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第174話:荒野の守護者

アルテリアの荒野を抜け、タクミはマグナ・ストライダーの腕にガルザークの残骸を慎重に固定してヴェールウッドへ急ぐ。砂塵が薄れる空に、次元裂け目の不気味な光が一瞬揺らめく。マグナのコックピット内で、胸部に装着されたガイストが青い光を点滅させ、コンソールにデータを映し出す。

「魔脈ライン、乱流継続。エネルギー安定度47%。ガルザークの結晶、微弱な魔脈反応持続。異常なし。」


タクミは操縦桿を握り、風神の眼で遠くの森を見つめる。左目が微かに光り、風の流れが村の平穏を伝える。だが、心の奥でクロノスの影がちらつく。低く呟いた。

「ガルザーク…お前をクロノスの手に渡すわけにはいかない。ヴェールウッドで次の手を考える。ヘブンズ・セプトに戻れれば…熔鉄団の力で何とかできるはずだ。」


ヴェールウッドの木々の緑が視界に広がる。村の門でガレンが剣を手に迎え、マグナの巨体を見上げる。タクミはハッチを開け、砂の上に降り立つ。マグナの腕からガルザークの残骸を下ろすと、胸の魔脈結晶の欠片が陽光に青く輝く。ガレンが残骸に目をやり、息を呑む。黒鋼の装甲は半ば溶け、右腕は無機質な義肢、顔の左半分は金属板に覆われている。ガレンが声を震わせ、呟いた。

「こいつは…ガルザークなのか?鉄都で名を馳せた騎士が…こんな機械の姿に!?タクミ、何があったんだ?」


タクミは結晶の欠片を手に取り、風神の眼でその光を凝視する。微かな脈動が指先に伝わり、騎士の魂の断片を感じる。静かに答えた。

「クロノスだ。ガルザークは鉄都の戦いで俺が倒した。あの時、胸の結晶を砕いて倒したはずだった。だが、こんな姿で蘇らされた。クロノスに自由を奪われた騎士だ。貴族がまた利用する前に、俺が何とかする。だが、この村の鍛冶場じゃ無理だ。」


ガレンが眉を寄せ、村の奥に立つ小さな鍛冶場を指す。煙突から細い煙が立ち上り、鉄を叩く音が遠く響く。

「剣や農具なら直せるが、こんな…半分機械の者を直す技術はねえ。ヘブンズ・セプトなら熔鉄団のゴルドやカザンがいるだろ。あそこなら可能性がある。」


タクミがガイストに視線を向け、確認する。胸の青い光が一瞬強まり、ガイストの声がコックピットに響く。

「ヘブンズ・セプト新鍛冶場、魔鋼精製炉3基、超魔脈結晶調整装置完備。カザン、ゴルドの技術力:推定成功率85%。ただし、魔脈ラインの乱流により次元移動の安定性低下中。エネルギー50%未満ではリスク高。」


タクミが拳を握る。魔脈の乱れは、プラズマジェネレーターを壊した時から続いている。あの時、鉄都の深部で敵の装置を破壊したが、ラインの奥にまだ不安定な流れが残る。タクミが呟く。

「魔脈を安定させなきゃ…。ガルザークを直すにも、クロノスを追うにも、ヘブンズ・セプトに戻る必要がある。」


その時、村の外から低いうなり声が響く。木々が揺れ、鳥が一斉に飛び立つ。ガレンが剣を構え、鋭い目で森の奥を見据える。ヴェールウッドの斥候から貴族の動向を聞いていた彼は、即座に察した。

「魔獣だ!ゼルヴィスの部隊だな。こんなタイミングで来るなんて…ガルザークの結晶を狙ってるに違いねえ!」


タクミがマグナに飛び乗り、ハッチを閉める。セレスティア・ドライブが起動し、青白い魔脈エネルギーがコックピットを照らす。ガイストが胸部からARパネルを展開し、敵を捕捉する。

「魔獣10体、平均出力15MW。形態:四足型、装甲強度5トン、弱点:背部の魔核。推奨:セレスティア・ブレイザーで一掃。」


マグナの肩から8連魔脈ランチャーが展開し、轟音とともに魔脈弾が放たれる。青い光の弾丸が魔獣の群れに突き刺さり、1体が爆発とともに倒れる。だが、残り9体が咆哮を上げ、村の門に突進してくる。タクミが操縦桿を握り、叫ぶ。

