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第169話:鉄都の怒り

鉄都ガルザードの中央にそびえる黒鋼の城塞。その謁見の間は、冷たい石壁に囲まれ、赤黒い旗が風もなく垂れ下がる。中央の玉座に座るドルザードは、熔けた鉄のような赤い瞳を細め、拳を握り潰す勢いで肘掛けを叩いた。鈍い音が響き、黒い装甲に覆われた巨躯が震える。低く唸る声が貴族たちを凍りつかせた。

「タクミめ…。プラズマジェネレーターを破壊したのか。」

円卓を囲む貴族たちが顔を見合わせ、息を潜める。灰色のローブを纏った貴族、ガルドリックが震える手で書簡を握り、声を絞り出した。

「ドルザード様、ヴェールウッドからの報告です。魔脈ラインが安定し、装置が完全に破壊された模様。ヴェールウッドの次元移動を封じる効果は…失われました。」


ドルザードが立ち上がり、玉座の前を歩き回る。重い足音が石床を震わせ、貴族たちが背筋を伸ばす。彼の装甲から微かな熱気が漏れ出し、謁見の間に鉄の匂いが漂う。

「奴め、我が策をぶち壊しおって。次元を封じてヘブンズ・セプトを孤立させ、アルテリアを支配する計画が…水の泡だ!」

緑の装飾が施された貴族、ゼルヴィスが咳払いし、慎重に口を開いた。黒い髪を後ろに流し、鋭い目をドルザードに向ける。

「報告によれば、タクミの機体、マグナ・ストライダーが装置を破壊したようです。魔脈エネルギーの奔流で一瞬にして焼き尽くしたとか…。あの小僧、予想以上の力を持っています。」


ドルザードが振り返り、ゼルヴィスを睨みつける。赤い瞳が炎のように燃え、声が一層低く響いた。

「タクミの技術か…。あの小僧、放置すれば鉄都の門を叩くぞ。次の手を急げ!」

ガルドリックが円卓に手を置き、立ち上がる。ローブの裾が揺れ、緊張した声で提案した。

「アルテリアに残るタクミを叩くべきかと。奴が次元移動できない今が好機です。貴族の精鋭部隊を動かし、始末しましょう。」

ドルザードが顎を撫で、ゆっくり頷く。装甲の関節が軋む音が響き、貴族たちの耳に届く。

「そうだ。装置が駄目なら、直接潰す。だが、それだけじゃ足りん。魔脈源流への攻撃も並行して進めろ。タクミが動けぬうちに、アルテリアを我が支配下に置く。」


ゼルヴィスが円卓に地図を広げ、指で魔脈源流の位置を示す。

「精鋭部隊を私が率い、タクミを仕留めます。魔脈源流への攻撃はガルドリックに調整を任せ、鉄都の魔鋼兵器を投入しましょう。源流を封じれば、ヴェールウッドもヘブンズ・セプトも息の根が止まる。」

ガルドリックが目を輝かせ、拳を握る。

「魔鋼兵器なら、タクミの機体も耐えきれません。源流への攻撃は私が完璧に仕上げますよ、ドルザード様!」

ドルザードが玉座に戻り、深く座り直す。赤い瞳が貴族たちを貫き、命令を下した。

「動け。タクミを潰し、魔脈源流を握れ。失敗は許さん。」

貴族たちが一斉に立ち上がり、謁見の間に鉄の決意が響き合う。


その時、謁見の間の暗がりで影が微かに揺れた。黒いフードを被った謎の人物が、誰にも気づかれず立っている。顔は見えず、僅かに覗く瞳が冷たく光る。ドルザードの怒りと貴族たちの策謀を静かに見つめ、唇が小さく動いた。

「予定通り…。だが、まだだ。」

手には古代の紋様が刻まれた金属片が握られ、微かな青い光を放つ。人物は影に溶けるように消え、鉄都に新たな気配を残した。


場面は変わり、ヴェールウッドの森。魔脈の乱流が収まり、静寂が戻った。マグナ・ストライダーのコックピットで、タクミが息を吐き、笑みを浮かべる。

「やった…。ガイスト、クロノスの謎は深まったな。」

ガイストが光を点滅させ、呟く。

「そうだ。だが、ヴェールウッドは救われた。次元移動、可能予測。」

タクミがジョイスティックを握り直し、確認する。

「次元移動エネルギー、どのくらい回復した?」

ガイストが青い光を強め、報告した。

「50%に上昇。だが、魔脈ラインの完全安定には至らず。深部の異常が残存。ヘブンズ・セプトへの帰還はまだ困難。」


タクミが目を細め、コックピット内で額の汗を拭う。

「まだ戻れないのか…。仕方ねえ、アルテリアで動くしかねえな。ガイスト、周辺の魔脈反応は?」

「微弱な乱流が複数地点で発生。鉄都ガルザード方面から異常なエネルギー波動を検知。敵対勢力の可能性、高。」

タクミが眉を寄せ、呟く。

「ドルザードか…。貴族どもが次を仕掛けてくる気だな。ガレンに報告して、備えるぞ。」


マグナを動かし、集落へ向かう。森の入り口でガレンが待っていて、タクミの姿に駆け寄った。枯れた木々の間から陽光が差し込み、ガレンの顔に安堵が浮かぶ。

「タクミ、魔脈が落ち着いた!やったのか!?」

タクミがコックピットから顔を出し、頷く。

「装置を壊したよ、ガレン。魔脈ラインは安定したけど、深部に異常が残ってる。次元移動はまだできねえ。」

ガレンが拳を握り、感謝の言葉を叫ぶ。

「ありがとう、タクミ!村は俺たちで守る。お前はどうするんだ?」

タクミがマグナの装甲を軽く叩き、笑う。

「ドルザードの貴族どもが動いてる気配がある。アルテリアで戦うよ。ガレン、村を頼む。」


ガレンが頷き、タクミに手を振る。

「気をつけろ、タクミ!何かあったら呼んでくれ!」

タクミがジョイスティックを押し、マグナを森の外へ向かわせる。ガイストが報告を続ける。

「鉄都方面のエネルギー波動、増幅中。装甲耐久度、92%から95%に回復。セレスティア・ドライブ、30MW安定。」

タクミが目を細め、呟いた。

「貴族か…。来るなら来い。マグナでぶち抜いてやる。」

アルテリアの空に風が吹き、鉄都からの新たな戦いの足音が近づいていた。



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