第153話:「水晶の回廊と新たな一歩」
ヘブンズ・セプトの天脈の祭壇近く、黄金の草が風に揺れる中、タクミ一行と熔鉄団の職人たちが小屋前に集まる。熔鉄団の現リーダー、ゴルドが水晶の輝きを見上げ、感嘆の声を上げる。
「おいおい、ここ本当にすげえな!水晶がこんなデカくてキラキラしてるなんて、熔鉄の街じゃ考えられねえよ!」
カザンが熔雷槌を肩に担ぎ直し、得意げに胸を張る。
「だろ?ここがヘブンズ・セプトだ。ゴルド、お前ら熔鉄団は俺が棟梁やってた頃から鍛冶も建物も一流だ。ピットと小屋、さっそく作りに取り掛かれよ!」
ゴルドがハンマーを地面に立てて、ニヤッと笑う。
「おう、カザン。お前が旅に出てから俺がリーダー引き継いだけど、やっぱ棟梁の言うことは聞かねえとな!ピットも小屋もバッチリ作るぜ。で、どこから始める?」
タクミがマグナの装甲に手を置きながら、軽く笑う。
「熔鉄団が鍛冶だけじゃなく建物も作れるなら助かるよ。ゴルド、カザン、よろしく頼む。ピットと住居を同時に進めてくれ。」
エリナが小屋の前で木材を積みながら、首をかしげる。
「鍛冶場と住む場所が揃うのは嬉しいけどさ、食料と水源もまだ足りないよね。このままだとみんな腹が減って飢え死にだ。」
タクミが顎に手を当てて、考えるように言う。
「確かにそうだな。熔鉄団でピットと小屋を固めて、食料と水は別の土地で仲間を集めるか…。カザン、どう思う?」
カザンが熔雷槌を軽く振りながら、熱く返す。
「熔鉄団ならピットも小屋もすぐだぜ!でも、農夫や商人がいねえと食料も物資も足りねえ。タクミ、次はどこ行くんだ?」
その時、リアが黄金の草の先、少し離れた丘の方を指さして、目を輝かせる。
「ねえ、あそこ見て!水晶がキラキラしてるよ!何かすごいものありそうじゃない?」
一行が目を凝らすと、祭壇から少し離れた丘の陰に「水晶の回廊」の入り口が現れる。透明な壁が七色に輝き、低い響きが風に乗ってくる。セリカが目を細めて、鋭く呟く。
「魔脈反応が強いね。この拠点、まだ知らない場所があるみたいだよ。」
タクミが天空の鍵を手に持つ。
「今まで気づかなかったな。よし、ちょっと見てこよう。熔鉄団はピットと小屋の準備頼む。ガイスト、状況は?」
ガイストが冷静に言う。
「魔脈ライン安定。危険性は低いが、未知の領域だ。注意しろ。」
カザンが熔雷槌を肩に戻し、ゴルドに言う。
「お前ら、俺が戻るまで場所決めて準備始めとけよ。タクミ、俺も行くぜ!水晶なら熔鉄団にも使えそうだろ!」
ゴルドが笑いながら手を振る。
「おう、棟梁!任せとけ。ピットと小屋の土台作っとくぜ!」
一行が丘を登り、水晶の回廊に入ると、足音が水晶の床に反響し、澄んだ音が響く。壁に映る七色の光が揺れ、まるで生きているように脈打つ。リアが七色の光球を手に持って、首をかしげる。
「何か不思議な感じするね。この子も何か感じてるのかな?」
ジンが竪琴を手に持って、穏やかに笑う。
「この響き、詩みたいだよ。脈打ってるのが面白いね。」
バルドが風嵐の双剣を手に持って、静かに言う。
「雰囲気が神聖だな。敵はいないみたいだが、何かありそうだ。」
回廊の中央に光の球体が浮かび、「光の守護者」が現れる。小型の人形で、剣と盾を持ち、荘厳な声が響く。
「我は試練を与える者。力と知恵を示せ。」
リアが光球を顔に近づけて、驚く。
「えっ、戦うの?何か可愛い感じするけど…!」
タクミが木の棒を手に持つ。
「試練か。剣術の練習にもなるな。俺が受けるよ。」
守護者が剣を振り、タクミが棒で受け止める。木が軋み、光が散る。だが、守護者が素早く盾を構え、タクミの棒を弾く。タクミがよろめき、肩を押さえる。
「くっ、速いな…!」
バルドが双剣を手に持ったまま、少し苛立った声で言う。
「おい、タクミ!そうじゃねえよ!俺が教えた足さばき使えよ。このくらいの速さならいけるだろ!」
守護者が再び剣を振り、タクミが慌てて棒を構えるが、横からの一撃を食らい、膝をつく。
「うっ…確かにその通りだ!」
バルドが眉を寄せて、タクミに近づく。
「姿勢が低すぎるんだよ。もっと腰を入れて、剣の軌道を見ろ。もう一回だ、タクミ!」
守護者が剣を構え直し、低く言う。
「力だけでは足りぬ。知恵を試す試練を解け。」
守護者の周りに三つの光の球が浮かび、それぞれ赤、青、黄の光を放つ。球が不規則に動き、タクミが立ち上がって眉を寄せる。
