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第128話:嵐を越えて - 水の旅路

鉄都ガルザード、城の会議室。重厚な石壁に囲まれた部屋で、騎士団長ガルザークが兜を机に叩きつける。赤いマントが揺れ、目の前に立つ部下たちが怯えた顔で縮こまる。

「異邦人どもを見失っただと!?」

ガルザークの怒声が部屋に響き、剣を壁に突き刺す。

「なんのために鍵の情報を奴らに流したと思ってる!異邦人とその仲間が鍵を握ってる可能性があるんだぞ!貴族の魔術師と騎士団を総動員しろ、すぐに探し出せ!」


貴族の魔術師の一人がローブを翻し、低く呟く。

「次元の裂け目を広げる計画に鍵は不可欠です。奴らが先に手に入れたとなれば…」

ガルザークが目を血走らせ、吐き捨てる。

「ドルザード様の命令だ。失敗は許さん。奴らを見失った場所から追え、次元獣でも何でも使って見つけ出すんだ!」

衛兵たちが慌てて部屋を飛び出し、鉄都の空に緊張が漂う。


テンペスト大陸、ストームヘイヴン。夜空に星々が瞬き、港の近くで木造の帆船が静かに揺れる。嵐脈の洞窟から戻ったタクミ一行は、船の甲板に集まり、簡易式の焚き火を囲む。風が穏やかに帆を撫で、波の音が静かに響く。


バルドが「嵐脈の鍵」を手に持つ。白い結晶が微かに光り、風の民の紋様が浮かんでいる。

「親父の試練で手に入れたこいつ…貴族が狙ってる鍵なら、次が分かるはずだ。」

タクミが頷き、バルドに言う。

「テラノスで確かめてみようぜ。次の目的地が分かれば一歩リードだ。」


バルドが双剣を地面に置き、静かに呼びかける。

「テラノス、大地の導きを教えてくれ。」

地の精霊が現れ、黄色い光が甲板を照らす。バルドが「嵐脈の鍵」をかざすと、結晶が輝き、夜空に新たな光点が浮かぶ。星々が繋がり、星座の線が描かれる。ガイストが解析する。

「座標検出。アクエリア大陸、データ検索結果から深脈の神殿と判明。次の結晶の鍵の位置と一致。」

リアが目を輝かせる。

「水の大陸だ!次の鍵がそこにあるんだね!」

タクミが焚き火を見つめ、呟く。

「貴族より先に手に入れる。アクエリア大陸、行くぞ。」


朝の風が穏やかに港を撫で、波が石造りの波止場に静かに寄せる。タクミ一行は、ガルスが用意した木造の帆船の前で荷物を積み込む。船首には風の民の紋様が彫られ、帆布には微かな魔脈の光が宿っている。


