金色狼の三勇士についての会話
訓練日の夕食時に誰かが「金色狼の三勇士」について、リトキスの口から話を聞きたいと言い出したらしい、俺が地下室の食料庫から葡萄酒を一瓶、持って戻るとリトキスが話し始めていた。
「──三勇士はオーディスワイアさん、アディーディンクさん、リゼミラさんの三人の事を指しています。破壊大剣のオーディス、小さき大魔法使いアディー、苛烈なる双剣のリゼミラ。そんな風に呼ばれていましたね」
そうリトキスが説明している所へ戻った俺は、一斉に仲間達に見られる事となった。
「破壊大剣……?」
「その呼び名は止めろぉ! リトキス! 昔話なんて聞かせてるんじゃぁない!」
俺は慌てて割って入ったが、仲間達は話の続きを求めてリトキスを急かす。
「まあ、皆も聞きたがっているみたいですし、いいじゃないですか。後世に残しておくのも先達の務めですよ」
残さんでいい、そう言いながら葡萄酒杯に赤葡萄酒を注ぐ。レーチェやリーファも一杯飲むつもりだったらしく、酒杯を用意していた。
「オーディスワイアさんが破壊大剣と呼ばれていた理由は、強力な剣技を使うと、その一撃で敵を倒し、さらにはその敵の部位を完膚無きまでに破壊し、素材を駄目にする事からそう名付けられたみたいですね」
それを聞くとメイがぼそっと呟く。
「駄目じゃん」
食卓の場は笑いに包まれた、リトキスも笑いながら続きを話し出す。
「そうですね、せっかく倒したのに素材も傷ついては台無しですから。──けれど、それほどの威力を持つ剣技を使える人が居ないのも事実でした。それで『破壊者』や『剛剣』などと呼ばれたんですね」
するとリトキスが思いついたように口にした。
「魔法剣って、そう言えばオーディスワイアさんの剣技に似ている所もありますね。遠距離に斬撃を撃ち出すのは違いますが、直接斬りつけながら衝撃を打ち込む様に使うと、威力が敵の体を引き裂く感じで──もしかすると、あの剣技に近い技も使えるようになるかもしれません」
その言葉にはっとした、もしかしたらカーリアは近距離で、相手に斬撃を直接叩き込む戦法の方が合っているかもしれない。
彼女の割と豪快に剣を振り抜く姿勢の剣技には、合っているはずだ。──今度助言をしてみよう。
その後もリトキスは三勇士の事について話し続けた。旅団の皆は小さな大魔法使いの事よりも、リゼミラが女だという事実に驚かされたようだ。
「リゼミラさんは大柄な人でしたね。オーディスワイアさんと同じくらいの身長で、──力強い人でした」
「筋肉達磨」
俺が付け足すと、リトキスは苦笑いをする。
「綺麗な人だったじゃないですか、それは……筋肉も凄かったかもしれませんが。訓練で相手をしてもらった時は、あの人の二振りの剣の猛攻の前に、為す術も無く打ち倒されたのを良く覚えています」
彼女の連撃を一本の剣で真似たのが、自分の剣技に加わった進化だとリトキスは話した。それでも手数はリゼミラの三分の一くらいだろうと語り、団員達はそれぞれの驚き方でそれを表した。
「リトキスさんの三倍って、いくら二本の剣を使うとしても、ちょっと考えられないんですが。誇張でなく?」
カムイの言葉に「う~~ん」と考え込んでから、こう口にする。
「もちろん実際の所はどうだったか分からないんですが、彼女の連撃が始まると、まったく反撃も出来なくなるんですね。その印象が強くって、全然手数が違うって思い込んでるかも……でも、彼女のあの圧倒的な連撃。あれを受ければたぶん納得するでしょうね」
そう話し、リトキスは突然俺の名前を呼んだ。
「そうだ。オーディスワイアさんは、あの二人がゲーシオン近くの街ファンディアに住んでいるのを知っていましたか? 少し前に、そこでお会いして話しをしたんですよ。今は二人のお子さんを育てているので、遊びに行く余裕が無かったそうですが、ミスランに行く時は是非オーディスワイアさんに会いたいって、仰っていました」
あの二人の子供か……駄目だ、まったく想像できない、そう言うと。
「あはは、普通の子供ですよ。長男が五歳で、長女の方は三歳だったかな……? 長男はもう木剣を手にして、母親と軽く練習したりしているって、アディーディンクさんが言っていました」
俺TUEEEE時代のオーディスワイアですらリゼミラの連撃が始まると防戦一方になっていた頃があったらしいですね。彼女の猛攻を弾き返して反撃する剣技を編み出してからは防戦一方で無くなったとか──あ、外伝に書いてあるとかじゃないです(笑)。




