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第185話: 星光の食卓

ヘブンズ・セプトの夜空は、星光祭の魔脈ランタンが織りなす光の海だ。無数の青白い光点がゆらめき、まるで星々が地上に降りたかのように街を包む。次元裂け目が封鎖され、クロノスの魔脈の影が遠のいた今、広場は笑顔と希望に満ちている。中央には未開の地に眠る遺跡——青白い魔脈石でできた円形の祭壇——がそびえ、ランタンの光を受けて柔らかく脈打つ。祭壇の表面には、古代の紋様が刻まれ、かすかな低音が風に混じる。周辺は苔むした石碑と光る草花の庭園だ。草花は星光を吸い、淡い青の輝きを放ち、足元を歩くたびに小さな光の粒子が舞う。住民たちが屋台を片付け、広場に巨大な木製の食卓を囲む。星光祭の締めくくりとして、仲間と民が共に食事を楽しむ夜が始まる。


タクミは鍛冶場から広場へ向かう。ルミナス・エッジが腰で鈍い光を放ち、足元の草花が靴に触れて光る。ガルザークが隣を歩き、ミナの花冠が装甲の肩で揺れる。青い目が広場の喧騒を見つめ、遺跡の脈動に呼応するようにかすかに揺らぐ。鉄の足音が草花を踏むたび、光の粒子がふわりと浮かぶ。

「タクミ、この光…民の笑顔…どこかで見た気がするんだ。」

ガルザークの声はまだ無機質だが、言葉の端に好奇心のようなものが滲む。タクミが笑い、ガルザークの肩を叩く。金属の感触が掌に響く。

「祭りの飯は格別だぜ、ガルザーク。ミナが待ってる。腹から楽しもう!」


広場の食卓は、熔鉄団が鍛えた魔鋼の皿に彩られている。魔脈果実のサラダは、鮮やかな赤と青の果実が混ざり、甘酸っぱい香りが鼻をくすぐる。岩獣のローストは、表面に塗られたハーブが焦げて香ばしく、切り分けるたびに脂がジュウと音を立てる。住民が持ち寄ったスープは、木のスプーンで掬うたび、野菜とスパイスの温かな湯気が立ち上る。カザンが巨大な肉の塊をナイフで切り分け、豪快に笑う。汗で光る額がランタンの光を反射する。

「タクミ、こいつは俺が仕留めた岩獣のローストだ!ガルザーク、魂が燃える味、味わえよ!」


リアがルミナス・ネクサスを脇の椅子に置き、魔脈果実のジュースを注ぐ。ガラス製のピッチャーから注がれる紫の液体が、ランタンの光でキラキラと輝く。彼女の笑顔は明るいが、瞳の奥にレオンの笑顔がちらつく。それでも、食卓の喧騒が心を軽くする。

「カザン、肉ばっかりじゃダメ!ほら、ミナ、このサラダ食べてみて。甘くて美味しいよ!」


ミナが木剣を椅子の下に滑らせ、ガルザークの隣にちょこんと座る。小さな手でスープの皿を差し出し、目を輝かせる。髪に挿した花冠が揺れる。

「青い目の騎士さん、ミナのスープ飲んで!ママの味、思い出したんだ!」

「ミナ…この味…母の温もりとそっくりだ。ありがとう。」

ガルザークがスープを受け取り、青い目が揺らぐ。村の母が木のスプーンでスープをすくう姿、子供たちの笑顔が鮮明に蘇る。スプーンを口に運び、言葉に初めて温かみが滲む。

「やった!騎士さん、だいすき!これからもずっと家族だよ!」

ミナが満面の笑みで抱きつく。ガルザークの装甲に小さな腕がしがみつき、金属の冷たさがミナの体温で和らぐ。


バルドが双剣を地面に立て、肉を頬張りながらニヤリと笑う。口元に脂が光る。「ガルザーク、剣星がスープでしんみりか?次は俺の剣で熱くしてやるぜ!でも、ミナのスープ、マジで美味いな!」

