第138話:浮遊大陸の真実
鉄都ガルザードの廃墟を後にしたタクミ一行は、マグナを修復しつつサンドリア大陸へ旅立つ。数日後、灼熱の陽光が照りつける砂漠の交易都市サンドクレストに到着。砂塵が風に舞い、街の喧騒が遠くから響く。タクミが風神の眼を手に、街を見渡す。
「鉄都の城で見た石碑…浮遊大陸と天空の階段。あれが本物なら、ここで何か手がかりが欲しい。」
セリカが風影の爪を手に、半信半疑の声で呟く。
「浮遊大陸なんて、子供の頃に読んだおとぎ話だと思ってた。でも、あの石碑の魔力は本物だったよね…?」
バルドが嵐の双剣を肩に担ぎ、笑い声を上げる。
「俺はまだ信じねえよ。空に浮かぶ島?そんなもん、あるわけねえだろ。」
カザンが熔雷槌を地面に置き、煤けた顔で言う。
「まぁ、鉄都のあの結晶と地下の装置が何か企んでるのは確かだ。浮遊大陸が噂でも、調べる価値はあるぜ。」
セシルがローブの砂を払い、穏やかに仲間を促す。
「噂でも真実でも、私たちは前に進むしかないよね。」
一行が街の中心にある「砂嵐亭」へと足を向ける。砂が靴に擦れる音が響く。
砂嵐亭の中は、旅人と商人で賑わっている。木のカウンターには酒瓶が並び、燻した肉の香りが漂う。奥に立つ白髪の老人――以前、浮遊大陸の話をしたじいさん――が、タクミたちを見て目を細める。
「お前ら、また来たのか。鉄都の一件、噂になってるぜ。ガルザークを倒した奴らが、何の用だ?」
タクミが一歩進み出し、ストームブリンガーを腰に差したまま聞く。
「じいさん、浮遊大陸についてだ。あんた、前に見たって言ってたよな?あれ、本当なのか?」
じいさんが酒瓶を手に持ったまま、少し黙り込む。
「…ほう、浮遊大陸か。お前ら、どこまで知ってるんだ?」
ジンが竪琴を奏で、アクエリアを呼び出して水の杯を差し出す。
「おじいさん、教えてくれ。鉄都の城で浮遊大陸の石碑を見つけたんだ。本当に存在するのか?」
じいさんが水を飲み干し、低い声で話し始める。
「存在するか、だと?ああ、あるさ。俺は数十年前、砂漠の果て、ダストホロウで見た――いや、見えた気がする。空に浮かぶ島と、そこに伸びる光の階段…天空の階段だ。あの日は砂嵐がひどくて、酒も入ってた。幻だったのか、本物だったのか、今でも分からねえがな。」
リアが目を丸くし、身を乗り出す。
「天空の階段!?それって…何!?」
じいさんが続ける。
「古老の言い伝えじゃ、六つの鍵が揃えば、ダストホロウに天空の階段が現れて、浮遊大陸に辿り着けるってな。焔嵐の鍵、砂漠の鍵、嵐脈の鍵、深脈の鍵、魔脈の鍵…そして光の鍵だ。」
老人が目を閉じ、語調を変える。
「アルテリアには昔から伝わるおとぎ話がある。浮遊大陸の話だ。こう始まる――遥か昔、世界がまだ若く、星々が歌を紡いでいた頃、名もなき者たちが天に手を伸ばした。誰とも知れぬ彼らは、焔を操り、風を従え、大地を裂き、魔を束ね、光を編んだ。そして、空に浮かぶ島を作り上げたという。そこは神々の庭とも、禁断の宝庫とも呼ばれ、時の流れを止めた場所だった。ある者は言った、『浮遊大陸は世界を救う鍵を隠すため』だと。またある者は囁いた、『いや、それは世界を壊す力を封じるためだ』と。真実を知る者は誰もおらず、ただ島は雲の上に漂い続け、六つの鍵を待っていた。天空の階段は、その鍵を持つ者にだけ姿を現し、浮遊大陸へと導く。そう、アルテリアの古老たちは子守唄のように語り継いできたのさ。」
酒場の喧騒が一瞬遠のき、じいさんの声が響き渡る。
タクミが息を呑み、目を鋭くする。
「待て。六つの鍵?俺たちは焔、砂漠、嵐脈、深脈、魔脈の鍵を持ってる。光の鍵って何だ?」
じいさんが目を光らせ、酒瓶を置く。
「お前らがその五つを持ってるとはな…光の鍵は、ダストホロウの地下にある『光の神殿』に眠ってる。だが、そこは砂嵐と魔獣に守られた禁域だ。鍵が揃えば天空の階段が現れるって話だが、そんな無茶をする奴は見たことねえ。」
バルドが笑い声を抑え、肩を揺らす。
「空に島が浮かんで、階段が現れる?じいさん、酒飲みすぎじゃねえか?」
セリカが風影の爪を握り締め、静かに呟く。
「鉄都の石碑に刻まれた絵と結晶…あれが本物なら、この話も本当かもしれない。私、信じるよ。」
酒場を出た一行が街の外れで立ち止まる。砂漠の風が熱を運び、マグナの装甲が陽光に反射する。タクミが風神の眼を手に持つ。
「焔嵐の鍵は焔嵐の火山の火口で、砂漠の鍵はサンドリアの遺跡で、嵐脈の鍵は嵐脈の洞窟で、深脈の鍵は深脈の神殿で、魔脈の鍵はダストホロウの遺跡で手に入れた。光の鍵が最後なら…手に入れれば浮遊大陸に行けるのか?」
ガイストが浮遊しながら冷静に分析。
「ダストホロウまでの距離、約200キロ。砂嵐の影響でマグナの稼働率は70%に低下する可能性あり。じいさんの話の真偽は不明だが、調査する価値は高い。」
リアが魔導書を手に、興奮気味に言う。
「浮遊大陸が本当にあるなら、私の魔法でそこに辿り着いてやるよ!光の鍵が魔力を帯びてるなら、エーテル・ノヴァで探せるかも。」
カザンが熔雷槌を振り上げ、笑う。
「光の神殿か…熔鉄団の力でぶち破って、鍵を奪うぜ!」
セシルが微笑み、仲間を見回す。
「みんな、まだ半信半疑だけど…鉄都で見たものが本物なら、これも真実かもしれない。私たちの旅が、もっと大きなものに繋がってる気がするよ。」
タクミがストームブリンガーを握り締め、砂を蹴る。
「ドルザードとクロノスが浮遊大陸を狙ってるなら、俺たちが先に行く。光の鍵を手に入れて、真実を確かめるぞ。サンドクレストで準備して、ダストホロウに向かう!」
砂漠の風が唸りを上げ、一行が新たな目的に向け動き出す。夕陽が砂に長い影を落とし、次の冒険の幕が上がる。