ガルスが船縁に手を置き、タクミに言う。

「アクエリア大陸までは2日かかる。風嵐が落ち着いてる今がチャンスだ。この船、昔の風の民が魔脈を運ぶのに使ってた古いもんだが、まだ使えるぜ。」

タクミがマグナ・ストライダーを船尾に固定し、笑う。

「助かるよ、ガルス。魔脈ラインを追うのに船は必須だ。」

ガイストが淡い光を放ち、呟く。

「船体耐久度、基準で70%程度。補強推奨。」

タクミが肩をすくめる。

「十分だよ。こいつなら何とかなる。」


リアが甲板に飛び乗り、エーテル・ノヴァを抱えて叫ぶ。

「海の旅だよ!ワクワクするね、タクミ!」

その18歳の無邪気さに、タクミは30歳の自分との差を感じて少し目を逸らす。

「…お前、元気だな」と苦笑する。


バルドが双剣を腰に差しながら、船に乗り込む。

「風の民の船か。親父が生きてたら喜んだだろうな。」

セシルが隣で微笑む。

「バルドの故郷の力、ちゃんと受け継がれてるよ。」

二人の視線が交わり、静かな信頼感が漂う。


ジンが竪琴を手に船に乗り、軽く弦を鳴らす。

「海の詩が聞こえてくるよ。さて、どんな旅になるかな。」

セリカが荷物の中から貴族の金属片を取り出し、呟く。

「この印、風の民の紋様と似てるけど…何か違う。気になるね。」


船がテンペスト大陸を離れ、アクエリア大陸へ向かう。風が帆を膨らませ、波が船体を軽く揺らす。甲板では仲間たちが休息を取り、ガルスが用意した食材で昼食が始まる。


ジンが鍋からスープを掬い、言う。

「これは『嵐魚の煮込み』だってさ。風の民の伝統らしいよ。」

スープには灰色の魚の目玉が浮かび、タクミが眉をひそめる。

「魚の目がこっち見てんだけど…食うのか、これ?」


リアが笑いながらスプーンを差し出す。

「美味しいよ、タクミ!ほら、食べてみて!」

タクミが渋々口に運ぶと、意外な旨味に目を丸くする。

「…悪くねえな。お前、こういうの平気なんだな。」

リアが得意げに胸を張る。

「18歳でも冒険者だもん!何でも挑戦するよ!」


タクミは12歳の年齢差を意識し、心の中で呟く。

「俺が30歳でこんな若さに振り回されてるなんて…でも、嫌いじゃないな。」

その葛藤を隠して、軽く返す。

「お前が言うなら、次はお前が料理な。」

リアが「えーっ、私!?」と慌てる姿に仲間たちが笑う。


セリカが魚の骨を弄びながら言う。

「風の民の料理、悪くないね。貴族より庶民的で好きだよ。」

バルドが頷く。

「昔、親父が作ってくれた味に似てる。懐かしいぜ。」

セシルが静かに付け加える。

「バルドの故郷の味、私も覚えておくよ。いつか一緒に作れるといいね。」

バルドが穏やかに返す。

「…ああ、頼むよ。」


海上の船が静かに揺れる。甲板に簡易式の焚き火が灯り、仲間たちが輪になって座る。星空の下、タクミがマグナのメンテナンスをしながらガイストに話しかける。

「俺さ、この旅が始まる前は、こんな冒険なんて考えもしなかったぜ。」


ガイストが静かに返す。

「タクミの適応力、初期比で300%超えてる。仲間がいるからだよ。」

タクミが焚き火を見つめ、呟く。

「ああ、お前とこいつらがいるから頑張れる。30歳にもなって、こんな気持ち初めてだ。」

現代の記憶が頭をよぎるが、仲間には秘密のまま胸にしまう。


リアが近づき、聞く。

「タクミ、何か難しい顔してるよ?どうしたの?」

タクミが少し照れて誤魔化す。

「いや、昔の…なんでもねえ。お前みたいに18歳で冒険してる奴、すごいなってさ。」

リアが笑顔で返す。

「タクミだってすごいよ。私、頼りにしてるからね!」

タクミが小さく笑う。

「…ありがとな。」


翌朝、船がアクエリア大陸の岸辺に近づく。海と湖が広がり、島々が点在する風景が広がる。遠くに深脈の神殿のシルエットが霞んで見える。


セリカが貴族の金属片を手に呟く。

「この印、アクエリアの水脈と関係あるかも。謎が解けるといいね。」

バルドが船縁に立ち、双剣を握る。

「ここが次の戦場か。風の民として、魔脈を守るぜ。」

セシルが隣に立ち、言う。

「私も魔脈感知で支えるよ。一緒なら大丈夫だよね。」

バルドが頷く。

「ああ、お前の力があれば心強い。」


タクミがマグナを起動し、決意を固める。

「ガイスト、行くぞ!深脈の神殿で『深脈の鍵』を手にいれる。魔脈ラインを正す旅、仲間とならどこまででも行けるぜ。」

リアが拳を握る。

「私も全力で戦うよ、タクミ!」

一行が船を降り、深脈の神殿へ向かう。



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