第180話:魂の共鳴
ヘブンズ・セプトの新鍛冶場は、炎と鋼が運命を刻む聖域だ。巨大な炉が赤く燃え、魔鋼の打音が響き合う。作業台の中央で、ガルザークの魔脈結晶が青白い光を放ち、タクミたちの決意に応えるように激しく脈打つ。だが、突然、結晶調整装置のスクリーンがノイズに乱れ、魔脈波形が不安定に揺れる。胸部に装着されたガイストが赤い警告光を点滅させ、緊急データを読み上げる。
「警報!鍛冶場周辺、魔脈ノイズ急増!結晶調整装置、出力30%低下。原因:外部干渉、魔脈毒の可能性95%!」
タクミが作業台に駆け寄り、結晶を握る。青白い光が一瞬弱まり、鍛冶場の炉が低く唸る。タクミが叫ぶ。
「スパイの仕業だ!奴が鍛冶場を狙った…ガルザークの魂を乱そうとしてる!」
リアがルミナス・ネクサスを手に、魔脈調整装置に駆けつける。7属性の魔法がスクリーンに波形を投影し、紫色のノイズが魔脈ラインを侵食する。リアが眉を寄せ、呟く。
「タクミ、このノイズ…結晶の同期を邪魔してる!放っておくとガルザークの魂が危険だよ!」
カザンが熔雷槌を握り、鍛冶場の入口を睨む。
「クソッ、奴め装置に細工したな!タクミ、俺が外を調べるぜ!」
ゴルドが装甲板を手に、作業員に叫ぶ。
「炉を止めず続けろ!ガルザークの身体は完成間近だ!敵なんぞに負けるか!」
セリカが風影の爪を構え、鍛冶場の裏口へ駆ける。鋭い勘が魔脈毒の匂いを捉える。裏口の地面に埋められた装置が紫の光を放ち、魔脈ラインに干渉する。セリカが爪で装置を砕き、叫ぶ。
「タクミ!スパイの装置だ!魔脈毒が鍛冶場全体に広がってる!」
その瞬間、鍛冶場の天窓から青黒い光が差し込む。次元裂け目が激しく揺らめき、魔脈ラインが暴走を始める。炉の炎が一瞬青く燃え、結晶調整装置が完全に停止。ガイストが警告を重ねる。
「次元ライン、暴走開始!外部魔脈信号、干渉確率90%!鍛冶場への直接影響、発生中!」
タクミが結晶を握り、風神の眼で空を見上げる。次元裂け目の光が鍛冶場を照らし、不気味な脈動が響く。タクミが呟く。
「クロノス…天空の鍵なしでヘブンズ・セプトに干渉してる。ガルザークの結晶が…お前の目的の鍵だな!」
バルドが双剣を抜き、鍛冶場の通路を駆ける。
「タクミ、奴を仕留める!この混乱の元を潰す!」
鍛冶場の外、黒いマントの男が塔の影から姿を現す。隠形術を解き、短剣の魔脈毒が紫に光る。刃から煙る毒が空気を歪ませ、触れた者を一時麻痺させる。男が冷たく笑う。
「タクミ、貴様の甘さが結晶を俺に渡す。ゼルヴィス様の命だ…クロノスの力を我が手に!」
セリカが風影の爪を振り、男に斬りかかる。爪が空気を切り、紫の毒を散らす。男が短剣で受け、魔脈毒がセリカの爪に飛ぶ。セリカが一瞬動きを止め、呻く。
「この毒…魔脈を乱す…!」
バルドが双剣を振り、男を追い詰める。剣閃が鍛冶場の外壁を削り、火花が散る。バルドが叫ぶ。
「貴様の暗躍は終わりだ!ガルザークの魂は渡さねえ!」
男が隠形術で姿を消し、バルドの背後に回る。短剣が紫の光を放ち、バルドの肩をかすめる。バルドが歯を食いしばり、双剣を旋風のように振る。
「隠れても無駄だ!剣士の勘はごまかせねえ!」
セリカが毒の影響を振り切り、風影の爪で男の気配を捉える。爪が男のマントを切り裂き、隠形術が解ける。男が後退し、短剣を構える。
「チッ…だが、装置はまだ生きている。結晶は俺のものだ!」
