第129話:深脈の神殿 - 水の試練
アクエリア大陸の岸辺。朝陽が海面に反射し、無数の島々が青い水に浮かんでいる。タクミ一行はガルスの船を降り、目の前にそびえる深脈の神殿を見つめる。神殿は巨大な貝殻のような石造りで、水面下に沈む入り口が波に揺れている。
タクミが目を細め、風神の眼を意識する。視界に魔脈の流れが青い光として浮かび上がる。
「魔脈の乱れがこの神殿に集中してる。『深脈の鍵』は間違いなくここだ。」
ガイストが淡い光を放ち、解析を始める。
「水深20メートル以下にエネルギー反応。進入経路の確保を推奨。」
リアがエーテル・ノヴァを握り、目を輝かせる。
「水中探検だよ!楽しそう!」
タクミが彼女のテンションに苦笑する。
「お前、どこでも楽しそうだな。」
バルドが双剣を手に持つ。
「水の中か…風の民には慣れない戦場だぜ。」
セシルがウィンドティアーズ・ローブを整え、隣で言う。
「でも魔脈の流れは感じるよ。私が導くから、一緒に頑張ろう。」
バルドが頷く。
「頼りにしてるぜ。」
二人の間に静かな信頼が漂う。
ジンが竪琴を構え、水の精霊を呼び出す。
「水の詩がここで響くよ。僕に任せて!」
竪琴の弦を弾くと、水面が大きく揺れ、水の精霊が青い光と共に現れる。ジンが力強く叫ぶ。
「水の精霊よ、道を開け!アクア・ステアウェイ!」
海水が轟音と共に左右に裂け、神殿の入り口まで続く「水の階段」が形成される。水壁が透明に輝き、階段の表面に波紋が広がる。一行が驚く中、リアが目を輝かせる。
「ジン、すごい!水の階段だよ!」
タクミがニヤリと笑う。
「潜る手間が省けたな。やるじゃねえか、ジン。」
マグナ・ストライダーの脚部が水の階段を踏みしめ、漆黒の装甲が朝陽を反射する。ブースターが軽く唸り、水滴が飛び散る。一行が階段を下り、神殿内部へ向かう。
神殿の入り口はサンゴと貝殻に覆われ、青い光が水壁の隙間から漏れ出す。リアが辺りを見回す。
「見て、タクミ!魚がキラキラしてる!」
水壁の向こうで色とりどりの魚が群れをなし、泳いでいる。
タクミが風神の眼で神殿を見渡す。内心でほっこりする。
「こんな景色、現代じゃ見られねえな…。」
でも口には出さず、冷静に言う。
「気ぃ抜くなよ、風神の眼で見るかぎり次元獣が潜んでる。」
セリカが風影の爪を手に、水の階段を進みながら呟く。
「この神殿、貴族の金属片と同じ気配があるね。繋がってるのかも。」
ジンが竪琴を手に持つ。
「水の精霊が道を保ってるよ。このまま奥まで行ける!」
神殿内部は広大な水のホール。天井から光が差し込み、水壁に囲まれた空間に浮かぶ石柱が神秘的な影を落とす。階段がホール中央まで伸び、水の音が静かに響く。
突然、水壁が揺れ、次元獣「アクア・クローラー」が姿を現す。巨大な機械の甲殻類のような姿で、鋭い爪が水を切り裂く。金属の体が青い光を反射し、不気味に輝く。タクミが目を鋭くする。
「やっぱりな!ガイスト、行くぞ!」
マグナのドリルアームが展開し、ガイストが応答する。
「水流抵抗10%増。推力調整中。」
ブースターが唸り、水の階段上で青い軌跡を描く。
アクア・クローラーが爪を振り下ろし、マグナの熔魔鋼装甲に擦り傷を残す。タクミが身を翻し、ドリルで反撃。甲殻にヒビが入り、金属片が水壁に跳ね返る。リアがエーテル・ノヴァを掲げる。
「アイシクル・ストーム!」
氷の槍が次元獣の関節に刺さり、動きが鈍る。バルドが双剣で突進する。
「くっ!水中だと攻撃力が出ねぇ!」
だがバルドの剣が甲殻を切り裂き、火花が水の階段上で弾ける。
その時、セリカが手に持つ貴族の金属片が赤く脈打ち始める。彼女が目を細める。
「この気配…なんか変だよ!貴族に私たちの場所がバレたかもしれない!この金属片、次元獣に反応してる!」
タクミが振り返り、叫ぶ。
「何!?鍵の位置を知るために世界中の魔脈ラインを貴族たちは張ってるはずだ!このアクエリア大陸も例外じゃない!すぐに追っ手がくるぞ!」
セリカが冷たく頷く。
「貴族の魔術で反応する仕掛けか。捨てるべきだったね。」
水壁が轟音と共に裂け、貴族の魔術師団が姿を現す。黒いローブを纏った三人の魔術師が水の階段上に浮かび、それぞれが魔術回路の刻まれた杖を構える。先頭の魔術師が嘲笑う。
