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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
箱庭へ

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誘拐された私と被害者達

 いったい何処に連れて行かれるのかなぁって思いながら担がれているけど、何となく何があっても大丈夫なんだろうなぁって思う。

だってゼンさんやカー君が助けに来てくれるだろうし、それにいざとなったら私の能力で倒してしまえば……まぁ、まだまともに制御出来ないからどうなるか分からないけどねっ!


「お嬢ちゃん大人しくしてくれよ?あんたは貴重なこの町の嫁さんなんだからよ」


 この町の嫁さん?それって、誰かのお嫁さんになるんじゃなくて複数人のものになるって事……、うわぁ気持ち悪い。


「って……やけに大人しいな、こういう時って普通暴れたりするもんじゃねぇか?」

「だ、だって……暴れたら……」

「あぁ、攫われた時点で諦めちまったって訳か……、物分かりいいじゃねぇか」

「ち、ちが……えっと……」

「あん?何を言いてえのか分からねぇけど……まぁいいか、大人しくしてるから特別に教えてやるけどよぉ、嬢ちゃんは今からこの町で嫁さんがいない男の家に嫁入りすんだぜ?いやぁめでてぇなぁ」


 ん?町の嫁さんって、この町の独身男性と結婚してお嫁さんになるって事だったんだ。

いや、どっちにしろ気持ち悪くないっ!?、ちょっと……ゼンさん早く私を助けに来てっ!早く来てーっ!来てくれないと可愛くて美人で美味しいご飯が作れる私がどうなっても知らないよ。

ほら、来るなら今だよっ!出来ればタキシードを着て仮面を付けた状態で現れてきざなセリフを言うとか……、そんな状況を私は希望します。


「ふひ……、ひひ」

「うわっ!何だこの嬢ちゃん涎垂らして……きったねぇっ!」

「ご、ごめ……」

「何で攫われてんのにそんなだらしがない顔出来んだよ……あんたこええよっ!」


 そう言いながら目の前に見えた一軒家のドアを開けるとそのまま家の奥にあるベッドの上に投げ捨てる。


「……嬢ちゃんはここで他の女達が来るのを大人しく待ってろよ?、色々と嫁入りの準備をしてくれっから」


 ……仮にもこの町の誰かに嫁入りさせようとしてるのにその扱いは酷いんじゃない?、これさもし頭を打ったりして怪我したらどうするつもりなのかな。

結婚前に傷物にしたらどう責任を取ってくれるのかな、いやこの場合誰が責任を取るべきだと思う?……うん、これはゼンさんが責任を取るべきだね。

まだ傷付いたわけじゃないけど、誰か入って来ないか警戒してるとか言った癖にこうやって私が攫われちゃってるんだから当然だと思う。


「町長が後でおめぇさんの旦那になる男を連れてくるから大人しくしてろよっ!」


 勢いよく扉が閉められたと思ったら複数人の足音が近づいて来て、直ぐに扉が開けられる。

そして部屋の中に町で見たお腹の大きい女の人や骨の形が分かる位に痩せ細った女性達が入って来たかと思うと……


「……あなたも捕まったのね?」

「え、あ、あの……」

「無理して答えないでいいの……怖いわよね、私達もそうだったわ」


 そう言いながら近づいて来る皆の眼は死んでいて……、何て言うか前の世界で日本人として生きていた頃の自分を鏡で見た時を思い出して嫌な気持ちになる。


「とりあえずその綺麗な服を脱いでこちらの服に着替えましょう?この町では女性は男性よりも目立つ服を着ては行けないし、食事も旦那様が許可した分しか食べちゃいけない、そして旦那様が望む事を全てしなきゃいけないの、これからあなたも私達の仲間になるのよ」

「でもあなたのお人形のような顔、透き通るように綺麗な肌……、そして絹糸のような髪きっと凄い大事にされて、美しさを保つために美味しいご飯も沢山食べさせて貰えるのでしょうねぇ」

「気に入らない、私もあなたみたいに綺麗だったらこんな苦しい生活しなかったのにっ!」

「え、あっ、待って!?」


 女性の一人が刃物を取り出して私の顔に向かって突き立てようとしてくる、驚いて背中から悪魔と天使の翼を出してしまうと……咄嗟に自分を守る為に腕を掴んでしまう。


「ぎ、ぎぃぃっ!?」

「あ……やっちゃった」


 私の身体の中に女性の生命力が流れ込んで来る。

急いで戻そうとしたけど間違えて他の人の手首を掴んでしまい……。


「な、何かが私の中に!?」

「ひ、ひぃぃ!?ば、化物!?」


 生命力が奪われた女性は何も言えずに灰になって消えてしまい。

注ぎこまれた方は痩せ細った体型が健康的なものへと変わり、落ちくぼんでしまっていた瞳が元の位置へと戻って行き、膨らんだお腹を自分の足腰でしっかりと支えられるようになったのか、猫背気味だった姿勢が真っすぐになって凄い健康的……、あれ?もしかしてこれって私やらかしちゃいました?じゃなくて、良い事しちゃいました案件かも?……。

そして最後の一人は私の姿を見て腰が抜けてしまったのかお腹を守るようにしながらその場にへたり込んでしまう。


「……あれ?私の身体が軽い?何で?えっ……え?」

「よ、よかっ……良かったね?」

「これなら私この町から逃げられるかも……、逃げられないように定期的に切られてた足首も痛くないっ!」


 そう言うとお腹が大きいのに凄い速さで歩くと部屋を出て何処かへと行ってしまう。

残った方はというか……


「やめ……やめて、私を殺さないで……」

「えっと、どうしよ」

「私もあなたと同じ旅人で……、宿を借りる為に町長さんの家に行ったら無理矢理こうなった被害者なの、だからお願い助けて死にたくないの」

「わ、わた、しそんな事しない……よ?」

「嘘よ……だって、この町の女性を纏めてるリーダーを殺したじゃない」


 ……あぁ、あの凶器を手に持って襲い掛かって来た人ってリーダーさんだったんだなぁって驚いたけど、やっちゃったものはしょうがないしなぁ。

そう思いながらどうしようか悩んでいると部屋の窓が小さく叩く音がして、振り向くとそこにはカーくんが笑顔で私の事を見ているのだった。

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