第123話:塔を貫く絆 - 決着の旋律
鉄都ガルザードの城塔。夜明け前の薄暗い空が広がり、風が冷たく唸りを上げる中、セリカが魔脈結晶に肉薄していた。熱風が彼女の顔を焦がし、風影の爪を握る手が汗で震える。結晶の表面は赤と青の光を脈動させ、歪んだエネルギーが空気を重く圧迫する。彼女の前に立ち塞がる影の使者は5人。黒いローブを纏い、魔術の波動を帯びた手を掲げる。だが、セリカの瞳が鋭く光り、獣人の敏捷性が全身を駆け巡る。
「貴様らごときが、私を止められると思うな!」
彼女が一気に跳躍し、風を切り裂く勢いで爪を振るう。最初の使者の胸に爪が深々と突き刺さり、鮮血が弧を描いて石に飛び散る。叫び声が夜空に響き、次の瞬間、彼女は体を低くして横に滑り込み、2人目の足元を薙ぎ払う。敵が膝をつく間に爪を振り上げ、喉元を切り裂く。血飛沫が彼女の頬を濡らし、ローブに赤い染みが広がる。
残る3人が魔術を放ち、不規則な黒い弾幕が彼女を包囲する。ガイストの通信が割り込む。
「セリカ、初速160m/s、予測不能軌道25%。左回避推奨!」
セリカが左に跳ぶが、弾が右肩を掠め、ローブが焦げる。だが彼女は怯まず、唇を歪めて笑う。
「こんな玩具で私を仕留められるか!」
彼女が爪を両手に構え直し、全身をバネのように縮めて一気に跳躍する。空中で体を捻り、弾幕の隙間を縫うと、3人目の使者の背後に着地。爪が背中を貫き、骨が砕ける感触が手に伝わる。使者が倒れると同時に、残る2人が結晶を守るように立ち塞がる。
「タクミ、援護頼む!こいつら、しぶとい!」
セリカが2人の使者の間を縫うように結晶に迫り、爪を振り上げる。熱気が彼女の髪を激しく揺らし、汗が額から滴る。渾身の一撃が結晶に叩き込まれ、表面に深いヒビが走る。赤と青の光が乱反射し、エネルギーが不安定に明滅する。
「タクミ、今だ!干渉弾を!」
塔の基部では、マグナ・ストライダーが黒い波動に叩かれ、全身装甲が20%損傷していた。ドリルアームから火花が飛び散り、右脚が重く沈み込む。コックピット内でタクミが汗を拭い、マグナ・ヴェストの胸に嵌ったガイスト・フローターが赤く点滅する。
「トルク1万5000N・mに低下。機動力30%減。敵の次波動、予測3秒後」とガイストが報告。
「セリカが援護を求めてる…ガイスト、干渉弾の効果は?」
「結晶が魔脈からエネルギーを吸う波形を乱し、吸収を阻害。出力低下の可能性75%。ただし、結晶自体は破壊されない。物理攻撃で仕上げが必要。」
タクミが風神の眼を起動し、魔脈が緑の線で視界に浮かぶ。波動が不規則にうねり、左腕を直撃するが、彼は機体を立て直す。
「ジン、リア、セリカを援護しろ!俺は干渉弾で結晶を弱らせて突撃する!」
ジンが一歩進み、竪琴の弦を力強く弾く。清涼な音色が戦場を包み、水面のような波紋が広がる。
「水の精霊よ、我が旋律に響き合い、魔脈を清めなさい——アクエリア!」
青い水流が噴き出し、空中で人魚のシルエットが優雅に舞う。水が塔の側面を這い上がり、影の使者の魔術陣を削り取る。石が侵食され、金属が軋む音が響き渡る。
「敵魔術出力、15%低下」とガイストが報告。
リアがエーテル・ノヴァを振り上げ、全属性の魔力が渦巻く。
「私だって負けてられないよ!フレア・テンペスト!」
炎が塔を焦がし、熱気が空気を歪ませる。その攻撃に影の使者達はよろめく。
続けてリアが雷魔法を唱える。
「サンダー・ウェーブ!」
雷が回路を焼き切り、紫の火花が散る。結晶周辺が揺らぎ、影の使者が混乱する。
「装置出力、3万1500ニュートンに低下。敵統率、20%低下」とガイストが補足。
