第92話:雷の神殿への帰還
風の神殿の試練の広間で、扉が開き、「風の翼」が姿を現した瞬間、タクミはストームライダーのコックピットからその輝きを見つめた。流線型の魔鋼フレームに魔脈スラスターが組み込まれた飛行ユニットが、風を切り裂く翼の形をしていた。ガイストの声が響く。「装着開始。同期率90%……95%……完了。機体推力1万2000ニュートン、トルク400N・mに更新。飛行準備完了」
風の翼がストームライダーの背部に接続され、スラスターが唸りを上げた。タクミが起動すると、機体が浮かび上がり、神殿の天井を突き抜ける。空に飛び立った瞬間、仲間たちが地上から見上げる。
「タクミ、これでゼノスに勝てる!」リアがエーテル・ノヴァを握り締めて叫ぶ。
「貴族の支配を終わらせるぜ」バルドが嵐の双剣を肩に担ぎ、笑う。
「熔鉄団の鉄と翼があれば無敵だ!」カザンが熔雷槌を掲げ、豪快に吠える。
「みんなの絆が未来を創るよ」セシルが地の種を手に優しく微笑む。
「エアリスの歌が勝利を導く」ジンが竪琴を奏で、静かに頷いた。
だがその時、リアの魔導書が突然光を放ち、雷鳴が轟く。「タクミ!?」
リアが驚き、魔導書を手に持つと、雷の魔法陣が広がり、巨大な影が現れた——雷神トーラスだ。雷を纏った巨人がタクミを見下ろし、低い声で告げる。「風の翼を手に入れた者よ、雷の神殿へ戻れ。そこで我が槍が待つ。それが鍵だ」
「雷神の槍か…やっと手に入れられる」タクミが呟き、目を細める。トーラスは雷光と共に消えた。
ガイストが即座に解析。「魔脈エネルギー反応消失。雷神の槍は風の翼と共鳴する力と推測済み。風の翼の推力1万2000ニュートンが雷の神殿への到達を可能とする。調査を推奨する」
リアが魔導書を握り締めたまま呟く。「トーラスが言うなら…雷神の槍はゼノスを倒す鍵だよ、タクミ」
タクミは空に浮かびながら仲間たちを見下ろす。「風の翼を手に入れた。これで雷神の槍を掴んで、ゼノスを倒す。雷の神殿へ行くぞ!」
風の翼が再び唸り、タクミ一行は風の神殿を後にして新たな目的に向かった。
雷の神殿を目指すストームライダーのコックピットで、タクミはトーラスの言葉を反芻していた。「雷の神殿へ戻れ。そこに我が槍が待つ」。風の翼が低く唸り、仲間たちが地上から見上げていた。
「タクミ、どうするの?」リアが魔導書を握り締め、不安と決意が入り混じった声で尋ねる。タクミはディスプレイを確認し、ガイストに指示した。「王都大陸の雷の神殿までの距離と飛行時間を計算しろ」
「了解。距離約300キロ。風の翼の推力1万2000ニュートン、巡航速度200キロ毎時で計算。所要時間1時間30分。エネルギー残量72%、到達可能。出発を推奨する」
タクミは仲間たちを見下ろし、操縦桿を握る。「雷神の槍はゼノスを倒す鍵だ。トーラスが雷の神殿に戻れって言うなら、そこに全ての答えがある。行くぞ!」
「了解だ、タクミ!」バルドが嵐の双剣を肩に担ぎ、頷く。
「熔鉄団も乗るぜ!」カザンが熔雷槌を掲げ、豪快に笑う。
セシルとジンも武器を手に、ストームライダーの下に集まった。
スラスターが轟音を上げ、風の翼が輝く。機体が急上昇し、緑の大陸の森を越えて王都大陸へと飛び立った。風が髪を乱し、タクミの視界にエアリスの大地が広がる。だが、遠くの空に不穏な黒雲が広がり、雷鳴が響いていた。
「ガイスト、あの雲は?」
「パルス・ディテクター・アレイで解析中。魔脈エネルギーの異常集中を確認。王都大陸、雷の神殿付近が震源。ゼノスの活動が原因と推測。警戒を推奨する」
「ゼノス…だと?」
タクミの胸が締め付けられる。雷の神殿で戦ったあの魔鋼の巨体が、まだそこにいる。風の翼がなければ届かない場所に雷神の槍があるなら、ゼノスと再び対峙する運命なのかもしれない。
1時間後、ストームライダーが王都大陸の空に到達した。眼下に広がる雷の神殿は、黒雲に覆われ、雷光が石塔を照らす。神殿の尖塔から聞こえる低いうなり声——ゼノスの咆哮だ。リアが魔導書を手に震えた。「タクミ…あれ、ゼノスだよ」
「ああ、間違いない。ガイスト、詳細を!」
「ゼノス確認。魔脈炉の暴走痕跡なし、貴族による修復の可能性。 全高20メートル、魔鋼構造。半径500メートル内で魔獣10体、貴族の魔導士5名を感知。魔脈エネルギー出力異常、神殿内部に集中。突入を推奨する」
タクミは仲間たちを見回す。「雷神の槍を手に入れる。そして、ゼノスを倒す。それが俺たちの道だ。準備はいいな?」
「いつでもいいぜ!」バルドが剣を構える。
「熔鉄団の鉄が試される時だ!」カザンがハンマーを握る。
「みんなを癒すよ」セシルが地の種を手に微笑む。
「エアリスの意志が導くさ」ジンが竪琴を奏でる。
「タクミ、私も戦う!」リアが魔導書を開く。
ストームライダーが雷の神殿に降下し、風の翼が雷鳴を切り裂いた。ゼノスの咆哮が近づき、タクミの決意が試される戦いが始まろうとしていた——。




