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第137話:鉄都の残響と天空への序曲

鉄都ガルザードは静寂に包まれていた。半壊した城の残骸から煙が立ち上り、かつての威容は見る影もない。タクミがマグナのコックピットから降り、ストームブリンガーを地面に突き立てる。汗と煤で汚れた顔で息を整え、風神の眼が微かに光を放つ。魔力の残滓が風に混じる中、彼の表情が険しくなる。

「ガルザークの最後の言葉…『クロノス』っていったい何なんだよ?アイツ、何かを知ってたはずなのに。」

ガイストの声が耳元で響く。

「タクミ、敵の魔脈結晶の残響は検出不能。だが、地下50メートル地点で異常なエネルギー反応を確認。調査を推奨。」

タクミがストームブリンガーを握り直す。

「地下か…後で調べる。まずは皆を…」


その時、リアがよろめきながら近づく。上級魔導書のページは焼け焦げ、エーテル・ノヴァの輝きが薄れている。

「タクミ…『オールエレメント・ブレイク』、決まったね。でも、私の魔力、もう限界かも…」

タクミが彼女を支え、肩を叩く。

「よくやったよ、リア。あれがなきゃガルザークを仕留められなかった。」


セシルがアース・バリアを解除し、仲間を見回す。

「全員無事だね。でも、この街…もう立ち直れないかもしれない。」

バルドが嵐の双剣を鞘に収め、テラノスの岩塊を肩に担ぐ。

「鉄都は終わりじゃねえ。俺たち風の民がいる限り、必ず復活するさ。」

カザンが熔雷槌を地面に叩きつけ、煤けた顔で笑う。

「その通りだ!熔鉄団がこの瓦礫から新しい街を作ってやるぜ!」

ジンが竪琴を奏で、アクエリアの水流で傷を癒す。

「そうだね。僕たちで支え合えば…」

セリカが風影の爪を手に、遠くを見つめる。

「…地下。あの装置、まだ動いてる気配がするよ。」


街の広場では、生き残った住民が呆然と立ち尽くす。タクミたちが近づき、食料と水を配る。瓦礫に座った老人が震える声で語り始める。

「ガルザークは…ただの傀儡だったのかもしれん。昔、サンドリア大陸の浮遊大陸から来た使者が、この街で『天空の階段』の話をしたことがある。あの階段は、神々の領域に通じるって…」

