第155話:「輝晶果と水晶の泉」
ヘブンズ・セプトの天脈の祭壇近く、黄金の草が風に揺れる中、熔鉄団の職人たちがピットと小屋の土台を組み上げる。タクミ一行がサンドクレストへ旅立った後、エリナが木材を手に持ったまま、熔鉄団の現リーダー、ゴルドに近づく。彼女が少し焦った顔で言う。
「ねえ、ゴルド、ちょっと待ってくれ。ピットと小屋は大事だけどさ、このままじゃ本当に拠点作りにならないよ!」
ゴルドがハンマーを地面に立てて、首をかしげる。
「おお、エリナ?どうしたんだよ。棟梁のカザンたちが頑張ってるとこなんだぜ?」
エリナが木材を置いて、両手を腰に当てる。
「頑張ってるのは分かるけど、食料と水が全然足りないんだ!祭壇の魔脈泉じゃ飲める量少ないし、黄金の草は食べられない。このままじゃみんな腹が減って力も出せない!」
ゴルドが顎を擦り、少し困った顔で言う。
「確かにそうだな…。熔鉄団は鍛冶と建築は得意だが、食いもん探しは苦手だ。どうするんだ?」
エリナが目を輝かせて、決意を込めて言う。
「私、何人か連れて近くを探索するよ!タクミたちが商人や農夫を探しに行ってる間に、私たちが食料と水を見つける。ヘブンズ・セプトには何かありそうじゃないか?」
ゴルドが笑いながら肩を叩く。
「お前、頼もしいな!よし、熔鉄団から何人か貸してやる。俺はピットと小屋進めるから、頑張ってこい!」
エリナが熔鉄団の職人たちを見回し、数人に声をかける。
「じゃあ、私と一緒に来てくれる人!ちょっとだけ探索しよう。」
職人の一人、若手のトールがハンマーを手に持ったまま、笑顔で言う。
「おう、エリナ姐さん!俺、行くぜ。腹減って力出ねえのは嫌だもんな!」
もう一人の職人、中年のマーラが工具を腰に引っかけて言う。
「俺も行くよ。熔鉄団はカザン棟梁も帰ってきて食い物でもあったら喜ぶだろ。」
エリナが笑いながら手を振る。
「ありがとう、トール、マーラ!じゃあ、3人で近くを見てこよう。ゴルド、留守頼む!」
ゴルドがハンマーを軽く振って返す。
「おう、任せとけ!何か見つけたら教えてくれよ!」
エリナ、トール、マーラの3人は黄金の草を抜け、祭壇から少し離れた丘の反対側へ向かう。風が湿気を帯び、遠くで水晶の微かな響きが聞こえる。トールが周りを見回し、首をかしげる。
「黄金の草ばっかだな。食えそうなもんあるかねえ?」
エリナが目を凝らすと、丘の斜面に奇妙な木々が並んでいるのが見える。木の枝に、透明な殻に包まれた黄金色の果実が実っている。殻の中で光が揺れ、まるで小さな星のようだ。エリナが目を輝かせて言う。
「おい、あれ見てみろ!果実じゃないか?ヘブンズ・セプトらしいキラキラした実だよ!」
マーラが木に近づき、果実を手に取る。殻を軽く叩くと、パキッと割れて中から甘い香りが漂う。黄金色の果肉が露わになり、マーラが一口かじる。
「おお、甘ええ!こりゃすげえ美味いぞ!栄養もたっぷりありそうだ!」
エリナが果実を手に持って、笑う。
「良かった!これなら食料になるね。『輝晶果』って呼ぼうか。ヘブンズ・セプトっぽいよね!」
トールがハンマーを肩に担ぎ、目を輝かせる。
「輝晶果か!いい名前だぜ、姐さん!これなら熔鉄団の腹も満たせるな!」
3人が輝晶果を集めていると、丘の裏側から微かな水音が聞こえてくる。エリナが耳を澄ませ、指をさす。
「ねえ、あそこ!水の音がするよ!」
