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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第三章 秩序と断罪

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訓練日の団員達

シリーズ名『方舟大地フォロスハートの物語』から《外伝》と登場人物の設定などを読むこともできます。そちらも読んでみてください。

 リトキスが加入してからかなりの日数が経過した。すでに旅団員の面々は、この男の実力を認めており、訓練日では剣士を志望する者は皆、リトキスに実戦訓練を求めている──そんな有様だ。

 ……気になる事と言えばカーリアだ。この少女はリトキスと訓練をしようとはしないのだ。

 気になって理由を尋ねると……


「私とじゃ訓練にもならないでしょ、強さが違いすぎて。カムイやレンの方が剣の腕だけだったら、私よりずっと強いでしょ。私となんて……」

 あわわわわ、彼女の中の否定的開閉器ネガティブスイッチが入っちゃってるぞ。仲間からすっかり切り捨てられた、みたいに感じちゃっているのかもしれない。──こういう時は……!


「レーチェ、頼んだ」

 秘技「()()()」である!

「はっ? ……急になんですの」

「カーリアが剣技の腕を上げたくてもなかなか上手くならないうえに、カムイやレンはリトキスにべったりだから──ほら、彼女はまだ子供だぞ? もう少し優しく──いや、厳しくだな」

「優しくなのか厳しくなのか、はっきりして頂けません?」


 そう言いつつも「分かりましたわ」と言って、彼女がカーリアの剣術指導に当たる事になった。前にも言ったがレーチェは、リトキスから剣技を学んでおり、俺の様な力任せで我流の「()()()()()()()()」とは違う、洗練された剣技をするのだ──

 いや、俺の剣の技は転移門先に現れる、数々の敵と戦う為のものであって、対人戦闘向きでは無いのだ。……本当だぞ?


 とはいえ、俺もカーリアに何か強くなる為の助言アドバイスをしてやれるかもしれん。そう思って色々と考えていると、メイに引っ張られて敷物マットが敷かれた所まで連れて行かれる。

「おい、まさかこれは」

「私の訓練相手。レンやエアとは飽きた」

 ご丁寧に防具や、緩衝材かんしょうざい入り手袋グローブも渡される。


「脚に付けた防具で蹴ってもいいよ」

「いや、片脚義足で、蹴りなんてまともに出せないんだが」

 少女は「あ、そうか」と声を漏らしたが、相手を変更する気は無いみたいだ。


「いくよ」

 いつになく気迫のもった声で少女が言い、小さな鬼神が、体を左右に振って向かって来る。

「俺し、死んじゃうかも」

 俺の呟きは、敷地内で行われている訓練の音の中に掻き消されてしまった……


 *****


 メイとの戦闘訓練──これが得点ポイント制の拳闘試合なら、()()()()だし、損害判定ダメージ制の勝負なら──、やはり()()()()だった。


 少女の飛び後ろ回し蹴りを腕の防具ミットで受け止めたが、つるっと滑った蹴り脚がしたたかに側頭部に当たって、俺は倒れ込んでしまったのだ。

 まさか自分の最期さいごが、少女の蹴りを受けて終わろうとは、誰が想像できただろうか。……いや、むしろ。そうあって欲しいと思っている奴も居るのかもしれんが。

「だ、団長……大丈夫?」

 誰かが俺を呼んでいる──あ、まだ死んでないみたいだ。


 俺はゆっくりと上半身を起こした、頭(側頭部)が少し痛いが生きていた。考えてみれば防御して、威力はある程度弱めたはずだ。まともに喰らっていたら、無事かどうかは分からない。

「死んだかと思った」

 俺の言葉に、周囲に集まって来ていた団員達から、安堵あんどの溜め息が漏れた。


「ごめんなさい……」

 申し訳なさそうにメイが謝った。珍しくへこんでいる様子だ。

「ああ──まあ訓練とはいえこういう事もあるからな、お互い気をつけよう」


 頭だけでなく体中が痛い、少女の拳が防具を超えて、腹部や腕を殴りつけてきたみたいだ、あざになっているかもしれない。凄い威力だ。

 まったく、格闘少女(ロリ)は最強だぜ!

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