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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
箱庭へ

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鏡を見たら美少女でした

 ゼンさんに連れられて歩いていると、一人暮らしする程度には丁度良い大きさの家が見えて来た。

多分これが彼の家なんだろうなって思うけど狭そうだなぁ、転生前の世界だったら結構安いお金で借りる事が出来そう。

見る限りシャワーも付いてないだろうし住みたくないなぁって思うけど、もしかしたらこの世界の生活水準がこれなのかもしれないから、我慢しなくちゃいけないんだろうなぁ……。

取り合えず彼が家に入るようにと促してれたからお邪魔させて貰う事にする。


 「今から身体を拭くもん持ってくるからそうだな、てきとーにあそこの部屋にでも入って待っててくれよ」


 ゼンさんはそういうと玄関から入って直ぐの部屋を指で差す。

言われた通りに入るけど中には一人用のベッドに着替えが入っているだろう、小さいクローゼットがあるだけで寝て着替えるだけの部屋なんだなぁって印象を受ける。

こういう時ベッドの下には、秘密の本が隠されているとか聞いた事あるから……探してみようかなぁって思うけど、初対面の異性の家でやっちゃうのは悪い気がするなぁ、まぁ見るけどね!


「青春物のマンガとかだとここら辺でエッチな本が出てきて、ヒロインが興味本位で読み始めたタイミングで主人公男性が入ってきて気まずい雰囲気になっちゃうんだけどなぁ」


 無い!、どんなに探してもそれらしい物が出て来るような気配が無い!。

あったと言えばいつ脱いだのか分からない靴下とか男性物の下着が出てきた位で、青春を胸に感じる何てものじゃない、むしろ汚い思いを感じて青い青春よりも青い顔色だ。

特にこんな状況でゼンさんがきたら異性の衣類を両手に持っている不審者だ、そこから印象が悪くなって変態女扱いされたらどうしようって焦っていると片手にタオルと洋服を持った彼が部屋に入って来た。


「とりあえず外に干してたタオル適当に持ってきたから使ってくれ、着替えもさっきの二人から貰って来たからこれに着替えて……って何やってんの?」


 あぁ、終わった、はい私終わりましたー、転生して一日目にして異世界の新生活が異世界犯罪生活に変わりました。

これでこの世界に起きてる争いを止める為に来ました、何て言おうものなら説得力何て何一つもありません。

どうしよう、本当にどうしましょうって慌てているとゼンさんが申し訳なさそうに空いている方の手で頭を掻くと口を開いた。


「もしかして、俺が脱いだ服が部屋に落ちてた?」

「……あ、はい」

「ごめんなぁ、たまにやっちまうんだよ……、汚いもん見せちまってごめん!」

「き、気にしないでください、あのぉ……服が張り付いて気持ち悪いので着替えを早く貰えませんか?」

「あぁ、ごめんっ!……じゃあ、外出てまってるから終わったら呼んでくれよ?」


 そういうとゼンさんが部屋を出て行ったから、濡れている服を脱いで受け取ったタオルで体を拭きながら自分の身体を良く見る。

陶器のように綺麗な白い肌に黄金色に輝く綺麗な髪、顔は分からないけど彼曰く美人さんらしいから間違いなく美少女、これは勝ち組間違いなしですね。

ふふん、前世は地味子ちゃんで何も持ってなかった私も、今世は持っている側何て、実にいいですね。


「拭き終わったのはいいんだけど、この服凄いなぁ」


 スカートに十字架がついているゴスロリ風の修道服ドレスだ。

確か昔都内の駅を歩いてる時に来ている姿を何回か見た事あるけど、まさか私が着る事になるなんてなぁ……、でも問題は背中がぱっくりと空いているという事、いやセクシーなの?、美少女に何求めてるの!?、ちょっとお父さんの魔神さーん!お母さんの天神さーん!、あなた達は娘にセクシー衣装着せたがる親なんですかぁ!?。

