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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
箱庭へ

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桜色の少女

 ゼンさんに案内して向かってちょうだいって言われても、何処に行けばいいのかな……。


「あぁ……、何処に行けば良いんだっけか」

「ゼンさん?」

「いや、久しぶりに来るからうろ覚えというか……」


 とりあえず神社の中を歩いて見るけど、こういう時って本殿っていう場所にいるんじゃないの?と思うけど、ここが私が前いた世界と同じとは限らないからどうなのかな。

もしそうだったら嬉しいけど、お賽銭を入れる箱とかが出てきたらちょっとだけ複雑な気持ちになる。

だってさ、この首都って和服を着てる人達が多いし建物の形も時代劇で良く見る物ばかりで、ドラマの撮影セットの中に迷い込んでしまったような気がして何だか落ち着かない。


「多分だけど……本殿って場所にいたりしない?」

「本殿?あぁ、それなら場所を覚えてるな……確か神社に入って真っすぐ進んだ場所に、賽銭箱があるのが目印だった筈」

「やっぱり賽銭箱あるんだね」

「あぁ、あるぞ……っておまえ、妙に神社に詳しいな」

「あ、え……お、お父様とお母様から神社っていう所に付いて教わったから……」


 ごめんなさい本当は前世の記憶ですって言いたいけど、現状天族と魔族の神から産まれた娘っていうだけでも設定てんこ盛りなのに、更に追加情報何て与えたら私だったら理解できずに混乱してしまうか、この人何言ってるかなってなると思う。

だってゼンさんからしたら私は異世界人だし、更に転生者ですなんて、理解を求める方が無理気がして……


「なるほどなぁ……っと、あれが賽銭箱だ……参拝者が賽銭を入れた後にプリムラスグロリアに祈りを捧げる場所だな」


 やっぱり見覚えのある賽銭箱だ。

……もしかしてだけど、この栄花って場所は私の前世の国と関係があるのかもしれない。

そう思うと何だか胃がキリっとして痛むような、そんな感覚があって少しだけ嫌。

何で生まれ変わったのにあの世界との共通点を見つけなければいけないのかな。


「ん?顔色悪いけどどうした?」

「な、何でもない……」

「何でもない訳ねぇだろ?我慢してねぇで言ってみろよ」

「あ、え……あの、ね?変な事言っちゃうんだけど……なんか栄花の元になった世界に心辺りがあるというか……ね?」

「ん?あぁ……あの刀を振ったり、日夜領土の奪い合いばかりする奴がら多かったという戦国に心当たりある何てすげぇな」


 あれ?私の知ってる時代ってそんなに血なまぐさかったっけ、覚えてる範囲だと確かにお侍さんとかはいてもそこまで危険じゃなかったか気がする。

という事は私の勘違いか……良かった。


「ほう……元ん世界?そりゃあ戦争と黄金ん国ん事ぅ言いよんのかえ?あんた物知りやなぁ」

「……へ?」

「この声……出たな?」


 賽銭箱の前に立つと後ろから訛りが酷くて、何て言ってるか分からないかわいらしい女の子の声がする。

驚いて振り向くとそこには煌びやかな着物に身を包んだ、地面に届きそうな程に長い桜色の長い髪に綺麗なバラ色の瞳を持った可愛らしい女の子がちょこんと立ってこちらを見ていた。


「そん反応、どうやら勘違いやった?まぁいいけど……あんたはなしこき来たん?何ん用?……それにそこん戦馬鹿は出たなたあ、人ぅ物ん怪んごつ扱うんじゃねえちゃ……失礼ね」

「ゼ、ゼンさん……この人知り合い?」

「ん、あぁ知り合いも何もこいつが──」

「わっちが誰か何てどげえでんいいよね?、それよりも本殿まで来たんやけんプリムラスグロリア様にお参りついじにお守りも買うちいきなさい」

「……お、おま、もり?」


 別にお参りするのは良いけど、プリムラスグロリアは何を司る神様なのだろう。

それにしても今一言葉が分からなくて、言葉の要所要所から辛うじてこんな事を言ってるんだろうなぁって察する事しか出来ない。


「そう、お守りちゃ……こん神社ん神であるプリムラスグロリアはな?豊穣ぅ司っちょんけんね……お参りする事じ、なんと子宝に恵まるると噂なんちゃ」

「へ、へぇ……」

「子宝も何も、風俗街に通っては日夜若い男から生命力を食い荒らしてるバケモンだろ」

「何ゅ言うか、こん国に住む以上税としち人間の生命力ぅ徴収しちょんたあいえ、それだけじゃ腹が減るんや……、ほいだら自分の欲ぅ吐き出しに来た若え男から貰うてん問題は無かろう」

「生命力を使って自身の分身を産み出して遊ぶよりも、もっとこの国の為になるような事をしろよプリムラスグロリア、それに何だその言葉使いは……会うたびに口調を変えるの止めろよ何言ってんのか全然分かんねぇよ」


 え?このどう見ても小学生になるかならないか位しかない女の子が、プリムラスグロリアで風俗街に通ってるの?ちょっとそれ倫理的に危ないよね。

いや……でも、神様って言う位だから私達よりも遥かに年上だろうし、それに分身を産み出してって事はあの姿は私に警戒させない為かもしれない。


「……何じゃつまらん男じゃ、久しぶりにあったのだから付き合おうてくれても良かろうに、あの言葉使いは最近この首都に来た人が話してるのを見て、可愛らしくてのぅ……ついつい真似してしまったんじゃよ、こういうわっちも可愛かろう?」

「見た目が幾ら良くても中身が化け物なら可愛くもなんもありゃしねぇよ……シャルネもそう思うだろ?」

「……私は可愛ければ別に、でも次からは何を言ってるのか通じるようにして欲しいな」

「何と……おぬしには通じておらんなんだか、それは失礼な事をした」


……目の前の少女が頭を下げると『どうじゃ?幼子が目に涙を浮かべて謝る姿は美しかろう?』と言って笑い始める。

何て言うか……独特な雰囲気の人だなぁって思っていると『……どうやらわっちのお小遣いも入れてくれないみたいだし、積もる話は本殿の中でしようかの』と言って本殿へと小走りに向かうと、身体全体を使って扉を一生懸命開くのだった。

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