第146話: 「重力の迷路 - 試練の始まり」
ヴェールウッドの祠に湿った風が吹き抜ける。木々のざわめきと遠くで響く貴族の残党の金属音が混じる中、タクミは一行とエリナ、そして怯える村人たちを前に立つ。手に持つ「天空の鍵」が六色の脈を淡く放ち、彼がそれを高く掲げると、地面が低く震えた。紅、金、青、緑、紫、白の光が螺旋を描き、結晶の階段が天へと伸びていく。「世界の鼓動」が響き合い、低く深い轟音と高く澄んだ鈴の音が空気を振動させる。村人たちが息を呑み、エリナが鎖の跡が残る腕をさすりながらタクミに近づく。
「村がまた狙われるよ。どうする?」
タクミが一行と村人を見回し、決断する。
「エリナと村人はヘブンズ・セプトに連れて行く。貴族には渡さない。」
一行が階段を登り始めると、結晶の表面を踏むたびに星屑のような光が舞い上がる。リアがエーテル・ノヴァを手に跳ねるように進み、
「次元の移動ってワクワクするよね!」
と笑う。バルドが嵐の双剣を肩に担ぎ、
「落ちねえようにな!」
と豪快に笑い、カザンが熔雷槌を握り、
「この光景、何度見ても豪快だな!」
と気合を入れる。ジン、セリカ、セシルも後に続き、階段の先を見上げる。一方、ヴェールウッドに残ったガレンが森の奥を見据え、剣を抜く。
「貴族の斥候だ!ザイン、ミラ、迎え撃つぞ!」
と叫び、黒装甲兵の影が木々の間に現れる。
ヘブンズ・セプトに到着すると、黄金の草が足元で揺れ、水晶山脈が遠くに輝く。タクミがマグナ・ストライダーのコックピットから降り、
「天脈の祭壇へ向かうぞ」
と一行に告げる。大陸の中心にそびえる水晶の台座が四色の光(赤、青、緑、茶)を脈打たせ、低い唸りを上げる。タクミが「天空の鍵」を近づけると、光が強まり、祭壇の表面に魔脈の波紋が広がる。リアが
「ヴェールウッドの状況が見えるかな?」
と杖を握り、祭壇に映る映像が揺らぐ。ガレンたちが斥候と戦う姿が一瞬浮かび、タクミがエリナに指示する。
「ここなら安全だ。エリナ、お前は村人を率いて雨風凌げるような建物を作ってくれ。」
エリナが鋭く頷き、
「任せて。簡単な家から始めるよ」
と村人たちに声を張る。
「みんな、木を切って!」
老若男女10人ほどの村人が不安げに顔を見合わせつつも、エリナの言葉に動かされ、黄金の草の近くで作業を始める。
タクミが一行を見回し、
「オラクルに報告だ。神殿へ行くぞ」
と言う。セシルが
「魔脈が純粋すぎるね」
と呟き、バルドが
「また何か始まるのか?」
と目を細める。一行が神殿へ向かうと、透明な水晶の壁がそびえ、内部に古代の紋様が薄く光る。中央に浮かぶオラクルのホログラムが現れ、古代の衣をまとった姿が一行を見据える。
「エリナを救ったな。地上の危機を乗り越えた決意、我が見届けた。」
タクミが鍵を握り締め、鋭く答える。「クロノスを倒すためだ。次は何だ?」
オラクルが静かに頷き、次の試練を告げる。
「クロノスを倒す資格を示せ。魔力を凝縮し、信じられるものを生み出せ。水晶山脈の『重力の迷路』へ向かえ。そこで力を試す。」
タクミがコックピットでガイストに問う。
「水晶山脈のデータあるか?…って、あるわけないか。」
ガイストが冷静に答える。
「古代エアリス文明の記録は未解析。魔脈反応のみ検出。方向はオラクルの指示を頼りに。」
オラクルのホログラムが右手を伸ばし、水晶山脈の方角を示す。黄金の草の向こう、雲海の先にそびえる水晶の峰々が微かに光る。タクミが
「とりあえずあっちか?」
と半信半疑で呟き、リアが
「行ってみなきゃ分からないよ!」
と元気に言う。一行が黄金の草をかき分け進むと、バルドが
「ここか?」
と首をかしげ、セリカが風影の爪を手に、
「魔脈の流れが強くなってる。ここで間違いないよ」
と鋭く指摘し、一行が水晶山脈にたどり着く。
巨大な水晶の壁がそびえ立つ場所で、オラクルの声が再び響く。
「試練を始めよ。」
地面が震え、「重力逆転迷路」が展開する。黄金の草が宙に浮かび、水晶の壁が上下逆さまに動き出し、空気が歪んで足元の感覚が狂う。タクミがマグナを動かし、
「突破するぞ!」
と叫ぶが、足元が突然消え、一行が落下する感覚に襲われる。重力が反転し、地面が天井に、天井が地面になる。マグナが宙に浮き、リアが
「うわっ!」
と杖を握り締めてバランスを取る。バルドが双剣を構え、
「何だこの仕掛けは!」
と叫び、カザンが熔雷槌を地面に叩きつけるが、衝撃が跳ね返って逆に宙を舞う。
迷路の第一層が広がり、水晶の通路が複雑に交錯する。重力がランダムに切り替わり、一行が壁に叩きつけられたり、浮かされたりする。タクミが風神の眼を意識し、
「魔脈が乱れてる…!」
と呟く。ガイストが
「重力制御の魔脈を探せ。複数箇所に分散してる」
と助言。タクミが
「リア、風で俺を援護しろ!」
と叫ぶと、リアが杖を振り、青い魔法陣がマグナの周囲に広がる。
「風属性を付与するよ!」
と魔力を注ぐ。マグナの装甲が青く輝き、タクミがストームブリンガーを起動。
「これで道を開く!」
と叫び、刃を振り下ろすが、重力が再び反転し、攻撃が外れる。
通路の奥から水晶の浮遊球(直径1m、重力操作装置)が現れ、青白い魔脈を放つ。ジンが竪琴を奏で、
「アクエリア、水で動きを止めよう!」
と青い魔法陣を展開。水人魚が浮遊球に水の渦を巻きつけ、一瞬動きを鈍らせる。バルドが「今だ!」と突進し、双剣で浮遊球を斬りつけるが、刃が弾かれ、「硬えな!」と舌打ちする。セリカが風影の爪を手に忍び寄り、
「弱点は魔脈の流れだよ!」
と鋭く指摘。タクミが風神の眼で浮遊球の中心に魔脈の核を見つけ、「そこか!」と叫ぶ。
リアが「私もいくよ!」と杖を振り直し、「フレア・ストライク!」と赤い魔法陣を展開。炎が浮遊球を包むが、重力の反転で炎が散る。「効かない!?」とリアが驚く中、カザンが「熔雷衝撃波!」と槌を地面に叩きつけ、赤と黄の衝撃波が浮遊球を揺らす。しかし、重力の歪みで衝撃が拡散し、効果が薄い。タクミが「一発じゃ無理だ…連携だ!」と指示を飛ばす。一行が浮遊球を囲み、それぞれの技で牽制するが、重力の変化に翻弄され、第一層を抜けられないまま息を切らす。




