第126話:風嵐の故郷 - 秘宝と絆
焔嵐大陸、熔鉄団のアジト。朝陽が煤けた石壁を照らし、広場の中央でマグナ・ストライダーが低く唸りながら起動準備を終える。漆黒の装甲に陽光が反射し、青白い魔脈エネルギーが這うラインが微かに脈打つ。全高6メートルの機体は肩の風切りブレードが鋭く光り、脚部の推力ブースターから熱気が立ち上る。
タクミがコックピットから降り、汗を拭いながら仲間を見回す。
「鉄都の裂け目は縮んだが、あの地下の小さな異音が気になる。ドルザードの企みは王都だけじゃないかもしれない。」
セシルがウィンドティアーズ・ローブを握り、静かに呟く。
「この大陸でも魔脈の流れが乱れてるよ。鉄都と同じ気配がする。」
セリカが貴族の紋章付きの金属片を手に持つ。
「鉄都で拾ったこれ、別の場所でも見つかるかも。これから行く先々で気をつけて見てみるよ。」
バルドが嵐の双剣を肩に担ぎ、風に揺れる髪を押さえる。
「なら俺の故郷、テンペスト大陸のストームヘイヴンに寄ってみねえか?風嵐の遺跡に魔脈の乱れを封じる秘宝があるって噂があって、昔から魔脈の話が伝わってる。」
タクミが風神の眼でストームヘイヴンの方角を見据え、魔脈の流れを緑の線で捉える。
「魔脈の乱れが次元獣の発生源に関係してるなら、風嵐の遺跡に何かあるはずだ。マグナを強化できる秘宝があるっていうなら、行ってみる価値はありそうだな。」
カザンが熔雷槌を地面に突き立て、豪快に笑う。
「テンペスト大陸の風嵐は荒れてるぜ。気をつけねえとな!」
ガイストが肩の周りに漂い、淡い光を放つ。
「風嵐の遺跡、魔脈エネルギー増幅の可能性あり。マグナの強化に適応可。」
タクミがニヤリと笑う。
「よし、マグナをパワーアップさせて魔脈の乱れを抑える。行くぜ!」
一行が荷物をまとめ、マグナの脚部ブースターが砂塵を巻き上げ、焔嵐大陸の荒野を後にする。
テンペスト大陸、ストームヘイヴン。風嵐が唸りを上げ、港町の波止場で船が大きく揺れる。20年前にシンダーリーブスとともに貴族の襲撃で壊滅した集落は、港町として復興しつつある。市場では商人や漁師がそこそこの賑わいを見せ、風に削られた石造りの家々が過去の傷跡を静かに物語る。
バルドが港の広場に立ち、懐かしさと複雑な表情で呟く。
「ここが俺の生まれ故郷だ。昔はもっと人が溢れてたが、今はこれでもマシになった方だな。」
リアがエーテル・ノヴァを手に、風に髪をなびかせて笑う。
「風が強いけど、魚の匂いがいいね!賑やかで楽しいよ!」
一行が広場の石造りの宿屋で休息を取る中、風に混じって足音が近づく。灰色のローブを纏った中年の男が現れ、驚いた声で言う。
「バルド…お前、生きてたのか?」
バルドが目を丸くし、駆け寄る。
「ガルス!親父の仲間だった…生きてたのかよ!」
ガルスが苦笑する。
「貴族にやられて以来、隠れて暮らしてた。バルドが帰ってきたなら話は別だ。お前ら、魔脈を調べに来たんだろ?」
セリカが爪を弄びながら鋭く見つめる。
「情報屋の勘だけど、あんた何か知ってるね?」
ガルスが頷き、手を差し出す。
「風の民として、魔脈ラインの知識は持ってる。風嵐の遺跡に魔脈の乱れを封じる秘宝があるって噂だ。俺が裏で手助けする。お前らに賭けてみるよ。」
タクミが握り返し、笑う。
「助かるぜ。ストームヘイヴンが味方なら心強いな。」
一行がガルスの案内で風嵐の遺跡へ向かう。崩れた石柱の間に小さな次元の裂け目が浮かび、黒い翼を持つ次元獣が風を切り裂いて飛び出す。タクミが叫ぶ。
「リア、魔鋼剣に魔法を頼む!」
マグナの左腕から全長3メートルの魔鋼剣が展開し、熔魔鋼が鋭く光る。リアがエーテル・ノヴァを掲げる。
「サンダー・ウェーブ!」
雷撃が剣に流れ込み、「雷属性剣」に変化。タクミが剣を振るうと、雷が魔獣を痺れさせ、右腕のドリルアームが唸りを上げて仕留める。
風嵐が遺跡を揺らし、新たな魔獣が裂け目から次々と現れる。リアが目を輝かせる。