「ガルザークの結晶は渡さない!来い、ゼルヴィス!」


マグナがストームブリンガーを抜き、剣先が魔脈エネルギーで青く輝く。1体の魔獣が跳びかかり、爪がマグナの装甲を擦る。火花が散り、ガイストが即座に警告。

「装甲耐久度、98%に低下!魔核を狙え、背部角度45度!」


タクミはマグナを旋回させ、ストームブリンガーを振り上げる。剣が魔獣の背を切り裂き、魔核が砕けて爆発。2体目が倒れる。ガレンが村の住人を率いて弓で援護し、門を守る。だが、魔獣の数が多く、門の木製バリケードが軋む。タクミが歯を食いしばる。

「このままじゃ村が…。魔脈の乱れを何とかしないと、ヘブンズ・セプトにも戻れない!」


戦場から離れた木陰で、黒いマントの男・クロウが戦いを観察する。短剣を手に隠形術を発動し、姿を消す。瞳にはガルザークの結晶への執着が宿る。ゼルヴィスの命を受け、結晶を奪いクロノスの技術を貴族に取り戻す任務を帯びている。クロウが心の中で呟く。

(タクミ…結晶は我が手に。次元移動の隙に乗じてヘブンズ・セプトへ潜入する。天空の鍵はなくとも、お前の移動装置があれば十分だ。)


タクミはマグナを動かし、セレスティア・ブレイザーを構える。右腕の砲口が青白い光を帯び、魔獣の群れを狙う。ガイストが解析を続ける。

「魔獣残り7体。魔脈ラインの乱流、村周辺で増幅中。原因:魔獣の魔核が共鳴、ラインを撹乱。魔核全破壊で安定化の可能性85%。」


タクミの目が光る。風神の眼で魔獣の動きを捉え、ネクサス・サイトが魔核の位置を正確に表示。冷静に呟いた。

「魔獣を倒せば魔脈が安定する…一石二鳥だな。ガイスト、全力でいくぞ!」


マグナが突進し、ブレイザーが咆哮する。青白い奔流が魔獣3体を直撃、魔核が次々に砕ける。爆発音が森を震わせ、砂塵が舞う。ガレンが住人を鼓舞し、弓で援護を続ける。タクミがストームブリンガーで残り4体に斬りかかる。剣閃が空を切り、魔獣の咆哮が途切れる。だが、最後の1体が門を突き破り、ガルザークの残骸に迫る。タクミが叫ぶ。

「させない!」


マグナが跳び、ストームブリンガーが魔獣の魔核を貫く。爆発が残骸を包むが、マグナの気密シールドが結晶を守る。ガイストが報告する。

「魔獣全滅。魔脈ライン、乱流低下。エネルギー安定度55%に上昇。次元移動の成功率、70%まで回復。」


タクミが息を吐き、マグナのコックピットで額の汗を拭う。ガレンが駆け寄り、敬意を込めて頷く。

「見事だ、タクミ。村は守られた。だが、ゼルヴィスは諦めねえ。結晶を狙うなら、また来るぞ。」


タクミがガルザークの結晶を見つめ、決意を新たにする。

「次はヘブンズ・セプトだ。ガルザークを…クロノスの呪縛から解放する。ガレン、村を頼む。」


ガレンが剣を胸に当て、答える。

「任せろ。行ってこい、タクミ。」


タクミはマグナに残骸を再び固定し、次元移動装置の準備を始める。ガイストが光を弱め、警告する。

「魔脈ライン、完全安定には至らず。移動リスク残存。結晶の保護を優先。」


見えない影の中、クロウがマグナの後部装甲に忍び寄る。隠形術で気配を消し、次元移動の瞬間を待つ。タクミは気づかず、装置のスイッチを押す。青い魔脈エネルギーがマグナを包み、空間が歪み始める。

「ヘブンズ・セプトへ…ガルザークを連れて行くぞ。」


村の門にガレンの姿が遠ざかり、ヴェールウッドが光の中に消える。タクミの戦いは新たな舞台へと移る。



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