第131話:砂塵の追跡 - 敵の隙を突け
サンドリア大陸、ダストホロウの街外れ。朝陽が砂漠を赤金に染め、熱風が乾いた砂塵を巻き上げる。タクミ一行は街の木造の門を抜け、古代遺跡へ向かう。マグナ・ストライダーの重い脚部が砂を踏み砕き、ブースターが低く唸る。砂がマグナの装甲に当たって跳ね、微かな金属音が響く。タクミは操縦席で風神の眼を光らせ、前方を睨む。
一行が遺跡への道を進む中、タクミが隣のセリカに声をかける。
「セリカ、街で何か情報は聞けたか?」
セリカは風影の爪を指先でくるりと回し、鋭い目でタクミを見返す。
「宿屋で噂を拾ったよ。ダストホロウの交易が最近途絶えてるってさ。貴族の騎士団が砂漠を封鎖してるらしい。影の使者も見かけたって話だ。」
彼女の声は低く、砂風に紛れる。タクミが顎に手を当てて指示する。
「ガイスト、スキャン範囲拡大」
ガイストの機械的な声が即座に響く。
「半径5キロ内に異常なし。魔脈波動は遺跡方向に集中。」
タクミは眉を寄せ、呟く。
「貴族と騎士団が絡んでるなら、遺跡に何かあるな。急ぐぞ。」
バルドが双剣を肩に担ぎ、砂を蹴って前に出る。
「風の民の遺跡がそんな奴らに汚されてるなら許さねえ。」
彼のマントが風に揺れ、闘志が目に宿る。
一行が遺跡の石門に到着すると、朝陽が石門の表面を照らし、魔脈の紋様が薄く光る。砂塵が足元で渦を巻き、タクミがマグナを停止させる。タクミは操縦席から降り、風神の眼で内部を解析。
「魔脈の鍵は奥だ。だが乱れが激しすぎる。気をつけろ。」
彼の声が石門に反響する。
石門をくぐると、広大なホールが広がる。壁の魔脈紋様が不規則に脈打ち、中央には台座がそびえる。だが、そこに鍵はない。砂に残された乱れた足跡だけが、誰かの侵入を物語る。タクミが台座に近づき、目を細める。
「何!?鍵がねえ!」
彼の叫びがホールにこだまする。セリカが素早く屈み、足跡に指を這わせる。
「これ、貴族の魔導士の靴跡だよ。影の使者じゃない。誰かに先を越された。」
彼女は砂を払い、冷たく呟く。リアがエーテル・ノヴァを握り締め、首をかしげる。
「やっぱりまたテラノスにかざした時の座標を見られてたのかな?」
彼女の声は不安げに震え、砂の上を跳ねる。ジンが竪琴を手に持つと、軽く弦を弾く。
「アクエリアが鍵の音を追えるよ。僕に任せて!」
彼の指が弦を滑り、水流人魚アクエリアが現れる。水の鞭が風を切り、北東を指す。
「こっちだ!」
ジンが叫び、一行は砂を蹴って走り出す。
遺跡を進む中、遠くで爆発音が轟く。空が赤く染まり、砂塵が渦を巻いて視界を揺らす。タクミが操縦桿を握り直し叫ぶ。
「ガイスト、状況確認!」
ガイストが応答。
「魔脈波動2箇所検出。距離500メートル、北東で戦闘中。次元獣3体、魔導士複数確認。」
一行が砂丘の影に身を潜めると、目の前で貴族の魔導士と影の使者が激突していた。
魔導士が杖を振り、砂を切り裂く紫の波動を放つ。
「貴族の裏切り者!クロノスの意志に従え!」
彼のローブが風に煽られ、怒りに顔が歪む。影の使者が黒いフードを揺らし、暗い波動で反撃。
「貴族ごときがクロノスを語るな!鍵は我々が支配する!」
波動が地面を抉り、黒い稲妻が砂を焦がす。
タクミが砂に手をつき、小声で指示。
「敵が分裂してる…情報だ。静かに聞け。」
彼の目が鋭く光る。魔導士が杖を振り回し、怒鳴る。
「ドルザードは魔脈を我が物にしようと企むが、クロノスはそれを許さぬ!」
影の使者が嘲笑う。
「貴様ら貴族はクロノスの道具に過ぎん!鍵は我々が王都へ運ぶ!」
セリカが砂丘の陰で膝をつき、呟く。
「クロノス派が鍵を狙ってる。貴族と対立してるんだ。」
