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第100話「緑の遺跡と盗賊の影」

ヴェルディアの森は夏の陽光に浴し、鮮やかな緑が風に揺れていた。木々の隙間から漏れる光が地面にまだら模様を描き、遠くで小鳥のさえずりが響き合う。タクミはヴェールウッドの村外れに立ち、全高6メートルの「マグナ・ストライダー」を見上げていた。


一月前、貴族が「ゼルガノス・エクス・マキナ」と呼ぶ魔鋼巨人を、タクミたちは「ゼノス」と名付けて打ち倒した。あの戦いを経て、ストームライダーはタクミの手で生まれ変わった。熔魔鋼と天脈結晶の合金が陽光を鋭く反射し、漆黒に青白い光沢が混じる流線型の装甲が目を引く。肩部には風を切り裂くブレードが備わり、両腕のドリルアームには魔脈エネルギーが青い脈となって走る。脚部の推力ブースターは接地するたびに低く唸り、地面に焦げ跡を残す。


タクミはマグナ・ヴェスト――神経接続で機体とリンクするパイロットスーツ――を身に纏い、コックピットに飛び乗った。360度の魔脈投影結晶が森の風景を映し出し、風に揺れる葉の一枚一枚が鮮やかに浮かぶ。中央のホログラム制御盤には魔脈炉の出力が青い数値で刻まれ、タクミは思わず呟いた。

「現実の研究室じゃ、こんな景色ありえなかったな…」

ガイストの声が軽やかに響く。「空調とモニターのノイズしか知らないお前が、よく言うぜ。ここじゃ風も次元獣もリアルすぎるけどな」

「うるせえよ、相棒」とタクミが笑い返す。


その時、森がざわめき、地面が微かに震えた。投影結晶に映る村の方角から叫び声が響き、タクミが制御盤を叩く。

「魔脈濃度が急上昇!次元獣だ、タクミ!ヴェールウッドがやばいぞ!」ガイストの警告に、タクミは機体を急発進させた。ブースターが青白い炎を噴き、轟音が森を切り裂く。


村に着くと、新政府の旗が風に揺れ、その下にエリナが立っていた。黒髪をなびかせ、タクミを鋭く見据える彼女は、異世界に転移したばかりのタクミを導いた恩人であり、今や新時代の旗手だ。

「タクミ、子供が次元獣にさらわれた。森の奥だ、急いでくれ」

声は落ち着いているが、瞳に焦りが滲む。タクミは頷き、ハッチを開けた。


リアがエーテル・ノヴァを握って駆け寄る。「タクミ、私も行く。仲間を見捨てるなんてありえないよ」

バルドが無言で風嵐の双剣を構え、鋭い目で森の奥を見据える。カザンが熔雷槌を手に持つが、さすがに笑いはなく、「次元獣か…子供を無事に返すまでだ」と低い声で呟く。

セシルがエアリスウィスパーを手に柔らかく言う。「みんな、無理しないで。私が守るから」

ジンが竪琴を軽く爪弾き、「こういう時こそ歌が必要だろ」と穏やかに笑う。セリカが短剣をくるりと回し、「猫の勘が疼くよ。遺跡に潜んでるね、あいつら」と軽快に跳ねた。


エリナが森の奥を指す。「翠脈の迷宮って地下遺跡だ。そこに『天脈結晶』があるらしい。マグナ・ストライダーを次の敵に勝たせる鍵になる。頼むぞ、タクミ」

「天脈結晶か…ガイスト、反応は?」タクミが確認する。

「深度200メートルで検知してる。だが魔脈が暴走気味だ。崩落リスクが秒読み段階だぞ」ガイストの声に緊張が混じる。


翠脈の迷宮の石門は苔と蔦に覆われ、青い魔脈紋様が薄く光っていた。風が吹き抜けるたびに低く唸り、タクミが機体を進めると、内部の空気が一変。湿った土の匂いが鼻をつき、壁を這う魔脈の光が不気味に揺らめく。リアが杖を構えて呟く。「この光、綺麗だけど何かゾッとするね…」

