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第177話:鋼に宿る意志

ヘブンズ・セプトの新鍛冶場は、炎と鋼の鼓動が響き合う聖域だ。巨大な炉が赤く燃え、魔鋼の溶ける音が空気を震わせる。作業台のガルザークの結晶は青白い光を放ち、まるで鍛冶場の熱に応えるように脈打つ。タクミは結晶調整装置の前に立ち、スクリーンに映る魔脈波形を凝視する。波形が剣の振動のように鋭く揺れ、意識断片の反応が強まる。胸部に装着されたガイストが青い光を点滅させ、データを更新する。

「結晶反応、魔脈出力4.2%増。意識断片、安定性90%に到達。騎士の記憶、外部刺激への共鳴が明確化。クロノスの抑圧構造、解除率15%進展。」


タクミがスクリーンを軽く叩き、作業員に指示を出す。設計図が作業台に広げられ、ガルザークの新ボディが形を成しつつある。機械化率20%、ナノスケールの魔鋼繊維で強化された装甲、0.02秒の反応速度を実現する神経接続回路。そして、両手に持つ騎士の長剣——刃には「守護」の鉄都紋様が刻まれ、魔脈エネルギーが青白く流れる。タクミが呟く。

「クロノスは魂を道具にした。俺の技術は違う…ガルザークの意志を、鋼に宿すんだ。」


カザンが炉の前に立ち、熔雷槌を振り下ろす。魔鋼の塊が赤熱し、火花が鍛冶場を照らす。長剣の芯材が形を成し、鉄都の紋様がハンマーの一撃ごとに刻まれる。カザンが汗を拭い、タクミに叫ぶ。

「タクミ!この剣、ただの鋼じゃねえ!叩くたびに結晶が反応するぜ。まるで…ガルザークが俺の手に応えてる!」


タクミが設計図を手にカザンに近づき、長剣の構造を説明する。

「刃にナノエッジ層を重ね、魔脈チャネルを分子レベルで刻んだ。結晶のエネルギーを剣に直結させて、ガルザークの意志を増幅する。出力は10MWで安定、振動周波数は毎秒5000回。クロノスの粗雑な動力剣とは別次元だ。」


ゴルドが装甲用の魔鋼板を圧延機から取り出し、ナノ繊維を織り込む装置にセットする。スクリーンに強度データが映り、推定耐圧15トンを示す。ゴルドが豪快に笑う。

「ハハ!この装甲なら魔獣の爪も通さねえ!タクミ、クロノスのガラクタをぶっ壊す身体を、熔鉄団が作ってやるぜ!」


鍛冶場の奥で、リアがルミナス・ネクサスを手に魔脈調整装置を操作する。7属性の魔法が結晶と共鳴し、スクリーンの波形が一瞬大きく跳ねる。リアが驚き、タクミに振り返る。

「タクミ、結晶の反応…今までにないくらい強いよ!まるで私たちの想いに答えてるみたい。ガルザークの魂…本当に自由を求めてるんだね。」


タクミが結晶に触れ、風神の眼が光る。刹那、ガルザークの姿が脳裏に閃く。村の広場で木剣を振る少年が、民の笑顔に守る誓いを立てる。タクミが静かに言う。

「リア、鉄都で剣を交えた時、ガルザークの刃には誇りがあった。クロノスに縛られただけだ。俺たちがその真実を…ガルザークの魂を、解き放つ。」


リアが頷き、ルミナス・ネクサスを握り締める。

「…わかった。なら、私も全力でいくよ。ガルザークの魂、絶対に救おう!」


ジンが竪琴を奏で、鍛冶場の轟音に旋律を重ねる。弦の振動が結晶に響き、青白い光が一瞬剣の形に揺らぐ。ジンが微笑み、言う。

「ガルザークの魂は剣の響きだ。民のために鍛えた刃…その音はまだ消えていない。タクミ、俺たちの力で、奴を光に導こう。」


鍛冶場が最高潮に熱を帯びる。カザンが長剣の芯材を冷却槽に浸し、蒸気が鍛冶場を包む。紋様の「守護」が青白く光り、刃が完成に近づく。ゴルドが装甲板を組み立て、ナノ繊維が分子レベルで結合する。タクミが神経接続回路を調整し、プロトタイプを結晶にリンクさせる。ガイストがデータを読み上げる。

「長剣の魔脈チャネル、同期率95%。装甲強度、16トンに到達。神経回路、反応速度0.019秒を記録。結晶との統合率、92%。作業進捗、設計図の70%完了。」


タクミが回路を装置に差し込み、結晶の波形がスクリーンに映る。波形が剣を振るうリズムのように鋭く揺れ、鍛冶場全体に低いうねりが響く。タクミが息を吐き、呟く。

「ガルザーク…お前の剣が、俺たちに応えてる。」


夜の鍛冶場、作業員たちが一時休憩に入る。タクミは結晶の前に立ち、そっと語りかける。

「ガルザーク、もうすぐだ。民を守る剣…お前の誇りを、この鋼に宿す。」


結晶の光が強く脈打ち、まるで答えるように鍛冶場を照らす。ガイストが補足する。

「結晶反応、魔脈出力5.8%増。意識断片、タクミの声と鍛冶場の作業に共鳴。騎士の意志、明確化進行中。次の工程で記憶のフラッシュバック可能性80%。」


その瞬間、鍛冶場の入口で影が動く。クロウが隠形術を発動、短剣の刃が紫色に光る。魔脈毒が刃に滲み、触れた者を一時麻痺させる仕掛けだ。クロウが作業台の結晶に近づくが、セリカの風影の爪が空気を切り、気配を捉える。セリカが鋭く叫ぶ。

「タクミ!誰かいる!鍛冶場に侵入者だ!」


バルドが双剣を抜き、セリカと並ぶ。鍛冶場の暗がりを睨み、低く言う。

「隠れてても無駄だ。出てこい、貴様!」


クロウが素早く後退し、隠形術で気配を消す。セリカの勘とバルドの剣が鍛冶場を守るが、クロウの目は結晶に釘付けだ。心の中で呟く。

(今夜は退く…だが、結晶は必ず奪う。タクミ、貴様の油断が命取りだ。)


鍛冶場の炉が再び燃え上がり、カザンが長剣の刃を研ぐ。青白い魔脈が「守護」の紋様を浮かび上がらせ、ガルザークの魂が鋼に宿る瞬間が近づく。タクミは仲間たちを見回し、決意を新たにする。

「次の工程だ。ガルザークの魂…その真実を、俺たちで引き出すぞ。」


次元の裂け目が空で静かに揺らめく。クロノスの影が忍び寄り、ガルザークの新生を巡る戦いは緊迫する。



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