「見つけたぞ異邦人ども、ガルザーク様の命令だ。鍵を渡せば命だけは助けてやる!」
後ろの二人が同時に呪文を詠唱し、水壁から巨大な水の槍がタクミ達に向かって放たれる。
タクミがマグナを動かし、叫ぶ。
「ガイスト、フル推力で迎え撃て!」
ブースターが青い炎を噴き、水の槍をドリルアームで粉砕。破片が水の階段に降り注ぎ、蒸気が上がる。ジンが竪琴を高く掲げる。
「水の精霊、反撃だ!アクア・テンペスト!」
水壁が渦巻き、魔術師達を押し返すが、先頭の魔術師が杖を振り、水流を黒い霧に変える。霧が水の階段を覆い、一行の視界が奪われる。
セリカが風影の爪を構え、霧の中を疾走する。
「隠れても無駄だよ!」
爪が空を切り、霧が裂けると同時に魔術師の一人を背後から襲う。魔術師が悲鳴を上げ、水壁に叩きつけられる。だが、残る二人が咆哮し、アクア・クローラーが再び動き出す。
アクア・クローラーが水の階段を揺らし、巨大な爪でタクミを狙う。マグナが剣で受け止め、金属同士が激突し、水中に火花が散る。リアが叫ぶ。
「タクミ、全属性で行くよ!オールエレメント・ユニゾン!」
魔鋼剣に炎と氷と雷と風が渦巻き、剣が虹色に輝く。タクミが吠える。
「オールエレメント・ブレイク!」
剣が振り下ろされ、次元獣の甲殻を貫く。爆発が水壁を揺らし、アクア・クローラーが水の階段から弾き飛ばされる。
だが、先頭の魔術師が杖を振り上げ、叫ぶ。
「貴様らに鍵は渡さん!」
水壁が崩れ、巨大な水龍が現れる。水龍が咆哮し、タクミ達に向かって突進。バルドが双剣を交差させ、跳び上がる。
「風の民の試練を舐めるな!」
双剣が水龍の首を切り裂き、水しぶきが炸裂。だが、水龍が再生し、バルドを吹き飛ばす。
セシルがローブを翻し、魔脈の流れを感知する。
「水龍の核はあの魔術師だよ!私が援護する!」
ウィンドティアーズから青い光が放たれ、水の階段に風の結界を張る。水龍の動きが鈍り、タクミが叫ぶ。
「全員で仕掛けるぞ!ガイスト、最大出力だ!」
マグナのブースターが轟音を上げ、水の階段が震える。タクミが魔鋼剣を振り上げ、リアが全属性魔法を重ねる。
「タクミ!もう一発いくよ!オールエレメント・ユニゾン!」
剣が再び虹色に輝き、タクミが突進。
「オールエレメント・ブレイク!」
剣が水龍を貫き、爆発が水壁を突き破る。水龍が砕け散り、先頭の魔術師が膝をつく。
残る魔術師が杖を振り、黒い霧を再び放つが、セリカが爪で切り裂き、叫ぶ。
「逃がさないよ!」
爪が魔術師のローブを貫き、水の階段に叩き落とす。魔術師が呻き声を上げ、動かなくなる。
アクア・クローラーが最後の力を振り絞り、爪を振り上げる。タクミがマグナを旋回させ、ドリルアームを全力で突き出す。
「終わりだ!」
ドリルが次元獣の頭部を貫き、爆発が水の階段を揺らす。アクア・クローラーが崩れ落ち、水壁が静まる。
タクミが息を整え、仲間を見回す。
「貴族の魔術師も次元獣も片付けた。お前ら、すげえぜ!」
セリカが貴族の金属片を握り潰し、吐き捨てる。
「これで追跡はされないね。」
セリカが鋭く続ける。
「鉄都ガルザードで何か大きな動きがあるらしい。王都がクロノスの正体を握ってる可能性が高いよ。」
タクミが鍵を握り潰すように力を込めて言う。
「なら王都へ行くしかねえ。クロノスの正体を暴けば、貴族の企みも全て潰せる。」
水の階段の先、水に浮かぶ祭壇に「深脈の鍵」が輝く。青緑の結晶が水流を纏い、周囲に光の粒が漂う。タクミがマグナの手で結晶を掴む。手に持つと、水壁が一瞬静まり、穏やかな波紋が広がる。
タクミが風神の眼で鍵を見つめ、ガイストが報告する。
「魔脈エネルギー確認。水脈の安定度20%向上。」
バルドが双剣を収める。
「これでまた一歩進んだな。」
セシルが言う。
「バルドの動き、私が見てても安心だったよ。」
バルドが返す。
「お前の感知のおかげだぜ。」
一行が水の階段を上がり、神殿の入り口で休息を取る。リアが濡れた髪を振る。
「タクミ、私どうだった?」
タクミが笑う。
「出会った頃じゃ考えられない活躍だよ。」
一行がほっこりした空気の中で、次の目的地へ目を向ける。




