第141話:天空の階段 - 止まった時間の大地へ
ダストホロウの街外れ、地下に隠された光の神殿。最奥の広間にたどり着いたタクミ一行は、巨大な円形の石壁と対峙する。壁には無数の古代文字が刻まれ、不気味に淡く光を放つ。中央には砂時計のような窪みが静かに砂を落とし、その周囲に祭壇が広がる。タクミがマグナ・ストライダーのコックピットから見下ろし、風神の眼を意識する。視界に魔脈の流れが映り、彼が「光の鍵」を手に持つ。
「これで六つの鍵が揃った。天空の階段が現れるなら、ここで決まるはずだ。」
仲間たちが祭壇に集まり、それぞれの鍵を手に持つ。バルドが「嵐脈の鍵」、カザンが「焔の鍵」、ジンが「深脈の鍵」、セリカが「砂漠の鍵」、そしてリアが「魔脈の鍵」を握る。タクミが「光の鍵」を掲げ、ガイストに尋ねる。
「どうすれば開くんだ、ガイスト?」
ガイストが淡い光を放ち、モニターに波形を表示。
「六つの鍵の魔力波長を解析中。結論:鍵を窪みに近づけ、位相を一致させることで共鳴を誘発。成功確率95%!ただし、追加の魔力供給が必要と推測。」
タクミが目を細める。
「追加の魔力…?リア、トーラスを呼べるか?」
リアがエーテル・ノヴァを手に、目を輝かせる。
「分かった!トーラスの雷ならいけるよ!」
一行が祭壇の周囲に立ち、六人が一斉に鍵を窪みに掲げる。リアが詠唱を始める。
「雷の守護者よ、絆の雷鳴で我が元へ!トーラス!」
紫の魔法陣が広がり、雷鳴がホールに轟く。全高10メートルの雷巨人トーラスが現れ、雷神の槍を手に構える。鍵が淡く光り始め、低い共鳴音が神殿全体を震わせる。トーラスが槍を窪みに突き刺すと、紫の雷が鍵に流れ込み、六つの光が一気に輝きを増す。
窪みから砂が逆流し、重力を無視して天井へと昇っていく。砂は六色の光――焔の紅、砂漠の金、嵐脈の青、深脈の緑、魔脈の紫、光の白――を帯び、空中で螺旋を描きながら絡み合う。さらにトーラスの雷が紫の閃光を加え、螺旋が天井を突き破る。地下神殿の天井が次元を歪ませ、透明とも言えない異空間が開き、空へと伸びていく。
螺旋が空に達した瞬間、「音の爆発」が炸裂する。低く深い轟音と高く澄んだ鈴の音が混ざり合い、「世界の鼓動」とも呼べる響きが空気を振動させる。波紋が広がり、仲間たちの心臓が一瞬同期して全員が息を呑む。
「うわっ、何だこの音!?」バルドが耳を押さえ、カザンが熔雷槌を握り直す。
「神殿が…生きてるみたいだぜ!」
リアが目を細め、興奮気味に言う。
「これは…世界の鼓動と共鳴してる!鍵とトーラスが次元を動かしてるんだ!」
ジンが竪琴を手に呟く。
「心臓が…同期してるみたいだ。アクエリアも震えてるよ。」
セリカが鋭く空を見上げ、風影の爪を手に持つ。
「何か、違う…戦いじゃない気配だ。」
ガイストが即座に分析。
「音波振動、周波数20Hz~12kHz。空気密度変動率18%、次元干渉確認!時間流動に異常検出!」
空で六色の砂が結晶化し、無数の小さな鏡の欠片に変化。太陽光を反射し、神殿の上空に巨大な「光の万華鏡」が広がる。欠片が回転しながら再配置され、液体金属のように流動する結晶の階段が形作られていく。階段は地下から空へと突き抜け、その表面には六つの鍵の色とトーラスの雷が脈打つように流れる。タクミがマグナの腕を伸ばして触れると、波紋が広がり、足を乗せると星屑のような光の粒子が舞い上がる。