「タクミ、全属性で行くよ!」
「フロストフレア・ヴォルテクス!」
剣が炎と氷と雷をまとい、「オールエレメント剣」に輝く。タクミが叫ぶ。
「行くぜ、リア!」
リアが声を合わせる。
「オールエレメント・ブレイク!」
マグナが剣を振り下ろすと、全属性のエネルギーが渦巻き、風嵐と混じり合って炸裂。魔獣が吹き飛び、石柱が砕け散る。地面に焦げ跡と氷柱が散乱し、裂け目が一瞬揺らぐ。
バルドが驚く。
「すげえ威力だ!風が止まるかと思ったぜ!」
ジンが微笑む。
「詩に残る一撃だね。」
セリカが裂け目近くの瓦礫から貴族の紋章付きの金属片を拾う。
「またこれだよ。貴族に隠密は無理っぽいね。」
戦闘後、一行が遺跡の奥へ進むと、風に削られた石の祭壇に古びた宝箱が現れる。タクミが蓋を開けると、「風嵐の結晶」と刻まれた青い宝石が輝き、微かな風の音が響く。ガイストが解析する。
「魔脈エネルギー増幅率、20%向上の可能性。マグナの強化に適応可。魔脈の乱れを封じる力を持つ可能性、85%。」
タクミが結晶を手に持つ。
「これが魔脈の乱れを封じる秘宝か。マグナに組み込めば、裂け目を抑えられるかもしれない。」
バルドが宝箱の横に置かれた石碑を見つめ、呟く。
「この文字…親父がよく話してた。」
石碑には「風嵐の民、魔脈を守れ」と刻まれ、彼の視線が遺跡の壁に彫られた紋様に移る。
バルドの瞳に記憶が蘇る。
――幼いバルドが父親と風嵐の中で木製の剣を手に持つ。
「バルド、お前は風の民だ。この地を守る力が俺たちにはある」と父親が笑い、剣を渡す。
風が唸る夜、バルドが叫ぶ。
「親父、俺強くなるよ!」
父親が肩を叩く。
「そうだ、その気持ちを忘れるな。お前がこの風を継ぐんだ。」
別の日、父親が風嵐の遺跡の話を聞かせる。
「魔脈ラインは世界を繋ぐ力だ。俺たちが守ってきた」と誇らしげに語り、バルドが目を輝かせる。
そして20年前、貴族の襲撃で風嵐が村を襲う。父親が魔獣と戦い、バルドを庇う。
「逃げろ、バルド!村を守るんだ!」
風の中に消える父親を、バルドが形見の剣を手に泣き叫びながら見送る――
バルドが石碑に触れ、目を潤ませる。
「親父が言ってたのはこれだ。魔脈ラインを守る風の民…俺が逃げてから、村はこうなっちまった。」
ガルスが近づき、肩を叩く。
「お前が逃げたんじゃない。あの日、俺も戦ったが魔獣に勝てなかった。親父さんはお前を生かすために命を張ったんだ。」
セシルが優しく言う。
「バルド、あなたのお父さんはこの地を守ったんだね。今、その意志をあなたが継いでるよ。」
リアが笑う。
「バルドのお父さん、すごい人だったんだね!」
ジンが竪琴を弾き、穏やかに響かせる。
「風の詩が聞こえるよ。バルドの親父さんがここにいる。」
タクミが風嵐の結晶を手に持つ。
「こいつでマグナを強化すれば、魔脈の乱れとも戦える。バルド、親父さんの分まで俺たちと一緒にやろうぜ。」
バルドが双剣を握り直し、決意を固める。
「ああ、親父の意志を継ぐ。魔脈を正す旅、俺も最後まで付き合うぜ。」
セリカが壁の紋様を指す。
「この紋様、魔脈ラインの地図みたいだね。世界中に広がってる。」
タクミが風神の眼で結晶を解析する。
「鉄都の装置は一部にすぎねえ。次元獣も魔脈の乱れから出てきてる可能性が高い。」
セシルが警告する。
「この遺跡、魔脈の乱れを抑えてたみたい。でも力が弱まってるよ。」
ガルスが約束する。
「ストームヘイヴンからなら物資や情報を集められる。俺が裏で支えるから、王都までの旅を頼む。」
一行が遺跡を出ると、遠くで新たな裂け目が風嵐の中に浮かぶ。タクミが決意する。
「王都だけじゃねえ。世界中で何かが起きてる。マグナを強化して、魔脈ラインを追うぞ。」
仲間たちが頷き合い、マグナのブースターが再び唸りを上げる。テンペスト大陸の風嵐の中、新たな旅が始まった。




