第102話「エリナに明かした真相」
朝焼けがヴェールウッドの森を赤く染め、木々の隙間から差し込む光が地面に柔らかな影を落としていた。村人たちが旅立つ一行を見送る準備を進め、スープの残り香がまだ朝の空気に漂う中、タクミはマグナ・ストライダーのそばで仲間たちと荷物を確認していた。カザンが熔雷槌を担ぎ、豪快に荷物を背負い直し、セリカが短剣を磨きながら猫耳をピクピク動かす。リアは上級魔導書を手に、ページをめくる音を小さく響かせていた。だが、タクミの視線は少し離れた場所で新政府の旗を調整するエリナに注がれていた。
「なぁ、エリナ」タクミが近づき、少し声を低くする。「ちょっといいか?」
エリナが振り返り、黒い髪を風になびかせながら怪訝そうに眉を上げる。
「なんだ、タクミ。旅の前に何か用か?」
タクミは一瞬迷ったが、意を決して口を開く。
「お前がみんなに『崖の下に倒れてた』って話してくれたけどさ…あれ、ちょっと違うんだ」
エリナの目が鋭くなる。タクミは深呼吸して、言葉を紡ぎ始めた。
「実は俺、日本って場所から来た。別の世界だ。転移してきた時、鉱山で奴隷として働かされてて、そこから必死に逃げ出したんだ。暗闇で崖から落ちて、怪我して動けなくなった時、お前が俺を見つけてくれた。それが本当の始まりだよ」
エリナはしばらく無言でタクミを見つめていた。朝焼けの光が彼女の瞳に映り、微かに揺れる。やがて小さく笑うと、タクミの肩を軽く叩いた。
「…そうか。妙な奴だとは思ってたが、別の世界からとはな。新政府を立てる私にとっちゃ驚きも慣れちまったよ」
彼女は真剣な目で続ける。「でも、お前が何者だろうと、この村を救ってくれたのは事実だ。それで十分だよ。旅で何か見つけたら、私にも教えてくれ」
タクミが苦笑しながら頷く。「ああ、約束するよ。いい土産話持ってくるぜ」
そのやり取りを遠くから見ていたリアが首をかしげ、セリカが耳をピクリと動かす。
「ねえ、タクミとエリナ、何か怪しい雰囲気じゃない?」
カザンが荷物を背負ったまま笑いながら返す。
「ほっとけよ。あいつが何か企んでるなら、この世界にとって救いになることだろ。俺はそう思うぜ」
ジンが竪琴を手に軽く爪弾き、「二人の絆が歌になるなら、いい旅の第一歩だな」と穏やかに言う。セシルが微笑みながら荷物を整え、「恋の始まりだったりして♪」と茶化す。バルドは無言で双剣を背に固定し、鋭い視線を森の奥に投げていた。
タクミが仲間たちのもとに戻り、マグナ・ストライダーのコックピットに乗り込む。ハッチが閉まり、魔脈投影結晶に森の奥が映し出されると、ガイストが軽い調子で言う。
「準備できたか、タクミ?魔脈ラインの最初の反応は森の北西だ。微弱だけど、確実に何かがある」
タクミが制御盤を叩き、力強く吼える。
「よし、出発だ!盗賊を追って、マグナを強化する旅が今始まるぞ!」
マグナ・ストライダーが一歩踏み出すと、脚部のブースターが低く唸り、地面に焦げ跡を残す。仲間たちがマグナ・ストライダーが引く荷車に乗りその後に続く。リアが上級魔導書を手にエーテル・ノヴァを掲げ、杖の先端が朝焼けに輝く。カザンが熔雷槌を肩に担ぎ、豪快に笑いながら歩き出し、セリカが軽快に跳ねて先頭を切る。バルドが静かに後方を固め、セシルとジンが穏やかな足取りで続く。
村人たちの見送る声が響き、子供たちが手を振る中、ヴェールウッドの森が新たな冒険の幕開けを見守った。マグナ・ストライダーの投影結晶に映る森の奥で、微かな青い光が一瞬だけ脈打つ。それは盗賊団の結晶か、それとも別の何かの兆しなのか――タクミは目を細め、ガイストに問う。
「なぁ、あの反応、結晶の可能性あるか?」
「データ上では一致するな。ただ、微弱すぎて距離が読めない。追ってみるしかないな」とガイストが冷静に返す。
タクミは小さく笑い、「なら、行くしかねえな」と呟いた。
一行が森の奥へ進むと、朝焼けの赤が徐々に薄れ、木々のざわめきが彼らの足音に混じり合う。どこか遠くで、風が不自然に強く吹き抜ける音が聞こえた気がした。