「階段の硬度、推定HV1200だが柔軟性あり。時間変動ゼロに接近中、次元干渉の可能性99%!」ガイストがデータを更新。
遠くの雲が一瞬停止し、風が静まり、仲間たちの影が分裂して揺れる。時間の歪みが視覚化され、セシルがウィンドティアーズ・ローブを握り、呟く。
「この歪み…次元の狭間だ。でも、敵の気配じゃない。何か…変だよ。」
タクミが「光の鍵」を握り、ガイストに尋ねる。
「浮遊大陸までの距離は?」
「視界外、推定高度5000メートル以上。階段の伸長速度、毎秒30メートル!異常な時間領域に突入予測!」
その時、窪みが砕け散り、六つの鍵が空中で融合。トーラスの雷が奔流となり、光が収束。タクミの手元に一つの「天空の鍵」が現れる。鍵の表面には六色の脈と雷の模様が流れ、握ると微かな振動が伝わる。神殿全体が共振し、「この世界の始まりと終わりを繋ぐ道が開かれた」という謎の声がどこからともなく響き渡る。
「何!?誰の声だ!?」カザンが叫び、熔雷槌を構える。
バルドが双剣を握り、「敵か!?」と辺りを見回す。
リアが魔導書を閉じ、冷静に言う。
「落ち着いて。多分、この神殿…いや、世界そのものの意志だよ。」
タクミがマグナを動かし、流動する結晶の階段に第一歩を踏み出す。マグナの装甲が祠の入口を擦り、火花が散る。足元で波紋が広がり、星屑が舞い上がる。だがその時、後方から地響きが響く。次元獣の咆哮と貴族の叫び声が混じる。「待て!浮遊大陸は我々のものだ!」貴族の指揮官が叫び、黒い結晶を掲げる。次元獣が階段に爪を立てるが、結界が紫の雷で弾き返し、貴族たちが足を踏み入れるも時間の歪みに阻まれる。
「ガイスト、敵の動きは?」タクミが問う。
「次元獣12体、貴族部隊接近中!階段侵入阻止率99%、ただし追撃継続中!」ガイストが報告。
リアがエーテル・ノヴァを掲げ、叫ぶ。
「タクミ、私に任せて!魔脈ライフル改で牽制するよ!」
タクミがニヤリと笑い、マグナの右腕を展開。「よし、リア、やれ!」
リアが魔導書を開き、詠唱。
「全属性とトーラスの雷よ、刃に集え――オールエレメント・ユニゾン!」
7属性が渦巻き、トーラスの雷が加わり、魔脈ライフル改の銃口に虹色の輝きが収束。タクミが照準を合わせ、吠える。
「ユニゾン・インフィニティ・バースト!!」
虹色の光弾が階段下に炸裂し、次元獣が吹き飛び、貴族が後退。爆煙が立ち上り、階段の結界がさらに輝く。タクミが振り返る。
「浮遊大陸はアイツらには渡さない!追ってくるなら、また撃つぞ!」
一行が階段を登り続け、浮遊大陸の輪郭が鮮明になる。トーラスが雷を帯びた槍を掲げ、後方を見守る。階段が次元の狭間を抜け、地下から空へと突き抜ける。浮遊大陸に到着すると、雲が静止し、風が消え、光が凍りついたように輝く大地が広がる。タクミがマグナから降り、結晶の地面に足を踏み入れる。音が消え、静寂が一行を包む。
「ここ…何かおかしいな。」タクミが風神の眼で周囲を見渡す。
リアがエーテル・ノヴァを手に、大地に触れる。
「時間が…止まってるみたい?」
一行が顔を見合わせ、静寂の中で浮遊大陸の謎を見つめる。遠くに神殿のようなシルエットが霞み、古代の秘密が隠されている気配が漂う。タクミが「天空の鍵」を握り締め、呟く。
「この大地…何かが待ってるぜ。」