「何だこれ?ただ避けるだけじゃなさそうだな。」
ガイストが冷静に解析し、言う。
「光の球に魔脈パターンあり。赤は速く、青は遅く、黄は不規則だ。剣で突く順番を間違えると反撃される。」
タクミが棒を握り直し、息を整える。
「順番か…。ガイスト、どの順番だ?」
ガイストが光の動きを見ながら言う。
「青、赤、黄の順だ。タイミングを計れ。赤が速すぎるから、一瞬の隙を見逃すな。」
守護者が剣を振りつつ、球がタクミに迫る。タクミがバルドの教えた足さばきで動き、まず青い球を棒で突く。光が散り、守護者が一瞬動きを止める。赤い球が速く飛ぶが、タクミが腰を入れて素早く反応し、棒を振り抜く。
「今だ!」
赤が散り、最後の黄い球が不規則に揺れる。タクミが守護者の剣を避けつつ、冷静に見極めて一撃。
「これで決める!」
三つの球が消え、守護者が剣を下ろす。その体が七色の光に包まれ、眩い輝きを放つ。突然、守護者が砕けるように光の玉へと変わり、弧を描いてリアの光球に吸い込まれる。光球が一瞬強く輝き、七色の波紋が広がる。リアが目を丸くして叫ぶ。
「えっ、何!?吸い込まれたよ!タクミ、すごいカッコいいよ!」
タクミが棒を下ろし、息を吐く。
「魔力を吸ったのか?何か分からんが、確かにカッコいいな笑」
バルドが双剣を肩に担ぎ、口の端を上げて言う。
「まあまあだな、タクミ。最後は俺の教え通りだったぜ。」
回廊の奥に進むと、「魔脈結晶の鉱脈」が輝く。紫と青の光が脈打ち、壁全体を照らす。カザンが目を輝かせて言う。
「おい、タクミ!こりゃすげえぞ!この結晶、ピットや建物に使えねえか?」
タクミが結晶に近づき、手で触れる。
「確かに魔力が強いな。ガイスト、解析できるか?」
ガイストが冷静に言う。
「魔脈流動が安定。超魔脈結晶と同等のエネルギー源だ。武器、建物、装置の強化に使える。」
セリカが鋭く呟く。
「これだけあれば、熔鉄団の仕事が捗るね。でも、掘るにはもっと人が必要じゃない?」
タクミが鍵を握り、一行を見回す。
「そうだな。熔鉄団だけじゃ足りない。拠点を整えるには、別の土地で仲間を集めないと。」
カザンが熔雷槌を肩に担ぎ、熱く言う。
「農夫や商人がいねえと、食料も物資も足りねえぜ。タクミ、次はどこ行くんだ?」
タクミが少し考え込む。
「サンドクレストなら商人がいるだろうし、ヴェルディアの集落で農夫を探すか…。でも、毎回俺が鍵持って行くのは効率悪いな。ガイスト、鍵の魔脈を解析して、みんなが自由に移動できる方法を考えられないか?」
ガイストが冷静に返す。
「可能だよ。鍵の魔脈転移特性を抽出すれば、代替装置を作れる。時間はかかるが、設計は始められる。」
タクミが笑いながら言う。
「さすがだ。俺のエンジニア魂が騒ぐな。拠点が育つ前に、移動を楽にしたい。」
リアが光球を手に持って、目を輝かせる。
「タクミ、すごいね!私も何か手伝えるかな?」
エリナが笑いながら言う。
「拠点が賑やかになってきたね。熔鉄団にピットと小屋を任せて、次は誰か迎えに行く?」
タクミが鍵を見つめ、決意を込めて言う。
「そうだな。次の土地へ行く準備だ。熔鉄団に任せて、俺たちは動こう。」
その頃、王都大陸の鉄都ガルザードでは、貴族の拠点である黒鉄の城で緊迫した会議が続いていた。ドルザーグが円卓に拳を叩きつけ、苛立ちを隠さず言う。
「タクミが熔鉄団を連れ込んだだと?奴ら、拠点を本格的に固める気だぞ!」
貴族の一人が水晶球を手に持つ。映像に映るのは、熔鉄団がピットの準備を始める姿だ。貴族が震える声で言う。
「はい…魔脈結晶の鉱脈も見つけたようです。クロノスの力が届かない場所で力を増してる…!」
クロノスが黒いローブを揺らし、冷たく笑う。
「面白い。だが、奴らが仲間を集める前に動けばいい。魔脈ラインを乱し、祠を封じる準備は進んでいるか?」
ドルザーグが剣を握り、目を光らせる。
「ヴェールウッドの祠に兵を送った。ガレンを潰し、タクミの動きを封じる。サンドクレストにも圧力をかけるぞ。」
クロノスが水晶球に手を翳し、低く言う。
「時間は我々の味方だ。タクミが鍵を握る限り、次元移動は制限できる。焦らず進め。」
黒鉄の城に緊張が走る中、タクミたちの知らぬところで、貴族の策謀が静かに進む。




