとしたのが前のめりに倒れ込み、そこから後ろへと続くドミノ倒しのようにどんどん重なっては潰されていくという地獄絵図が産まれて。


「……うわぁ」

「こりゃセイラ達にバレたら怒られるどころじゃすまねぇぞ?」

「えっとどうする……?」

「ちょっと待ってろ……」


 ちょっと待ってろって言われてもこの光景でのんびりと待てるような図太さはさすがに持ってないというか、余りにも非現実的過ぎる状況に頭が追い付いてない。

そんな私の隣で、ゼンさんがゆっくりと体いっぱいに空気を吸い込んで行くと……


「おーいカーティス!今日の戦闘訓練は中止だ!帰るぞ!」

「きゃっ!?」

「ちょ、動くな!バランス崩して落ちるだろ!」

「だって!いきなり大声出すから!」

「……しょうがないだろ、それ位しねぇとカーティスには聞こえないだろうし」


……ゼンさんの声が聞こえたのか、地響きと樹木をなぎ倒して行く音と止んだかと思うと酷い状況になった地面の上を歩きながら、涼しい顔をしたカー君が奥から姿を現す。

そして『戦闘訓練が中止って何があったんだい?』と言葉にしたのを見て、木の上から飛び降りた私とゼンさんは勢いよく彼の頭を叩いたのだった。

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