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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
第二章 修行、そして旅に出る

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修行の中で……

 気が付けば栄花の首都に滞在するようになってから、一ヵ月程経過して……ゼンさんの家から神社までの往復に慣れて来た頃……


「おぬし、どんだけわっちの身体を壊せば使い方を覚えるんじゃ」

「あ……、え、だって」

「相手が死なぬ程度に生命力を奪い取るのが出来るようになったのは上出来じゃが、逆の与える方はてんでダメじゃな……見よこの死体の山を」


 不機嫌な顔をしたプリムラスグロリアさんが、積み上げられた桜色の髪を持った人型の山を指差す。

……最初は【暴食と施し】の力を制御できるようにする為に


『……これはわっちの生命力が入る前の人形じゃ、幾らでも作れるから好きに使うが良いぞ』


 と言ってくれたから、その通りにやっていたんだけど……最初は生命力を吸い過ぎて粉になってしまったり、加減をしようとしたらミイラになっちゃったり、更には凄い速度で奪い過ぎて、身体がボロボロとサイコロステーキ見たいになって崩れたりと酷い状況ばかりだった。

でも今は死なない程度に相手から吸い出す事が出来るようになったのは凄い進歩だと思う。

だって、目の前でスプラッタな現象が起きなくなったんだよ?私凄いと思わない?成長したって感じるよね。


「だって……相手に生命力を渡して癒そうとしてもどれくらいで治るのか分からなくて……」

「だからってのぅ、幾ら身体を実質的に無尽蔵に作れるとはいえ……このままではなぁ、そうじゃなぁ、ならこれならどうじゃ?」


 うん、私は凄い!でも……逆に……癒すとなると話は別で、自分の傷がどうすれば治るのかすらイメージが出来ないのに、いざ他人に奪った生命力を流して傷を癒せと言われてもやり方が分からない。

いやね?生命力を流し込む事で、体内の細胞が活性化して損傷が早く治るのは理屈としては何となく分かるよ?、でもそういうのって目では見えないじゃない……そういうのってどうやって想像しろっていうの。

昔やってたアニメみたいに、身体の中をモチーフした作品を思い浮かべる感じ?でもそれだとなんか、私の妄想が合わさって変な感じになりそうだし、本当にどうすれば……


「……どれ、おぬしの為に特別な肉体を用意したぞ!これなら出来るのは無いか?」

「とくべ、つ?」

「うむ、税として徴収したゼンの生命力とそこに転がっておるわっちの山の中からかき集めた生命力で作った、奴の分身みたいなものじゃな……ほれ、大事な仲間が相手となれば出来るかもしれんぞ?」

「え、……あ、うん、やってみる」


 私の目の前に、外見は髪の色が桜色になっている事以外はゼンさんにそっくりな人型の存在が現れる。

それをプリムラスグロリアさんが手に持った担当で、胸や首の一部等を刺して大量の出血を促すと……


「ほれ、早くやらんと死んでしまうぞ?」

「……むぅ、このスパルタ、何が豊穣の神よ、邪神の間違いじゃないの?」

「はっはっ、何を言うかおぬし等が神と呼ぶ存在を人の範疇で捉えるんじゃない、わっち等は気まぐれで人を救えば逆に滅ぼしさえする、今のように国を治めているのも、わっちが神格を維持する為に生命力が必要じゃからだしのぅ……つまりシャルネからしたらわっちが邪神に見えても、他の奴からしたら善神なのじゃよ」

「……あぁいえば直ぐこういう!」


 急いでゼンさん仮に近づくと、背中から右に悪魔と左に天使の翼を生やして左手で優しく触れる。

そしてゆっくりと体の中にある生命力を相手に流し込んで行くと……、直ぐに血は止まったけど……徐々に苦し気なうめき声を出し始めて小包に震えだす。

……これが始まると、口から泡を吹いたかと思うとそのまま身体を痙攣させて死んでしまったり、場合によっては身体が内側から弾け飛んだり、最悪な場合人の形を失って丸々とした大きな肉の団子みたいになってしまう。

これはまた失敗かなって思ってあきらめようとしていると……


「……シャルネよ、同じミスばかりしておるからいい加減ヒントを与えても良いか?」

「ヒ、ヒン……ト?」

「うむ、おぬしは天使の翼が生えておる方の左腕で生命力を分け与え、悪魔の翼が生えた右腕で生命力を奪うじゃろ?」

「え……、あぁ、うん」

「それなら過剰に生命力を流し過ぎてしまってるのなら、その分を右腕で吸えば良いのではないか?そうすれば相手とシャルネの間で生命力が、水のように流れると思うのじゃが」


 ……その発想はなかった。

取り合えず言われた通りにしてみると、ゼンさん仮の苦しそうな顔が無くなり表情も気持ちよさそうにしている気がする。

あ……これなんかいいかも、相手が触られて安心してる表情ってなんか来るものがあるって言うか、こう……うん、えぇっと胸がキュンってしてしまう。

新たな生癖の扉が開いてしまうかもしれない!。


「そうそう……そのちょう……し、おぬし!何をやっておる!?」

「ぐへへ……へ?あ、あぁ!?」


……妄想に集中し過ぎたせいで、生命力を循環させる速度が興奮のせいで早くなってしまっていた。

そのせいでやっと傷を癒す事に成功したと思ったのに、今度は目の前で急激に枯れ木のようになったり元に戻ったりを繰り返す、ゼンさん仮の余りにも変化の忙しい姿があるのだった。

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