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箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―  作者: 物部 妖狐
箱庭へ

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勇者と聖女

 先程までそこにあった筈の集落が跡形もなく消えてしまった事に驚きが隠せないというか、もしかしてだけどこれって童話とかに良くある狐に化かされたって奴なのかな。

ほら昔から狐って人を騙すっていうし、でもキューちゃんに騙されるように事をした記憶は無いんだけどなぁ……、確かにこの世界の常識を教えて貰っている時とか何度も聞き直したり、同じ所で躓いて迷惑を掛けたりとかしたけど、それで怒るような人には見えないし……、と言う事はもしかしてあれかも?、キューちゃんが楽しみにしていた油揚げをつまみ食いした事かな……、でもそれに関したら謝ったら許してくれたから違うと思う。

んー?、じゃあ何なのかな、思い当たる節が多すぎてどれが原因なのか分からない。


「……まぁ、グロウフェレスからしたら一旦集落を隠すのは当然か」

「当然ってどういうことなの?」

「考えて見なよシャルネ、あの集落は戦いに疲れた人達が集まった場所だからね、君があそこにいた事が他の国に知られているという事は、望んでもいない戦いに巻き込まれる事になるんだよ」

「その危険から遠ざける為に術をかけて認識をずらしたって事だな……、ほらさっき鈴のような音がしただろ?、音で相手に催眠の術をかけてそこに集落があっても眼に映らなくしてんだよ」

「へぇ、何て言うかファンタジーって感じだね」


 とりあえずこの場にいてもどうしようもないから適当にその場から離れながら話してるけど、私の発言を聞いた二人が何を言ってんだこいつって顔で見てくるけど、確かにこの世界の人達からしたらファンタジーって言われても分からないのかも、でも剣と魔法がある世界ってだけで私からしたら未知の世界なんだけどなぁ。

でも確かにいきなりこんな事言ったらそんな反応されるのは当然だと思うけど、ちょっとだけ気持ちは複雑かも……


「まぁ、シャルネが変な事言うのはいつもの事じゃない?」

「そりゃそうだけどこれからこの調子だったらまずくないか?」

「……そこはほら、良家のお嬢様で常識に疎いって事にすれば」

「疎いと言動がおかしいは違うだろ……」


 何て言うか好き勝手言われてるなぁって思うけど、そこまでおかしいのかな……。


「確かにおかしいかもだけど、俺が戦場に居た時とか五大国の神の名前を言いながら世界に選ばれてニホ、ン?から召喚された勇者だーって名乗る意味が分からない人とか自称聖女を名乗る、異世界からの転生者って言うのと比べたらましな方じゃないかな、魔族や天族の姿を見ると世界に害を成す者よとか言って斬りかかって来たり、魔法で攻撃してくるし」

「……あぁ、そういえばいたなぁそんな奴ら、俺達人間達がお前等と仲良くしてても裏切者って襲い掛かって来るの危なすぎんだよなぁ、俺達はあくまで巻き込まれた側だっつうのにな」

「勇者に聖女ってそんなにいるの……?」

「結構いるぞ?五大国それぞれが異世界からの転生者や召喚者を保有してるな……、何でも魔族と天族の全てを滅ぼせば望みを叶えるという事で力を与えてるらしいけど、どいつもこいつも私は不幸ですって言う顔をしてるっていうか、今迄辛い目に合って来たと急に自分語りするめんどくさい奴らだよ」

「へ、へぇ……」


 そんな事言われたら私も同じような感じで死んで、この世界に転生したから同じ人種を見ているみたいで複雑な気持ちになる。

でも私は元居た世界に恨みはあんまりないから厳密には違うんだろうけど、それ以外の部分は似ているんじゃないかなぁって思う。

そもそも自分を不幸だと思ったり、色んな物を奪われたりしてきて最後には命を失ったわけだけど最期に関しては最初は後悔したけど、今は何て言うか人助けが出来たから良いかなぁって感じ、死んだ事に関して文句が無いのかって言われたら嘘になるけど、死んだ事でこうやって新しい命と美少女の身体を手に入れて、凄い強い能力を得る事が出来たんだから、後は自分の力で出来る事を手段を選ばずにあって幸せになればいいだけだし、ほらその人達とは全然違うでしょ?ほんとだよ?だって折角生まれ変わったのに何時までも前世に拘る必要なくない?、あぁでももし帰る事が出来るってなったら私が強くなって幸せになった姿を日本の人達に見せてあげてもいいのかもしれない。

不幸だった私もこんなに幸せになれましたっ!ってお父さんとお母さんに結婚の挨拶に行く娘みたいな感じで……って言っても私に親何ていないから難しい事は何も分からないけどね。


「まぁそういう意味ではシャルネも異世界から来たんだよな……」

「え?」

「え?ってシャルネは魔神と天神の間に産まれた子でしょ?この世界に来るまで二柱に大切に育てられて来たのに何を言ってるんだい?」

「あ、うん、この世界に来てからの出来事が濃すぎて忘れてたかも……、ごめんねカーくん」

「俺からしたらお前の存在そのものが濃すぎんだけどな?」


……呆れた顔をしてそういうゼンさんを見たカーくんが吹き出して笑い出すけど、私ってそんなに濃いのかな。

んー、でもこの世界にいる人達からしたらそうみられてもおかしくないのかも、そう考えて一人で納得していると『ところで、そろそろ日が暮れるから野営の準備をして、明日について話そう』とカーくんが提案するのだった。

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