それに他の服なんて白い綺麗なワンピースに腰の部分には、黒いベルトと背中当たりは黒いおっきなリボンがおっしゃれーっ!、でもね?何で背中が綺麗に空いてるの?、私の体型胸があんまり無いからアレを付けなくても何とかなるだろうけど、もし私に胸があったら将来垂れるよ!?ご両親様そこんとこ分かってますかぁ!?。


「いけない、頭の中でテンション上がり過ぎちゃった。とりあえずゴスロリさんの方着ようかな」


 見た時は着づらそうだなぁって思ってたけど、結構気安くてびっくりした。

ただやっぱり背中が気になるかなぁって感じで、これで外に出るのかぁって思うと恥ずかしくなる。

でも以前は縁が無かった服を着れるのは良いなぁって、感じでうきうきするけど、これで顔を見る事が出来てそっちの方でも雰囲気が合っていたら良いんだけどなぁ。

あ、そうだっ!


「あ、あの!ゼンさん!手鏡とかありますか!?」

「ん?あ、あぁ、それならクローゼットの中に鏡があるから自由に使っていいぞ」

「ありがとうございます」


 クローゼットの中に鏡があるタイプだったのかと思いながらも使わせて貰うと、見えた全体像に思わず小さな悲鳴が出た。

綺麗な髪の色に、整った傷一つもない綺麗な顔で在りながらも幼さが残る姿から来る儚げな雰囲気はまるで、お伽噺に出てくる天使のようで見惚れてしまう。

瞳の色も特徴的で、アクアマリンの綺麗な色をしていてまるで職人が手掛けた宝石のようだ。

うわぁ、これが私!?こんなの勝ち組確定っ!じゃなくて、外で出会ったら声を掛ける事すら躊躇っちゃって独身街道まっしぐらだよぉ。

昔働いていた時に会社の女遊びが激しい人達が喋っていたのを聞いた時がある、路上で声を掛けるならそれなりの人からちょっと美人な方が丁度良いって、逆に美人過ぎる人は略確実に相手が居るから声を掛けてはいけないんだって、正直女性を見た目で選んでまるで商品のように扱う彼等の事をさいってーだなぁって思ってたけど、いざ美少女になると考えてしまう。

こんなかわいい美少女が目の前に居たら、同性の私でだって声を掛けられないだろうなぁって、だってさ日常生活の中にいきなりこんな子が来たら眼を奪われる前に、何かがあるんじゃないかって怖くなるもの。


「シャルネさん、悲鳴が聞こえたけど大丈夫か?」

「え、あ、はいっ!鏡を見て似合ってるかみただけなので……」

「確かに似合ってるよなぁ、まるで奇跡を扱うシスターさん達みたいで綺麗だぜ?」

「あり、がとうございます……ってなんで入って来てるんですか!?」


 声が聞こえた方を見てお礼を言うと何故かゼンさんが部屋に居た。

いったい何時からそこに居たのか分からなくて警戒すると、何か背中から何かが出て来そうな違和感を感じる、もしかして感情が高ぶると羽が出るとかそういうのだったりする?。


「なんでって、悲鳴が聞こえたら心配になるだろ」

「あ、ご、ごめんなさい」

「まぁ問題なさそうだから良かったけどさ、それよりも着替え終わったんならいくぞ?、族長をいつまでも待たせるわけにはいかないし」

「は、はい!」


……確かにいつまでも人を待たせるのは失礼だと思うから彼と一緒に家を出て族長さんの元へ向かう。

暫く歩くと集落の中ではそれなりに大きな家が見えるからそこが多分その人の家なんだろうなと思うけど、家の前に誰かが立っている。

多分待っていてくれるのかなぁって思うけど、狐っぽい耳をしたお兄さんがいて、耳をぴくぴくさせながらこっちを見ていた。

あぁ、改めてこの世界ってファンタジー何だなぁって実感させられて、これから先どうなるのかと楽しみになっている私がいた。


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