彼女の爪が砂を掴む。バルドが双剣を握り、低く笑う。
「どっちも敵だ。潰し合えば楽になるぜ。」
彼の肩が微かに震え、戦意が滾る。戦闘が続き、影の使者が次元獣「ダスト・クロウラー」を召喚。全長15メートルの砂蠍が砂を這い、尾から毒針を放つ。貴族の魔導士が次々と倒れ、影の使者が勝利を収める。だが、彼は膝をつき、荒い息を吐く。タクミが立ち上がり、決断。
「クロノス派が勝ったが疲弊してる。今がチャンスだ。乗り込むぞ!」
タクミが指示。
「ガイスト、ターゲット優先!」
ガイストが応答。
「影の使者と次元獣を優先。推力2万3000ニュートン、全出力準備完了。」
マグナのブースターが一瞬唸り、砂を吹き飛ばす。一行が砂丘から飛び出し、疲弊した影の使者とダスト・クロウラーに襲いかかる。タクミがマグナの魔振剣を振り下ろす。
「これで終わりだ!」
剣がクロウラーの脚を切り裂き、火花が飛び散る。金属の軋み音が砂嵐に響き、砂塵が爆発的に舞う。バルドが双剣を手に突進し、砂を蹴り上げる。
「風の民の怒りだ!」
影の使者の波動を切り裂き、使者を砂に叩きつける。砂がバルドの顔に跳ね、マントが乱れる。リアがエーテル・ノヴァを掲げ叫ぶ。
「雷の守護者よ、絆の雷鳴で我が元へ!トーラス!」
全高10メートルの雷巨人トーラスが雷鳴と共に現れ、雷神の槍を振り下ろす。
「サンダー・ウェーブ!」
稲妻が迸り、次元獣を痺れさせる。彼女の髪が風に舞い、目が輝く。
セリカが風影の爪を手に影から飛び出す。
セシルが召喚精霊を呼び出す。
「風の守護者よ、絆の疾風で我が元へ!エアリス・ガーディアン!」
全高8メートルの風の精霊が旋風を巻き起こし、クロウラーの装甲を切り裂く。
「これで終わりだよ!」
と叫び、敵を仕留める。彼女の動きは素早く、砂に足跡を残さない。影の使者が杖を掲げ、よろめきながら呻く。
「貴様ら…!」
ジンが竪琴を奏で、弦を強く弾く。
「水の守護者よ、絆の波濤で我が元へ!アクエリア!」
水流人魚が水の鞭を放ち、「アクア・テンペスト!」で砂を固める。影の使者の足が沈み、杖が砂に落ちる。彼の目が憎しみに燃える。タクミが叫ぶ。
「終わりだ!」
マグナの手で影の使者の腕を掴み、魔脈の鍵を奪い返す。鍵が青白く光り、タクミの手の中で脈打つ。影の使者が呟く。
「クロノスが…許さん…」
彼の体が砂に崩れ落ち、風に消える。ガイストが報告。
「魔脈安定化開始。敵戦力全滅。」
夜、遺跡近くの砂漠で休息。星空が広がり、焚き火の炎がパチパチと音を立てる。ジンが竪琴を膝に置き、穏やかな旋律を奏でる。
「砂漠の詩が仲間を癒すよ。」
彼の指が弦を滑り、火の光が顔を照らす。タクミが「魔脈の鍵」を手に持つ。鍵の紋様が微かに輝き、彼の手に熱を伝える。
「クロノスって何だ?貴族と影の使者が対立してるなんて…。」
彼は鍵を握り潰すように力を込める。リアが焚き火に手を翳し、拳を握る。
「敵が分裂してたなんてびっくりだね。でも鍵は私達が守るよ!」
彼女の声が火の音に混じる。バルドが双剣を砂に突き立て、腕を組む。
「次はどっちを叩くかだ。貴族も影の使者も許さねえ。」
彼の目が火を映し、鋭く光る。セリカが焚き火のそばに座り、爪を眺める。
「クロノス…鉄都の裏に何かでかい影があるよ。貴族と別勢力ってことだね。」
彼女の声は冷たく、砂に響く。タクミが指示。
「ガイスト、機体をチェックしてくれ。」
ガイストが応答。
「装甲80%、推力2万3000ニュートン回復中。準備OK。」
タクミが仲間を見回す。
「王都が近づいてる。クロノスの正体を暴くまで、俺達は止まらねえ。」
彼の言葉に、仲間全員が頷き、星空の下で決意を固める。