「バルド、声でかいよ。この賑やかさ…嫌いじゃないけど、落ち着いて食べたいかな。」

セリカが風影の爪を隠し、静かにサラダを食べる。フォークで果実を刺す手つきは繊細で、口元に小さな笑みが浮かぶ。ランタンの光が彼女の銀髪を青く染める。


セシルが、住民の子供たちにスープを配る。木のトレイに載せたスープが揺れ、子供たちの笑い声が風に混じる。

「タクミ、街の民はたくましくなった。この笑顔…レオンも喜んでるはずだ。」

「うん…レオン、きっとこの光見ててくれるよね。私、負けないよ。」リアがセシルの言葉に目を潤ませ、頷く。スープの湯気が彼女の頬を温め、レオンの笑顔が心に浮かぶ。


ジンが竪琴を手に、食卓の脇で穏やかな旋律を奏でる。弦の振動が空気を震わせ、魔脈発電所の光と共鳴する。遺跡の魔脈石が青白く輝き、まるで祭壇自体が歌っているようだ。「このメロディは、皆の心の響きだ。ガルザーク、ミナの笑顔は、お前の魂にしっかり届いてるよ。」

「ジン…この音…心に光をくれる。ミナの笑顔…俺の新しい記憶だ。」

ガルザークの青い目が揺らぎ、鉄都の民の歓声、ルカスの笑顔が閃く。花冠を手に、静かに言う。装甲の指が花冠をそっと撫で、光る草花の粒子が舞う。


食卓の喧騒がふと静まる。住民たちがタクミを見つめ、星光祭の夜のリーダーの言葉を待つ。タクミは立ち上がり、魔脈ランタンの光に照らされる。風神の眼が青く光り、広場の風が彼の髪を揺らす。深い息を吸い、静かに、だが胸に響く声で言う。

「クロノスは俺たちの過去を奪った。レオンの笑顔、ガルザークの村、ミナの両親。でも、過去がなくなっても、俺たちはここで新しい家族を見つけた。」


タクミがミナの手を握り、ガルザークとリアを見つめる。遺跡の魔脈石が彼の背後で脈打ち、ランタンの光が瞳に映る。

「この食卓の笑顔は、どんな魔脈の力より強い。未来を切り開くのは、俺たち一人一人の絆だ。誰一人欠けちゃいけない。ミナの笑顔を、ヘブンズ・セプトを、皆で守る。それが俺たちの戦いだ。」


広場が静寂に包まれる。住民たちの目が潤み、ランタンの光が涙に反射する。ミナがタクミに抱きつき、声を震わせる。

「タクミさん、ミナ、ずっと一緒だよ!家族、だいすき!」

ガルザークが花冠を手に、ミナを見つめる。村の母の声——「優しさは剣より強い」——が脳裏に響き、人間らしい響きで言う。

「ミナ…お前の笑顔は…俺の剣の理由だ。必ず守る。」

リアがレオンの幻を思い出し、涙をこぼす。スープの温かさが手のひらに残り、ミナの笑顔とタクミの言葉が心を支える。ルミナス・ネクサスを握り直し、声を絞り出す。

「レオン…私、この家族を守るよ。クロノスなんかに絶対負けない!」

セシルがリアの肩に手を置き、静かに微笑む。

「レオンはお前の強さを知ってる。私も負けないよ、リア。」


カザンがスープの杯を掲げ、叫ぶ。

「タクミ、いいこと言うじゃねえか!この絆、クロノスもドルザーグもぶっ飛ばすぜ!乾杯だ!」

「ガルザーク、剣星の魂、燃えてるな!俺もこの夜、忘れねえぞ!」

バルドが肉の皿を上げ、笑う。脂が滴り、ランタンの光にきらめく。

「こんな賑やかな夜、初めてだ。…悪くないね。」

セリカが小さく笑い、ジュースの杯を手に言う。彼女の声は柔らかく、風に溶ける。


ジンの竪琴が最高潮に響く。遺跡の魔脈石が光を放ち、未開の地の草花がランタンの光に揺れる。まるで星が地上に降りたような光景が広がる。住民たちが手をつなぎ、子供たちが歌う。

「星の光、家族の光!ヘブンズ・セプト、ずっと一緒!」

歌声が風に乗り、遺跡の紋様が一瞬強く光る。ガルザークがミナの手をそっと握り返す。鉄都の記憶——民の拍手、ルカスの笑顔、ドルザーグの裏切り——が交錯するが、ミナの小さな手が装甲を温め、全てを塗り替える。村の祭り、母のスープ、父の教え——「剣は民のために」——が明確に蘇る。

「ミナ…お前の歌…俺の心に光をくれた。家族…永遠に守る。」


タクミが食卓の中心で皆を見渡す。風神の眼が優しく光り、遺跡の脈動と共鳴する。

「この夜を胸に刻め。どんな闇が来ても、俺たちの絆は絶対に折れない。」

住民の拍手が響き、魔脈ランタンの光が遺跡を照らす。草花の光が舞い、祭壇の紋様が静かに輝く。星光祭の夜は、ヘブンズ・セプトの未来を約束する。



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