第125話:鉄の相棒 - マグナ・ストライダーの秘密
鉄都ガルザードから熔鉄団のアジトに戻ってきた一行。朝陽が煤けた石壁を照らし、広場の中央にマグナ・ストライダーが鎮座する。全高6メートルの漆黒の機体が陽光を反射し、青白い魔脈エネルギーが這うラインが微かに脈打つ。肩の風切りブレードが静かに佇み、全長6メートルの金属羽根が鋭く光る。脚部の推力ブースターからは熱気が立ち上り、接地した地面が微かに焦げている。戦闘の傷跡に赤熱した熔岩のような光が浮かび、熔魔鋼と天脈結晶の合金が陽光を鋭く跳ね返す。
タクミがマグナの脚元に座り、工具を手に右脚の装甲を調整する。汗と油で汚れた顔を拭いながら呟く。
「鉄都の戦いから戻って調整してりゃ、こいつも次は万全だな。」
仲間たちは広間に集まり、鉄都での戦闘後の疲れを癒すように思い思いに過ごす。カザンが熔雷槌を肩に担ぎ、マグナを見上げて笑う。
「おい、タクミ。お前んとこの鉄、鉄都でガルザークの鼻っ柱をへし折ってたな。でかいことやってくれたぜ!」
リアがエーテル・ノヴァを膝に置いて目を輝かせる。
「私の魔法だって負けてなかったよ!でもさ、マグナってどんなやつなんだろ?ずっと気になってたんだよね。」
ジンが竪琴を手に持ったまま、穏やかに尋ねる。
「あの鉄が戦場で動く姿、まるで詩みたいだよ。前から聞いてみたかったけど、どうやって作ったの?」
セリカが壁に寄りかかり、爪を弄びながら鋭い視線を向ける。
「情報屋として気になるね。こんなでかい鉄の塊が魔術師や魔獣と渡り合えるなんて、どうなってるのさ?」
セシルがウィンドティアーズ・ローブの裾を握り、静かに首をかしげる。
「この鉄、魔脈の流れが何か変だよ。タクミ、どうやって動かしてるの?」
タクミが工具を置いて立ち上がり、ニヤリと笑う。
「お前ら、そんなに気になるなら教えてやるよ。」
マグナの脚を軽く叩き、胸を張る。
「こいつはマグナ・ストライダー。俺が熔鉄団に入ってから作った相棒だ。元は『ストームライダー』って名前で、ゼノス戦でボロボロになったけど、1か月前に熔魔鋼と天脈結晶で完全に生まれ変わらせた。」
バルドが双剣を手に近づき、マグナを見上げる。
「ほう、ゼノス倒した後にグレードアップか。で、どうやって動いてるんだ?」
タクミがマグナの胸部を指差す。
「動力はここだ。『地脈リアクター』って俺が名付けた小型炉で、魔脈結晶を核にしてる。熔鉄団の技術と魔脈を組み合わせたもんで、推力は1万8000ニュートン。短時間なら時速220キロまで出せるぜ。」
カザンが熔雷槌を手に持って驚く。
「とんでもねえ力だな!?熔鉄団の鍛冶炉でもそんな勢いは出ねえぞ!どうやって抑えてんだ?」
タクミが脚部を指し、笑う。
「水晶深核で冷やしてる。脚の推力ブースターで加速すると地面が焦げるくらいの勢いだ。」
ブースターのノズルから微かに蒸気が漏れ、低く唸る振動がアジトに響く。
リアが跳ねるように立ち上がり、興奮気味に聞く。
「すごい!でも、どうやって操ってるの?魔法なら分かるけど、鉄が動くなんて…!」
タクミがマグナ・ヴェスト――神経接続スーツ――を手に持って見せる。
「これだ。俺の思考とリンクして動く。コックピットの中は『魔脈投影結晶』で360度覆われてて、外の景色がまるまる見える。魔脈結晶に魔術回路を刻んで作ったんだ。」
ジンが竪琴を軽く弾き、感心する。
「まるで詩人が世界を見渡すみたいだね。外に立ってるみたいに戦えるのか。」
タクミが頷く。
「ああ。ガイストがリアルタイムで情報を教えてくれる。ただ、試作だから時々見えづらいこともあるけどな。」
ガイストの声がコックピットから響く。
「魔脈投影結晶の安定性、85%。改良の余地あり。」
リアが「喋った!」と驚いて笑う。
セリカが一歩近づき、鋭く聞く。
「武器はどうなってるの?あのドリル、魔術師を一撃で仕留めてたよね。」
タクミが右腕を指す。
「これがドリルアーム。全長2.5メートルで、毎秒220回転。魔脈エネルギーで貫通力が上がってる。左腕には魔鋼剣、全長3メートル。熔魔鋼製で、リアの全属性魔法を付与すればトリニティ・ヴォルテクスで大ダメージだ。ただ、エネルギー食うし、リアの魔力もキツいからボス戦用だな。」
カザンが熔雷槌を手に持つ。
「熔魔鋼か…俺らの熔鉄より軽くて強いな。どうやって作った?」
「熔嵐合金をベースに、天脈結晶を混ぜて精製した。重量は35トン、馬車10台分くらいだ。」
バルドが肩の装備を指す。
「あの羽根みたいなのは何だ?風を切る音がすげえぞ。」
「風切りブレードだ。風の翼を改良したやつで、全長6メートル。速く動いたり風で攻撃したりする。旋回性能が15%上がるんだ。」
風切りブレードが微かに動き、鋭い風がアジトを切り裂く。セシルが呟く。
「魔脈が流れてるね。何か生きてるみたいに感じるよ。」
リアが手を振る。
「ねえ、タクミ!もっと強くならないの?これから貴族や次元獣と戦うんだから!」
タクミがマグナを見上げ、拳を握る。
「まだ完成じゃねえよ。もっと速く、もっと強くして、ドルザードの企みを暴く。こいつがなきゃ無理だからな。」
ガイストが補足する。
「進化の可能性、92%。タクミの腕次第。」
仲間たちが笑い合う。カザンが立ち上がり、熔雷槌を掲げる。
「よし、分かった!こいつは熔鉄団の誇りだな。次の戦いも頼むぜ、タクミ!」
タクミが笑い、マグナの装甲を叩く。
「当たり前だ。マグナと俺は離れねえよ。」
熔鉄団のアジトに笑い声が響き、朝陽がマグナを照らす。一行は王都大陸への旅立ちに向けて準備を始め、マグナ・ストライダー――タクミの鉄の相棒は、新たな戦いの舞台でその力を示す時を待っていた。




