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第114話「王都大陸への偵察(前編)」

翌朝、タクミとセリカは熔鉄団のアジトから出発する。熔鉄炉の残り火が赤くくすぶり、朝焼けが焔嵐大陸の荒々しい岩場を染める。カザンが熔鉄団の技術で仕上げた簡易サイドカー――熔嵐合金製の軽量カゴが、マグナ・ストライダーの背中にガッチリ固定されている。カゴの表面には熔けた鉄の跡が残り、頑丈さが一目で分かる。タクミはコックピットに乗り込み、ジョイスティックを握り、汗ばむ額を拭う。

「ガイスト、マグナの状態はどうだ?」

ガイストの球体が青く点滅し、コックピットのスピーカーから冷静な声が響く。

「マグナ稼働率92%、推力2万5000ニュートンで安定。火神の炉統合により耐熱性30%向上を確認。長距離偵察に最適を示している。」

タクミがセリカのカゴを振り返り、笑う。

「よし、鉄都ガルザードまで一直線だ。セリカ、準備OKか?」

セリカがカゴから身を乗り出し、風影の爪を手にニヤリと返す。

「いつでもいいよ。街の情報をしっかり集めてくるから任せて!」


マグナの風切りブレードが低く唸り、青白い魔脈蒸気が噴き出す。タクミがコックピットの窓から仲間たちを見やり、力強く叫ぶ。

「みんな、マグナを信じて待っててくれ!貴族の企みを暴いてくるぜ!」

リアがアジトの入り口で手を振る。

「気をつけてね、タクミ!セリカも!」

カザンが熔雷槌を担ぎ、豪快に叫ぶ。

「熔鉄団の技術を信じな!そのカゴはどんな嵐でも壊れねえぜ!」

ガイストがタクミに報告を重ねる。

「機体状態良好、エネルギー出力安定、システムオールグリーン!王都大陸へGOだ、タクミ!」

タクミがジョイスティックを押し込み、笑う。

「よし、ぶっ飛ばすぜ!」

マグナが焔嵐大陸の熔岩岩を蹴り上げ、推力2万5000ニュートンが大地を震わせる。6mの機体が跳ねるように動き出し、王都大陸へ向けて疾走する。朝焼けの赤が背後に遠ざかり、旅の幕が上がる。


焔嵐大陸の荒野を抜けると、風が熱を帯びた乾いた土埃を巻き上げる。マグナの脚部ブースターが唸り、時速220km/hで突き進む。タクミがモニターを見ながら呟く。

「ガイスト、王都大陸までどれくらいだ?」

ガイストが即座に計算する。

「焔嵐大陸から王都大陸までの推定距離、約5000km。マグナの最高時速220km/hで単純計算した場合、約22時間43分。地形と休息を考慮し、25時間程度を予測。」

タクミが頷く。

「25時間か…マグナならぶっ通しでもいけるが、セリカが持たねえな。途中で休憩入れるぜ。」


最初の数時間、焔嵐大陸の熔岩平原が続く。黒い岩場に赤い熔岩の筋が這い、遠くの火山が煙を吐く。マグナの足音が地面を震わせ、風切りブレードが空気を切り裂く音が響く。セリカがカゴで風に髪をなびかせ、叫ぶ。

「タクミ、この速度気持ちいいね!でも熱いよ!」

タクミが笑う。

「火神の炉のおかげでマグナは平気だ。耐えてくれよ、相棒!」


昼過ぎ、焔嵐大陸の端に差し掛かると、地平線にテンペスト大陸の嵐雲が見える。風が強まり、砂塵がマグナの装甲を叩く。タクミがカゴを振り返る。

「ガイスト、ここで一旦停めろ。セリカ、休憩だ。」

マグナが減速し、砂岩の影に着地。セリカがカゴから飛び降り、背伸びする。

「やっと地面だよ。耳がキーンってしてる。」

タクミが水筒を渡し、地図を広げる。

「まだ半分も来てねえ。テンペスト大陸の端を抜けて、王都大陸の南縁まであと12時間くらいだ。」

休息後、マグナは再び動き出す。テンペスト大陸の岩だらけの荒野を抜け、風嵐がマグナの装甲をガリガリと削る。夕暮れが近づくと、海が見え、王都大陸の灰色のシルエットが浮かぶ。


翌朝、約25時間の旅を終え、マグナが王都大陸の南縁に到達する。空気が重く、遠くに鉄都ガルザードの城が黒い影を落とす。灰色の煙が立ち上り、魔脈の歪みが空を薄く紫に染める。タクミが息を吐く。

「着いたぜ…ガイスト、カメラを起動してくれ。城と街の様子を撮るぞ。」

ガイストが応じる。

「了解。外部カメラ起動。映像記録と魔脈スキャンを開始。」


マグナのモニターに城の尖塔と城下町の喧騒が映し出される。尖塔には魔脈エネルギーの赤い光が脈打ち、城壁に奇妙な装置が並ぶ。街の外縁では荷車が慌ただしく動き、兵士が結晶を運ぶ姿が映る。タクミが目を細める。