リアが目を輝かせ、身を乗り出す。

「浮遊大陸!?それって伝説の…!」

老人は頷き、目を細める。

「ああ。だが、ガルザークが現れてから、地下に何かを作り始めた。あの装置…クロノスって名前を聞いたことがあるよ。」

タクミが風神の眼を握り、呟く。

「クロノス…ガルザークの言葉と繋がった。サンドリア大陸に行けば、全てが分かるのか?」


タクミが半壊した城を見上げ、仲間たちに言う。

「ドルザード…貴族長がまだ城にいるのか確かめたい。あいつがガルザークを操ってた可能性もある。行くぞ。」

セリカが風影の爪を構え、先頭に立つ。

「私に任せて。敵が残ってても切り裂くよ。」

仲間たちが頷き合い、崩れた城門をくぐる。


城内は荒れ果てていた。大理石の床はひび割れ、豪華なシャンデリアは落下して粉々。バルドが鼻を鳴らし、呟く。

「血の臭いがしねえ。戦闘の痕はあるけど、生き物の気配が薄いな。」

ガイストがスキャンを開始。

「生命反応なし。貴族長ドルザードの痕跡も検出不能。撤退したか、元々不在だった可能性が高い。」

タクミが眉を寄せ、拳を握る。

「不在?ならガルザークはどうやって…?」


一行が玉座の間にたどり着く。巨大な黄金の玉座は無傷で残り、その背後に奇怪な紋様が刻まれた壁がある。リアが魔導書を手に近づき、紋様に触れる。

「これは…古代魔術の封印符だよ。強い魔力が込められてるけど、何かを隠してる感じがする。」

セシルがウィンド・テンペスタを軽く放ち、埃を払う。

「この壁、扉だよ!裏に何かある。でも今は開けられない…魔力の鍵が必要っぽい。」

タクミがストームブリンガーを手に近づく。

「鍵か…ガルザークの魔脈結晶が関係してるのか?」


リアが疲れた顔で提案する。

「私の全属性魔法で試してみるよ。封印を解くには、魔力の波長を合わせなきゃいけないかも。」

上級魔導書を開き、エーテル・ノヴァを起動。詠唱が響き渡る。

「炎の裁き、インフェルノ・ラグナロク!氷の静寂、クリスタル・ブリザード!風雷の審判、テンペスト・ジャッジメント!大地の怒り、アース・カタクリズム!雷の終焉、サンダー・カタストロフ!」

五つの属性が渦巻き、ストームブリンガーに収束。タクミが剣を振り上げ、扉の中心に突き刺す。光が爆発的に広がり、封印符が砕け散る。

「開いた…!」


扉の向こうに狭い石室が広がる。中央には古びた石碑があり、浮遊大陸の絵と「天空の階段」の文字が刻まれている。石碑の下に黒い結晶の欠片が落ちている。ガイストが即座に解析。

「結晶の波長、ガルザークの魔脈結晶と一致。だが、出力は微弱。ドルザードが持ち去った可能性あり。」

セリカが風影の爪で結晶を拾い上げる。

「これ…まだ微かに脈打ってる。ドルザードがどこかで使ってるのかも。」

タクミが石碑を睨み、呟く。

「浮遊大陸と天空の階段…ドルザードがそこを目指してるなら、クロノスも絡んでる。こいつを追うしかねえ。」


書庫に移動すると、散乱した書物の中にサンドリア大陸の地図らしき紙片が落ちている。ジンが竪琴でアクエリアを呼び出し、水流で紙片を浮かせてタクミに渡す。

「サンドリア大陸の端に…『天空の階段』の記述があるよ。ドルザードがそこにいるのかも。」

タクミが紙片を握り潰し、決意する。

「城はもう用済みだ。次に進むぞ。」


セリカの案内で、仲間たちが城下の地下へ向かう。崩れた通路を抜けると、巨大な円形の装置が現れる。直径数十メートルの金属製構造物で、中央の青白いコアが脈打つ。ガイストが分析。

「エネルギー出力、未知の波長。マグナの動力炉の10倍以上。目的不明だが、長期間稼働している形跡あり。」

カザンが熔雷槌を振り上げ、笑う。

「ぶっ壊すか?」

タクミが手を上げて制止。

「待て。こいつが何なのか分からないうちは危険だ。ドルザード…クロノス…こいつらが関わってるなら、浮遊大陸で答えが見つかるはず。」

リアが魔導書を開き、コアに触れようとするが、光が強まり、彼女を弾き飛ばす。

「うっ…!強力な魔力障壁…これ、ただの機械じゃないよ!」


街に戻った仲間たちがマグナの修復に取り掛かる。カザンとバルドが鉄板を叩き直し、汗と火花が飛び散る。ジンとセシルが魔力回路を調整し、青白い光がマグナを包む。タクミがストームブリンガーを手に、仲間を見渡す。

「ガルザークは倒した。でも、クロノスって奴が本当の敵なら、まだ戦いは終わらない。浮遊大陸、サンドリア大陸…天空の階段を目指すぞ。」

リアが疲れた顔で微笑む。

「私の魔法、まだまだ見せたいものがあるからね。次はもっと派手にいくよ!」

セリカが爪を鳴らし、鋭く言う。

「地下の装置…ドルザードが絡んでるなら、私が切り裂いてやる。」

全員が頷き合い、夕陽に照らされた鉄都の廃墟で、新たな旅への決意を固める。風が瓦礫を揺らし、次の戦いの予感を運ぶ。



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