タクミが鍛冶場から飛び出し、マグナ・ヴェスト Mk-IIの装甲を纏う。ゴルドが鍛えたルミナス・エッジを手に、男を睨む。青白い魔脈エネルギーが剣先に集中し、鍛冶場の地面を照らす。タクミが叫ぶ。
「貴様、ガルザークの魂はお前の玩具じゃねえ!ゼルヴィスもクロノスも…俺がぶっ潰す!」
タクミがルミナス・エッジを振り、剣閃が男を捉える。青白い魔脈が弧を描き、地面を斬り裂く。衝撃波が鍛冶場の外壁を震わせ、男が短剣で魔脈シールドを張るが、剣の力がシールドを貫く。男が叫び、塔の壁に叩きつけられる。血を吐きながら、男が呟く。
「天空の鍵がなくとも…クロノスの力は…!」
バルドとセリカが男を拘束し、短剣を奪う。魔脈毒の紫の光が消え、男が地面に崩れる。タクミがルミナス・エッジを構えたまま、男を睨み、言う。
「クロノスの信号を短剣に仕込んでたんだな。ガルザークの結晶を追跡して、次元の裂け目を広げた。だが、もう終わりだ。」
男が薄く笑い、初めて口を開く。
「俺の名はクロウ…覚えておけ、タクミ。ゼルヴィス様は…結晶を諦めん…。」
鍛冶場に戻り、リアがルミナス・ネクサスで魔脈ノイズを浄化。結晶調整装置が再起動し、スクリーンの波形が安定する。ジンが竪琴を奏で、結晶の光を導く。弦の響きが鍛冶場に響き、ガルザークの結晶が突然声を放つ。掠れた、しかし力強い声だ。
「…タクミ…俺の剣は…民のために…!」
タクミが目を丸くし、結晶を見つめる。リアが息を呑み、エリナが涙を浮かべる。
「ガルザーク…!話した!魂が…生きてる!」
カザンが長剣を手に、刃を掲げる。「守護」の紋様がガルザークの声に呼応し、青白い魔脈が脈打つ。カザンが叫ぶ。
「ガルザーク、お前の意志…この剣に宿ったぜ!あと一歩だ!」
ゴルドが装甲を最終調整し、ナノ繊維が結晶と同期する。スクリーンに22トンの強度が映り、ゴルドが笑う。
「クロノスのガラクタなんぞ問題ねえ!ガルザークの身体、完成だ!」
タクミが神経接続回路を結晶にリンクさせ、科学者としての信念を胸に呟く。
「クロノスの技術は魂を縛った。俺の技術は…魂を解放する。ガルザーク、俺を信じろ。」
ガイストがデータを読み上げる。
「結晶同期率、99%。長剣の魔脈チャネル、出力13MW安定。装甲の自己修復、10%確認。神経回路、反応速度0.015秒。作業進捗、設計図の95%完了。」
鍛冶場の天窓から、次元の裂け目が一層激しく揺らめく。青黒い光が結晶を照らし、魔脈ラインが再び揺れる。裂け目から魔獣の咆哮が漏れ、鍛冶場の空気が震える。ガイストが解析データを表示する。
「クロノスの魔脈信号、短剣から追跡。結晶の魔脈が次元共鳴装置のキーとなる可能性90%。ヘブンズ・セプトへの侵入試行、進行中。」
タクミがクロウの短剣を手に、魔脈毒の回路を解析する。紫の光が微かに残り、クロノスの技術痕が浮かぶ。タクミが呟く。
「クロノス…次元ラインをハッキングしてる。ガルザークの結晶がその鍵なら…絶対に渡さねえ!」
バルドが双剣を構え、笑う。
「ガルザーク、目覚めたら剣で試してやる。クロノスもまとめてぶった斬るぜ!」
鍛冶場の炉が最高潮に燃え、ガルザークの長剣と装甲が最終調整を待つ。タクミが結晶を握り、仲間たちを見回す。
「ガルザークの魂は俺たちと共にある。クロノスにもゼルヴィスにも…絶対に負けねえ!」
次元の裂け目が不気味に脈打ち、魔獣の影が一瞬覗く。クロノスの影が鍛冶場に迫り、ガルザークの新生が運命の瞬間を迎える。




