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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
第二章 修行、そして旅に出る

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武器の訓練

 ゼンさんとの地獄の特訓が本格的に始まって、数日が経過したけど……


「勝負あり!……おま、また壊したな!?」

「だって、木製だと凄い脆くて……」


 最初は大鎌を武器にして、ゼンさんの一番弟子として彼に挑んでくる挑戦者の人達を使った実践稽古をしていたけど途中で……


『お前の腕力が強くてヤバいから、明日から俺が木で作った練習用の大鎌を使え』


 と言われて、沢山作って貰ったところまでは良かったのだけれど、勢いよく振ると相手の骨ごと折れてしまうし、脚に刃の部分を当てて引っ掛けて転ばせようとしたら、肉に食い込んで木製の大鎌と一緒にスプラッタな状態になってしまった。.

それ以降、挑んで負けたらお金を取られるだけという認識だったらしい挑戦者さん達が、私がいる時だけ命を取られるという考えになってしまったらしく。

今では私を相手にしようとする人はかなり少なくなってしまい、時間がある時にゼンさんに稽古をしてもらってるけど、彼の武器に攻撃を当てるだけで直ぐに壊れてしまう。


「……馬鹿力が過ぎるだろ、ったくよぉ毎日手作りする大変なんだぞ?」

「ごめんね?でも簡単に壊れちゃうのはどうかと思う」

「どうかと思うっておまえなぁ、というかなんで俺の家に訪ねて来る奴がこんなに増えてんだよ」


 相手をしてくれる人は減ったのに、なぜか私を一目見ようと訪ねて来る人が増えた。

しかもその後になぜかゼンさんに勝負を挑んでは満足したような顔をして帰っていく。

それを何回か繰り返した後……死に場所を見つけたような顔をして私の訓練に挑んで来る辺り、もしかしたら変態さんが来ているのかもしれない。


「……しかしまぁ、ここまで武器の扱いに才能がねぇ奴も珍しいな」

「だって……武器が脆すぎるんだもの」

「この国でも選りすぐりの素材を集めて、シャルネ用にと色々と調整してんだけどな……何だか自身が無くなりそうだわ」

「えっと……ごめんね?」


 そう話しながらも、ゼンさんから新しい木製の大鎌を受け取ると打ち合い稽古を始める。

彼も私に合わせて木剣で相手をしてくれているけど、私の攻撃を全て器用に受け流すし、教わった通りに足にひっかけて転ばせようとしても器用にジャンブして躱されたり、踏みつけられて隙を作らされた挙句、軽く小突かれて仕切り直しになってしまう。

一応棒術の基礎って言うのも教わって、振り回したり突いたりも試してるけど鼻歌交じりに対処されてしまうのは何だか本当に悔しい。

ただ……私達のその一連の動作を外から見ている挑戦者の人達が時折私の方を見て


「いやぁ、ポニーテールから見えるうなじ、そして弾けて輝く汗、可愛らしい見た目も相まって絵になりますな」

「……えぇ、この救い無き世に救いを求めて武芸者になり申したが、彼女の腕の中で死ねるなら本望かもしれませぬな」

「おぬし!抜け駆けは許さぬぞ!ゼン殿とまずは立ち合い、互角とは言わずとも一度でも一撃を受け耐える事が出来たら、あのお弟子殿に挑んで良いと我らの間で決めたではござらぬか!」


 変な会話が聞こえるけど、気にしないようにする。

いやね?可愛らしいとか美人とかって言ってくれるのは嬉しいんだよ?、純粋に好意を抱いてくれるのって嬉しいし、魅力的な女性として見られてるんだなって思うと恥ずかしいけど、何だか承認欲求が満たされるような気がして楽しい。

本当はゼンさんに、そうやって見て貰いたいなぁって思う時はあるけど……暫く一緒に暮らしたりしても手を出したり、気があるような発言が出てこない辺り、もしかしたら若くして枯れちゃってるのかもしれないから半分諦めてる。

こんな超絶美少女がさ!


「ちょ!いきなり全力出すなって!」


 一つ屋根のしたでっ!さっ!


「ばっか、おま、また壊れんだろうが!」


 暮らしてるのに!何とも思わないって!


「あぁもう!おめぇ等!外で下らねぇ事言ってんならシャルネに挑めや!俺が許可してやるから!」

「それは誠でござるか!?ありがたいですぞ!」

「我らが死に場所、ここに見つけたりぃ!」

「いざ、行かん、我らが桃源郷、黄泉路への銭は充分ぞ!」


 ありえなくない!?ってあんた達邪魔なんだけど、もう!どうなっても知らないんだからね。

取り合えず、あなた達どいて、ゼンさんを殴れない!


「ぬわぁぁぁーーーっっっ!!!」

「本日もたった一撃で……ぐふっ!」

「満足ですぞぉ!!」


 外から乱入して飛び込んで来た気持ち悪い三連星が、木製の大鎌の一撃を手に持った武器で受けるとお互いの獲物を粉々に破壊しながら吹き飛ばされていく。

そして壁にぶつかり血を吐きながら何かを大声で言葉にしたかと思うと、気絶してしまったみたいでそのまま動かなくなる。


「さて、今日の稽古はここまでにしてっと、シャルネ!こいつ等の金で今日はご馳走食いに行くぞ?」

「え?ほんと!?じゃあカー君の所に行って皆で、お肉食べ行こ!」

「おぉ、そうすっかぁ……、あいつとは色々と話したい事があるしな」


……そうしてゼンさんは気絶している三人からお金の入った袋を貰うと、中に入った金額を確かめて笑顔を作ると家を出る。

多分……思った以上に沢山入ってたんだろうなぁって思いつつ、急いで彼の隣に並ぶと美味しいお肉に期待して垂れそうになる涎を必死に飲み込むのだった。

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