一行が丘を下りると、黄金の草の間に「水晶の泉」が現れる。水晶の岩から透明な水が湧き出し、小さな流れを作っている。水面に七色の光が反射し、魔脈の波動が微かに感じられる。マーラが泉に手を入れて、驚く。
「冷てえ!しかも澄んでるぞ。飲めるんじゃねえか?」
エリナが水をすくい、慎重に口に含む。甘く清涼な味が広がり、彼女が目を丸くする。
「美味しい…!これなら飲めるよ!水晶の回廊の魔脈結晶と繋がってるのかな?」
トールがハンマーを地面に置いて、笑う。
「すげえな、姐さん!輝晶果と水晶の泉だぜ。これで拠点が生き返るな!」
エリナが輝晶果と水を手に持って、決意を込めて言う。
「うん、タクミたちが戻る前に、私たちで拠点を支えよう。ゴルドに報告して、みんなで運ぼう!」
祭壇近くに戻ると、ゴルドがピットの土台を叩きながら迎える。ゴルドが輝晶果を見て、目を丸くする。
「おお、エリナ!何だそのキラキラした実は!?」
エリナが笑いながら果実を渡す。
「輝晶果だよ!丘の裏に実ってたんだ。水晶の泉も見つけたから、水も確保できたぞ!」
ゴルドが果実をかじり、驚く。
「甘ええ!こりゃすげえな!水もか?熔鉄団の腹が満たされるぜ、エリナ姐さん!」
マーラが革袋に水を入れて持ってきて、言う。
「これでしばらくは大丈夫だ。でも、泉から水を引く方が楽じゃねえか?」
エリナが目を輝かせて言う。
「それいいな!水路を作れば、拠点まで水が届く。ヴェールウッドの村人たちも呼んで、みんなでやろう!」
熔鉄団の職人たちと、ヴェールウッドから来た数人の村人が集まる。村人のリーダー、ケインがエリナに笑顔で言う。
「エリナ、ゴルドから聞いてきたよ。拠点を育てるなら俺たちも手伝う。どんな水路にするんだ?」
エリナが地面に棒で簡単な線を引いて説明する。
「水晶の泉からここまで、まっすぐ水路を掘るよ。熔鉄団の工具と村人の知恵があればできるだろ?」
トールがハンマーを手に持って、笑う。
「おう、姐さん!熔鉄団なら掘るのなんか朝メシ前だぜ!」
ケインが村人たちに目を向けて言う。
「俺たちは土を固めるのが得意だ。水漏れしないように仕上げよう。」
ゴルドがハンマーを振り上げ、号令をかける。
「よし、熔鉄団と村人、力を合わせろ!水路を完成させて、拠点を充実させるぜ!」
熔鉄団が鍬やハンマーで土を掘り、村人が掘った溝を石で固める。水晶の泉から透明な水が流れ出し、黄金の草の間を縫って祭壇近くまで届く。エリナが水路を見て、笑う。
「できた!これで水がいつでも使えるね!」
一方、輝晶果を運ぶため、熔鉄団と村人が荷車を用意する。トールが果実を山盛りに積み、汗を拭う。
「輝晶果、結構重えな!でもこれで腹減りがなくなるぜ!」
マーラが荷車を押しながら、笑う。
「熔鉄団の力持ちなら楽勝だろ。村人の皆も手伝えよ!」
村人の少女、リナが果実を手に持って、目を輝かせる。
「キラキラしてて綺麗だね!ヴェールウッドにはないよ。たくさん運ぼう!」
荷車が何台も行き来し、輝晶果が小屋前に山積みになる。エリナが荷車を押すトールに笑いかける。
「みんな、ありがとう!これで拠点が賑やかになるね!」
ゴルドが水路と果実の山を見て、満足げに言う。
「エリナ姐さん、すげえ仕事だぜ。タクミたちが戻ってきたら驚くぜ!」
エリナが黄金の草を見渡し、笑う。
「ああ、タクミたちにも早く教えてあげたいな。水と食料が揃って、拠点らしくなってきたよ!」
黄金の草が揺れる中、熔鉄団と村人の協力で、ヘブンズ・セプトが2000年前の文明が栄えた時のように少しずつ命を吹き返していく。