タクミがガンランチャーを構え、マグナを頂部へ駆けさせる。
「スラスター出力全開!!ガイスト、タイミングを合わせろ!」
「波形ピーク、0.5秒後。」
影の使者が魔術を放ち、不規則な黒い波動が迫る。タクミは風神の眼で軌道を読み切り回避。
干渉弾を発射する。
「行っけーー!!」
青白い衝撃波が塔全体を包み、結晶の光が不安定に揺らぎ、エネルギーの脈動が弱まる。
「結晶の吸収波形が乱れ、出力1万8000ニュートンに低下。結晶への魔脈流入が阻害された。」
タクミがマグナを突進させ、ドリルアームを振り上げる。
「セリカと俺で決める!」
ドリルが結晶に突き刺さり、セリカの爪が同時に反対側から打ち込まれる。赤と青の破片が四散し、眩い光が塔を包む。装置が沈黙し、魔脈ケーブルが火花を散らして力を失う。
地下では、ガレンが影脈会を率いて結晶炉に迫っていた。紫光が脈打ち、低い異音が響き、湿った空気が顔を叩く。影の使者8人が通路を埋め尽くし、魔術弾と槍で襲いかかる。ガレンが剣を構え、冷静に仲間を見回す。
「ザイン、ミラ、カイル、ダイン、全員で仕掛けるぞ。この炉を潰す!」
ザインが短剣を手に影に溶け込む。毒を塗った刃が闇から伸び、1人の使者の首筋を切り裂く。倒れる敵の背後で、ザインが冷たく笑う。
「毒が効くまで3秒。次の隙を作れ!」
カイルとダインが槍を手に進み、双子のような息の合った動きで2人の使者を挟み撃ちにする。カイルが槍を振り上げて敵の腕を弾き、ダインが下から突き上げて胸を貫く。血が通路に広がり、2人が拳を合わせる。
「連携なら俺たちに敵う奴はいねえ!」
ミラが後方から進み、癒しの光を放つ。
「ヒール・ルミナス!みんな、無理しないで!」
青白い輝きが仲間の傷を癒し、疲れを洗い流す。ガレンが剣を振り抜き、魔術弾を弾き返すと、通路の奥に結晶炉が見える。紫の光が脈打ち、エネルギーが空気を震わせる。
残る5人が一斉に魔術を放つが、ガレンが前に出て剣を振り回す。
「俺が道を開く!突撃だ!」
剣が魔術の波動を切り裂き、2人の使者を薙ぎ払う。血とローブの破片が飛び散り、ガレンの背中が汗で光る。ザインが横から飛び出し、短剣で3人目の喉を掻き切る。カイルとダインが槍で残る2人を押し込み、ミラが光で援護する。
ガレンが結晶炉に迫り、剣を振り上げる。
「これで終わりだ!」
刃が炉に突き刺さり、まばゆい紫の光が爆ぜて消える。衝撃波が通路を揺らし、魔脈ケーブルが力を失う。残る使者が撤退し、静寂が訪れた。
「敵全滅」とガレンが通信で報告。だが、地下深くから新たな振動が這い上がり、「魔脈歪み、収束せず。未知のエネルギー源、可能性80%」とガイストが警告する。
次元の裂け目が縮小し、空気が冷たく澄む。タクミがマグナから降り、ガイストが肩を漂う。仲間が集まり、汗と血にまみれた顔を見合わせる。
「やったな」
バルドが汗を拭い、笑う。
「私の魔法、見ててくれた!?」
リアが跳ねる。
「イグニスも満足してるぜ」
カザンが熔雷槌を地面に突き、息を吐く。
「次はもっと楽に勝ちたいね」
セリカが爪を拭きながら呟く。彼女のローブは血と焦げでボロボロだが、瞳は勝利の輝きに満ちている。
「詩に残る旋律になったよ」
ジンが竪琴を収め、微笑む。
「接続部は死んだが、異音が気になる」
ガレンが眉を寄せ、剣を鞘に収める。
「魔脈の歪み…まだ何かあるよ」
セシルがウィンドティアーズを握り、警告する。
タクミが装置の残骸を見下ろす。
「影の使者の目的、次元の真相…まだ終わってないな。次に備えるぞ」
彼が拳を握り、鋭く仲間を見据える。鉄都の夜に新たな決意が刻まれ、風が静かに彼らの髪を揺らした。




