第170話:貴族の刃
アルテリアの荒野に乾いた風が吹き抜ける。赤茶けた大地に枯れた草がまばらに揺れ、遠くの地平線に鉄都ガルザードの黒い影が霞む。マグナ・ストライダーの漆黒の装甲が陽光を跳ね返し、コックピットでタクミがジョイスティックを握り、目を細める。セレスティア・ドライブの青白い光が微かに脈打ち、機体の周囲に熱気を漂わせる。ガイストが青い光を点滅させ、静かに報告した。
「鉄都ガルザード方面のエネルギー波動、増幅中。装甲耐久度、95%安定。セレスティア・ドライブ、30MW稼働。」
タクミが操縦桿を軽く叩き、呟く。
「貴族どもが来るなら来い。マグナでぶち抜いてやるよ。」
ガイストが応答する。
「敵性反応、接近中。距離3キロ、推定到達時間、2分。」
地平線の向こうで砂塵が舞い上がり、黒い影が現れる。鉄都の精鋭部隊だ。魔鋼製の戦車が5台、重々しい駆動音を響かせて進む。車体には赤黒い魔脈エネルギーが走り、砲口が不気味に光る。先頭に立つのは貴族ゼルヴィス。緑の装飾が施された装甲服を纏い、黒髪を後ろに流した鋭い目がタクミを捉える。右手に握る長槍から魔脈エネルギーが漏れ出し、砂を焦がす。ゼルヴィスが冷たく笑い、部下に命じた。
「見えたぞ、タクミの機体だ。鉄都の名にかけて叩き潰せ!」
戦車が一斉に砲口を向け、魔脈エネルギーの弾丸が放たれる。赤黒い光が荒野を切り裂き、マグナに迫る。爆音が響き、砂塵が視界を覆う。ガイストが即座に警告を発した。
「魔脈弾、強度15トン。5発同時発射。装甲耐久度、94%予測。回避推奨。」
タクミがジョイスティックを押し、マグナが瞬時に横に滑る。左目の風神の眼で風の流れを読み、右目のネクサス・サイトで弾道を捕捉。弾丸が地面を抉り、爆発が砂塵を巻き上げる。衝撃波がマグナの装甲を揺らし、タクミが歯を食いしばる。
「ガイスト、敵の動きを解析しろ!」
ガイストが光を点滅させ、冷静に報告する。
「戦車5台、魔脈エネルギー出力、各10MW。魔脈槍装備の歩兵10名、ゼルヴィスの槍、エネルギー出力20MW。装甲耐久度、93%維持。気密シールド、安定。」
タクミが笑みを浮かべ、呟く。
「20MWか。ドライブなら負けねえな。」
ゼルヴィスが槍を振り上げ、魔脈エネルギーが奔流となって襲う。赤黒い衝撃波が大地を裂き、マグナに直撃する勢いで迫る。ガイストが警告を発した。
「槍の衝撃波、強度18トン。装甲耐久度、91%に低下予測。風神の眼で迎撃可能。」
タクミが左目で風の乱れを捉え、ジョイスティックを引く。マグナが跳び上がり、風切りブレードがシュイーンと鋭く鳴る。衝撃波を切り裂き、砂塵が舞う中、タクミが叫んだ。
「貴族の玩具か!ガイスト、装甲の状態は?」
「耐久度、92%維持。衝撃吸収済み。セレスティア・ドライブ、出力安定。」
ゼルヴィスが槍を構え直し、怒りを込めて叫ぶ。声が荒野に響き、部下たちの動きが加速する。
「タクミ!貴様ごときが鉄都に逆らうか!魔鋼の力を思い知れ!」
戦車が再び砲撃を放ち、歩兵が魔脈槍を手に突進してきた。赤黒い弾丸と槍の奔流がマグナを包囲する。タクミがジョイスティックを操作し、マグナが旋回。風切りブレードが槍を弾き、爆発が周囲を揺らす。ガイストが報告を続ける。
「魔脈弾、連続5発。強度合計25トン。歩兵の槍、近接攻撃開始。装甲耐久度、90%に低下。気密シールド、微小変動。」
タクミが額の汗を拭い、呟く。
「囲まれたか…。なら、まとめてぶっ壊すしかねえな。ガイスト、セレスティア・ブレイザーをフル稼働だ!」
マグナの右腕がガシャンと展開し、セレスティア・ブレイザーの銃口が開く。重低音の唸りが荒野に響き、青白い魔脈エネルギーが収束する。ディスプレイのチャージゲージが跳グングン跳ね上がり、タクミの額に汗が滲む。ゼルヴィスが槍を振り上げ、再び衝撃波を放つ。ガイストが緊迫した声で報告した。
「衝撃波、強度20トン。エネルギー収束、80%…90%…発射準備完了!装甲耐久度、89%に低下。」
タクミが目を閉じ、深呼吸する。仲間たちの顔が脳裏を過ぎる。
「ドライブの力、見せてやる。ゼルヴィス、覚悟しろ!」
目を開け、操縦桿を握り締める。ゼルヴィスの衝撃波が迫る中、タクミが鋭く吠えた。
「セレスティア・インパクト!!」
トリガーを引き、右腕が一瞬震える。轟音と共に青白い魔脈エネルギーが奔流となって放たれ、戦車と歩兵を直撃。魔鋼が砕け散り、爆発が貴族の陣を揺らす。ゼルヴィスが衝撃波で防ごうとするが、青白い光に飲み込まれ、槍が折れる。焼けた魔鋼の焦げ臭さが荒野を包み、タクミが息を吐く。
「ガイスト、敵の残りは?」
「戦車3台破壊、歩兵7名戦闘不能。ゼルヴィス、負傷。装甲耐久度、90%に回復。」
タクミが笑い、応える。
「逆らうも何も、お前らが仕掛けてきたんだろ。次はお前が終わりだ。」
ゼルヴィスが膝をつき、睨み上げる。アルテリアの荒野で、タクミと貴族の戦いが火花を散らした。




