とある夜明けの。
――ああ、寒い。
何の意味もなくそんなことを呟いた。
どこまでもありふれた平凡な一日がまた始まろうとしている。
それはこれまで何百何千何万と繰り返されてきた定め。
過去も現在も未来も変わることなく。
そして、その繰り返しはきっと、この先もずっと続いていく。
こんな寒さの中では温もりを求めたくなる。
温かい飲み物でもあれば、なんて思いながらも、まぁいいかと流してそのまま時だけが流れた。
机の端には恐らくもう誰の目にも触れることのない便箋。そこには、季節を訴えるような聖夜的モチーフと間違いによって書かれたパァだけがそっと佇んでいる。やがて春が来て、夏が過ぎ、次の秋が訪れても、きっと……その一枚の便箋はそこに佇み続けているに違いない。あるいは、思いきって絵柄だけ切り取ってどこかに貼ってしまうか。あの日うっかり、パァ、と書いてしまったその瞬間に、便箋の命は尽きた。なぜパァと書いたのか、その答えは永遠の謎という海に沈んだ。
もうすぐ朝が来そうだ。
しかし待っているとなかなか来ないこともまた事実。
今はただのんびりとその時の訪れを待とう、なんて、かっこつけたことを言ってみても、視界の端で華麗に反復横跳びをするパァという字が気になってどうにもならない。
……ただ、この一枚の書き損じとは、今後長い付き合いとなりそうな気がする。
作業する時も。
整理する時も。
居眠りする時も。
きっとその便箋は見守ってくれることだろう。
これからよろしくね、なんて言ってみようか。
◆終わり◆
――パフォーマンスて書こうとしたらパァになった!!(なんでや)
ー完ー




