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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
箱庭へ

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19/73

とても不快で嫌らしい町

 あの後ゼンさんに着いて行ったら確かに町に着いたけど、何て言うかこれは……集落と比べて雰囲気が暗いというか。

何て言うか居心地が悪そうな気がするけど……


「……やっぱりベッドで寝るのはいいなぁ」


 このベッドの寝心地の良さの前ではそんな事気にする必要も無いというか。

やっぱり旅の間、カーくんが夜の見張りをしてくれていたからゆっくり休めていた気がするけど……、慣れない環境のせいで疲れが溜まってたんだろうなぁって思う。

とは言え、町に着いた時に近くで畑仕事をしている人にゼンさんが宿があるか聞いたら……


「あぁ?、……こんな小さな町に宿なんてないぞ?」

「まじか、それなら泊まれる場所が他にあったりしないかな、俺達の連れが慣れない旅で疲労を溜め過ぎちまってさ、休ませてやりたいんだよ」

「あぁ……、それなら町長の家に行けば泊めてくれんじゃねぇかな、話好きな人の良い爺だから行ってみなよ、ほらあそこの屋根の色が一つだけ違う大きな家があんだろ?あそこだ」

「お?わりぃな……、それなら早速行かせて貰うわ」

「おぅ、ちゃんと休めたらいいな、あぁところでその旅慣れて無いって言うのはそこの綺麗な娘さんだろ?……確認だが、あんた等の女じゃねぇよな?」


 と言う発言の後、何故か私の身体を下から上まで嘗め回すような視線を向けて来たけど……いったいどういう意味で聞いて来たのかな。


「いや?俺達はそう言う関係じゃねぇぞ?」

「そうか……、とは言えそりゃそうだよなぁ、見た目は凄い綺麗なのに胸が平らで貧相って来たら関係も発展しやしねぇわな」

「……君さ、彼女に手を出そうとか考えてないよね」

「は?んな事ねぇよ、ってやっべ仕事仕事、早くしねぇと夜になっちまうよ、あんた等も暗くなる前に町長の所に行ってきな!」


 と言うと失礼な人は畑仕事に戻って行く。

確かにこの身体になってから胸が平らって言うか……、無くなってしまったけど初対面の人にそんな事を言われたくない。

そもそも人の事を見た目だけで選ぶような人と何て居たくないし、将来一緒にいるなら私の内面を見て選んでくれた人の方が良いなぁって……、まぁとは言え見た目が良いという事は初対面の印象が良くなるという事だから悪い事では無いけど……、良すぎるのも何かこういう面倒な事になる見たいだから、あんま良くないのかも?

と言う事で今は町長の家にある空いてる部屋を提供して貰ってゆっくり休んではいるんだけど……


「シャルネ、そろそろ夕飯だってよ、町長さんが食べながら話をしたいらしいから行こうぜ」

「あー、うん、わかったー」


 町長さんの家に行く道中で思ったんだけど、この町って女性が数人しか居ないというか……何て言うか凄い元気が無い人が多い。

何て言うか痩せ細っていて不健康に見えるのにお腹が大きくて……、何て言うか大人の男性と小さい男の子ばかり、それだけでも何て言うか嫌な気がするって言うか。

もしかしてだけど、少ない女性を使って町の住人を増やしている?いやいやまさか、そんな人を道具みたいに使うだなんてそんな事倫理的に良くないと思う。

勿論これがこの世界って言うか、国の常識だって言われたら私じゃどうしようも無いと思うし、外の世界から来た存在が関わっちゃいけない気がするけど……、もしこの町だけがそうだったのだとしたら今日一日休んだら直ぐに出て行こうって二人に話してみようかな。

そんな事を思いながらゼンさんと二人で食事の用意された部屋に向かうと……


「おぉ、おぉ良く来てくれました、慣れない旅でお疲れだと聞いておりましたのでご一緒出来ないと思いましたぞ?」

「あ、あの、いえ……あのあの、せ、せっかくつくって……貰ったので……」

「あぁ、町長さん気を悪くしたら申し訳ないけど、この子は初対面の相手だと人見知りが酷くて良く話せないんだよね」

「なるほど、そうなのですね……、ですがその美しさ、例え人見知りしてしまう方だとしても、人に慣れたら素晴らしいのでしょうな……、それにお嬢様が何を言いたいのか分かりましたから問題ありませんぞ、その気持ちだけでもありがたいですな」

「は、はい、あの……いた、頂きます」


……この人もだ、私の身体を嘗め回すように見て来る。

取り合えず気付かない振りをしながら椅子に座って用意された食事を食べ始めるけど……、乾いたパサパサの硬いパンと野菜が沢山入ったスープが何て言うか食べづらい。

一応二人の真似をしてパンをスープに付けて柔らかくしながら食べてるけど、食事の最中も商品を見定めるような、何て言うか嫌らしい視線で見られて嫌になりそう。


「……食事の作法もしっかりとしておられる、もしかしてと思いますが良い所のお嬢様ですか?」

「え、あ、あの……」

「いや、違うぞ?俺と同じ町はずれの集落で産まれ育った、幼馴染でそんなんじゃねぇよ、むしろ子供の頃は俺が眼を話すと直ぐ木に登って降りれなくなるわ、川に飛び込んでびしょ濡れになるわでお転婆が過ぎて世話が焼ける村娘だ」

「ほぅ、そうなのですか……人は見かけによらないものですな、それにしてもそこまで活発な娘となるとさぞ良い男児が産まれるのでしょうなぁ、良き男の元に嫁げば生活に困ら無さそうで、これは例え話なのですがな?この町には男ばかりで女が極端に少ないもので嫁を貰う家が少ないのですよ……、もしこの町に滞在している間に良き人が現れたら夫婦になるのはどうですかな」

「え、あ、の……そういうのは、私まだ誰とも付き合った事……ない、し」


 私のその言葉を聞いた瞬間、町長さんの目の色が変わったのが見えた。

驚いて食事の手が止まってしまうけど、顔色一つ変えないでそれを聞いているカーくんを見ると、やっぱりこの世界では女性の地位が低いのかもしれない。

心を落ち着かせる為にゼンさんの方を見ると、笑顔で聞きながらも自分の足を力強くひねり上げて我慢しているようで、まるでその手を離したら今にも暴れ出しそうな雰囲気で……、でも私の視線に気付いたら落ち着かせるように優しく笑ってくれて、気持ちがちょっとだけ安心する。


「ほぅっ!と言う事は生娘なのですなっ!これは素晴らしい……、あ、いえ、ごほん、申し訳ありません、特に何でもないのですが、もしこの町で良き出会いがあり関係を持ちたいと思う程の出会いがありましたら是非このまま夫婦として末永く暮らしてくださ……、お、おや……も、申し訳ない、急にお腹の調子が、大事な会話の席なのにし、失礼致しますぞっ!」


……町長さんがそう言うと急いで椅子から立ち上がり、焦ったように部屋から出て行ってしまう。

良かった……やっと気持ち悪い視線と口調から解放された。

そう思っているとゼンさんが笑顔で『カーティスおまえ……、一服盛ったな?』と言うと、それを言われたカーくんが『……俺の魔法で町長のスープに微弱な毒をね、これで暫くはトイレから出て来れないんじゃない?』と眼を細めて魅力的に微笑む。

あぁ、良かった……カーくんも怒るのを我慢して耐えてくれていたんだと思うと安心して私も笑顔になるのだった。

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