謝罪と妄想
ゼンさんが手練れと言う程の相手って何だろうって思うけど、それよりも全身血まみれで出てくるのはやめて欲しかったなぁ……。
「シャ、シャルネ?」
驚いて腰が抜けて上手く立てなくなってしまって恥ずかしい。
と言うか正直夜に血まみれの状態で現れたら悲鳴上げると思わない?これはもうこうなってしまうのは当然だと思うし、ゼンさんは謝るべきだと思う。
だってさ、可愛いくて綺麗な美少女な私がこうなってるんだから責任取るべきだよね?
「ゼンさん……」
「おぅ?どうした?」
「……怖かったから謝って、ゼンさんが私を怖がらせたんだから」
「ん?あぁ……確かに怖かったよな、シャルネが連れていかれないように警戒してたのに連れていかれちまったし、その後何があったのか分からないけど嫌な思いさせたと思う、本当に悪かった!」
真剣な顔をして頭を下げて来るゼンさんを見ると、謝らせたのは私なのに凄い申し訳ない気持ちになっちゃう。
それになんか私達のやり取りを見てるカー君と妊婦さんが反応に困ってるのか面白がってるのか分からないけど、こっちを見て笑ってるし……
「えっと、そこまで謝らなくても……?ほら私元気だよ?連れていかれた時に色々とやっちゃったから背中からまだ翼が出たままだけど、それはほら気が立ってるだけで落ち着いたら戻ると思うし……」
「……それでもだ、シャルネに怖い思いをさせたのは俺に責任がある、これはちゃんと謝らないと筋が通らねぇよ」
「えっと、じゃあ……謝ってくれたから許す……ね?」
「あぁ、ありがとうなシャルネ!」
そう言って笑うゼンさんのお尻から生えてない筈なのに、尻尾を激しく左右に振ってるように見えて可愛く見えてしまう。
……これで血まみれじゃなかったらもっとかわいいのになぁって思うけど、言ったら雰囲気が台無しになっちゃいそうだから気にしないようにしとこうかな。
「あー、えっとそういえば君の名前をまだ聞いてなかったね」
「は、はい……私はダニエラと言いますカーティス様」
「ダニエラ……とても可愛らしい名前だね、あそこの二人はなんだか忙しそうだから先にテントに入って寝ようか、今まで嫌な思いを沢山してきたと思うから眠るまで隣で手を握っていてあげるね」
「……ありがとうございます」
「という事だからゼンっ!君の荷物の中に予備のテントがあるだろ?それを組み立てて今日はそこで休んで欲しいんだけどいいかな?」
それってカー君が単純に妊婦さんをテントに連れ込みたいだけでは?って思ったけど、体を優しく抱き上げなら中に運んでゆっくりと降ろす姿を見たら、本当に心配してるんだなって感じて……少しでも不純な妄想をしてしまった私が恥ずかしくなる。
「そうか?ならその人の事は任せたけどさ、まさか一緒に連れて行くのか?」
「いや、近くに安全な村や町があったらそこに預けるよ、町から取って来た金目の物を全部渡せば受け入れてくれるだろうし、子供が産まれたら直ぐに集落の妻達と合流できるようにするつもりさ……彼女達には俺が集落を出たら世界中に散らばってこれから増えるだろう俺の妻と子供達を支えるように前もって伝えてあるからね」
「……カーティスさぁ、お前どんだけ子孫を増やす気だよ」
「そりゃあ勿論、俺が愛する女性の数だけかな」
「俺……、お前のそういうところだけは理解できそうにねぇや、とりあえず今日は俺とシャルネが寝ずの番をしとくからカーティスはその人と一緒に寝てやれ」
正直私もカー君の考えが理解出来ないけど、きっとこれから先訪れた場所で奥さんを増やすんだろうなぁって思うと止めた方がいい気がするけど、たぶん無理なんだろうなぁ。
だって見た目が凄い綺麗な美青年だし、雰囲気がとてもエッチで声も良いし、男性に慣れてない人なら即落ち二コマ余裕でしたになってもおかしくない。
そこに追加してあの妊婦さんみたいに弱ってる人に優しく寄り添えるところとか、落とせない女性の方が少ない気がする。
「ならそうさせてもらうよ……、あぁそうだシャルネ、今日はベッドでゆっくり休ませてあげられなくてごめんね、じゃあおやすみ」
「……うん、カー君おやすみなさい」
「ゼン、シャルネの事頼んだよ」
「おぅ、んじゃおやすみ」
カー君がテントの入り口が閉めると、暫くして中から優しく囁く声が聞こえて来るけど、なんだかやましい事をしようとしているんじゃないかと気になって覗きたくなる。
もしかしたら薄い本のような展開があるんじゃ!?リアル薄い本案件来ちゃうのかも?これはやっぱり見に行くしかないじゃない……。
「……覗くなよ?」
「え?のぞか……ないよ?」
「……暗くても分かる位に酷い顔してんぞ?」
「あ、あのこれは……あ、はい覗きに行こうとしてました」
「自分の欲求や気持ちに素直なのはいいけどさ、ほどほどにしとけよ?俺はシャルネのそういうところ嫌いじゃねぇけど、嫌がる奴も普通にいると思うからな」
……そう言ってカー君が集めてくれた木材に火をつけたゼンさんは、炎に照らされながら困ったように笑うと、いきなり服を脱ぎだして焚火の中に投げ入れる。
驚いて細いけど逞しい身体を見ていると『ん?あぁ……、血まみれの服は洗っても匂いがとれねぇからな、このままだと血の匂いに誘われてやべぇのが来るかもしれないし、こうやって捨てた方が良いんだよ』とバッグの中から水と布を取り出して湿らすと体を拭きながら言う。
その姿を楽しんで見守ると着替えが終わったゼンさんと二人で話しながら朝を待つのだった。