バルドが双剣を握り、「気配がある。敵だ」と短く警告する。

カザンが槌を肩に担ぎ直し、「不気味だろうが何だろうが、やるしかねえだろ」と気合を入れる。


突然、暗闇から次元獣「風噬みの蛇」が飛び出した。全長30メートル、風を纏った鱗が刃のように輝き、咆哮が遺跡を震わせる。タクミはドリルアームを振り上げ、蛇の頭を狙う。衝撃で壁がひび割れ、ガイストが叫ぶ。「出力1万4000ニュートン、硬いぞ!遺跡の安定性が落ちてる、崩落まで15分しかない!」

「トラック1台分のパワーだ、ぶち抜ける!」タクミが吼え、機体が蛇に突進。リアが「フレア・インフェルノ」を放ち、炎が蛇の側面を焦がす。バルドの双剣が風を切り、カザンの熔雷槌が雷を帯びて鱗を砕く。だが蛇の尾が機体を弾き、マグナ・ストライダーが壁に激突。投影結晶に赤い警告が点滅する。


「くそっ、まだ動けるぞ!」タクミが歯を食いしばり、機体を立て直す。セシルが「大地の息吹」で傷ついた機体に緑の光を浴びせ、「少しでも持ちこたえて!」と祈るように言う。ジンが竪琴を鳴らし、「詩的鼓舞」で仲間を鼓舞する。「この音が届けば、まだ戦えるさ!」

セリカが短剣を手に蛇の動きを見切り、「目が弱点だよ、タクミ!」と叫ぶ。


緊迫の中、最深部に辿り着く。天脈結晶が台座で青白く輝き、魔脈の奔流が周囲を照らす。だがその瞬間、革鎧の盗賊団「疾風の爪」が影から現れた。リーダーの男が風を操る短剣を手に、不敵に笑う。

「その結晶、俺たちの獲物だ。お前らには渡さねえよ」

手下が素早く結晶を袋に詰め、風を纏った道具で一瞬にして逃走。タクミがブースターを噴かして追おうとするが、次元獣が再び襲いかかり、行く手を阻む。

「結晶がなきゃ強化できないんだよ!」タクミの叫びに、リアが杖を振り上げる。「タクミ、子供を救うのが先だよ!」


全員の連携が炸裂する。セシルの癒しが機体を支え、ジンの旋律が士気を高め、セリカの短剣が蛇の目を抉る。タクミがドリルアームを振り抜き、蛇の頭を貫く。魔脈の奔流が遺跡を照らし、次元獣が崩れ落ちる。だが、崩落が始まり、瓦礫の中から子供の泣き声が響く。タクミは機体の手で子供を包み、「目をつぶってろ!」と叫んだ。ブースターが青白い炎を噴き、轟音と共に遺跡を突き抜ける。土煙が舞う中、タクミは子供を抱えて地上へ脱出。投影結晶に森の緑と空の青が広がり、リアが子供に駆け寄る。

「もう大丈夫。私たちがいるよ」リアが優しく笑う。


村に戻ると、エリナが安堵の表情を見せる。「タクミ、さすがだ。お前がいなけりゃ村は終わりだった」

夜、村人たちが焚き火を囲み、スープと焼きたてのパンを差し出す。カザンがスープを一口飲んで、「次元獣よりマシな味だな」と少しだけ笑う。セシルが静かに微笑み、「みんな無事で良かった」と呟く。ジンが竪琴で穏やかな曲を奏で、「この平和も俺たちの戦いのおかげだろ」と軽く言う。セリカがタクミの隣に座り、スープを啜りながら首をかしげる。「盗賊より猫の方が賢いはずなのに、あいつら速かったねぇ」

バルドが焚き火を見つめ、「次は俺が斬る。あいつら許さん」と低い声で呟く。


タクミはスープの温かさを感じながら仲間を見回す。「現実じゃこんな仲間いなかった…でも、結晶がなきゃ次に勝てねえ」

ガイストが軽く返す。「その通りだ、タクミ。あいつらを追う準備、始めようぜ」


遠くの森で、盗賊団の影が揺れる。結晶の袋から青い光が漏れ、リーダーが闇の中で哄笑する。

「次はお前ら全員潰してやる。覚悟しとけ!」

その背後で、結晶が不気味に脈打ち、微かな「ゼノス」の残留波動が蠢き始める。そして、闇の奥から低い声が響いた――

「我を…呼び覚ます…時が来たか…」



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