「魔脈濃度が濃すぎる…貴族の残党が何か企んでる証拠だ。あの装置は何だ?」

ガイストが解析する。

「魔脈濃度解析中。装置の推定出力3万ニュートン以上。次元の歪みを増幅する可能性が高い。詳細な構造は不明、記録を推奨。」

タクミがズームを指示する。

「ズームしてくれ。あの結晶も怪しい。」

モニターが拡大し、荷車に積まれた魔脈結晶が映る。結晶には古代文字のような紋様が刻まれ、微かに黒い波動が漏れる。タクミが呟く。

「こいつ…ゼノスの残留波動に似てるが、見たことない紋様だ。記録しておけ。」


さらに上空を旋回すると、城の裏手に次元の裂け目が広がる。紫と黒の歪んだ空間から、低い唸りが響き、小型の次元獣が這い出す。タクミが驚く。

「次元獣がこんなに湧いてる…ガイスト、規模を解析しろ!」

「裂け目直径約50m、魔脈濃度38%増。次元獣の出現頻度、1時間に12体を確認。小型だが機械的特徴あり。」

タクミが拳を握る。

「貴族が次元の裂け目を弄ってる証拠だ。装置と結晶が鍵か…。」


街の上空では、兵士が城壁に魔脈砲を配置し、住民が不安げに空を見上げる。市場の喧騒が異様に静まり、遠くで馬の嘶きが響く。タクミが呟く。

「城だけじゃねえ、街全体が緊張してる。情報が多すぎて頭整理しきれねえぜ。」


マグナが街の外れに着地し、セリカがカゴから飛び降りる。足元の砂利がカサリと鳴り、風が埃を巻き上げる。セリカが風影の爪を手に、タクミを見上げる。

「タクミ、城の様子を頼むね。私は街の人や兵士から聞き出すよ。」

タクミがコックピットから応じる。

「お前、貴族の上層部に顔が割れてるんだから気をつけろよ。」

セリカがニヤリと笑う。

「猫の勘があるから大丈夫。行ってくる!」

セリカが街へと走り出し、マグナが再び上空へ舞い上がる。


鉄都ガルザードの城下町に潜入したセリカは、市場の喧騒に紛れる。果物を売る老婆に近づき、リンゴを手に取りながらさりげなく聞く。

「最近、貴族の動きってどうですか?」

老婆が目を細め、周りを気にしながら小声で答える。

「兵士が増えて、夜に変な音がするよ。あの不気味な裂け目みたいのは何なんだろうねぇ…。」


次に、酒場で酔った傭兵に近づく。セリカがビールを注文し、軽い口調で探る。

「城の警備がすごいね。何かあったの?」

傭兵がグラスを叩き、ぶっきらぼうに返す。

「空の裂け目がうるさくてな。貴族様が妙な機械を動かしてるって噂だ。俺ら傭兵も駆り出されて疲れちまったよ。」


さらに、街角で荷車を引く商人から話を聞く。セリカが荷物の革紐を直すふりで近づく。

「最近忙しそうだね。城から何か来てるの?」

商人が汗を拭い、不安げに呟く。

「魔脈結晶を運べって命令だよ。あの裂け目が広がってから、貴族の連中が急に焦ってるみたいだ。」


最後に、城門近くで休憩する衛兵に接触。セリカが物陰から近づき、猫耳をピクっと動かして聞く。

「大変そうだね。貴族様、何か企んでるの?」

衛兵が槍を立て、不機嫌に吐き捨てる。

「企むも何も、上から命令だ。貴族長ドルザード様が『世界に散らばる古の鍵を集めろ』って喚いてる。裂け目が暴走してて、俺らも頭抱えてるよ。」

セリカが目を鋭く光らせ、心の中で呟く。

「ドルザード…古の鍵?複数あるのか…?」


夕暮れ時、タクミはマグナを街の外れに戻し、セリカを待つ。空がオレンジに染まり、遠くの裂け目から不気味な唸りが響く。セリカが息を切らせて戻り、カゴに飛び乗る。

「タクミ、貴族があの裂け目で何かやってるらしいよ。街の人も兵士も落ち着かない感じだった。」

タクミがモニターを見せながら返す。

「ガイストのデータだと、城に次元の歪みを増幅する装置がある。魔脈結晶に変な紋様があって、次元獣が湧きまくってる。規模がデカすぎるぜ。」

セリカが耳を動かし、鋭く言う。

「それだけじゃないよ。貴族長ドルザードが『世界に散らばる古の鍵』を集めようとしてる。衛兵が漏らしてた。」

タクミが眉を寄せる。

「ドルザード…古の鍵?次元の裂け目と関係あるのか?ガイスト、データに何かヒントは?」

ガイストが解析を続ける。

「『古の鍵』に関する記録なし。ただし、次元の裂け目の異常波動と結晶の紋様に古代文明の痕跡を示唆。さらなる調査を推奨。」

タクミが拳を叩く。

「十分な情報は集まったが、警戒が必要だ。一旦みんなと合流して、作戦を立てるぜ。」

セリカが頷く。

「了解。私も街の雰囲気がヤバいと感じた。次はどうする?」

タクミがジョイスティックを握り直す。

「ガイスト、マグナで帰還だ。焔嵐大陸までぶっ飛ばすぜ!」


マグナの風切りブレードが唸り、推力2万5000ニュートンが轟く。夕陽を背に、不穏な空気を切り裂きながら一行のもとへ戻る。鉄都ガルザードの城が遠ざかり、次元の裂け目の紫光が不気味に揺らめく。



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