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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第三章 秩序と断罪

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管理局の来訪、不正者への疑惑

 翌日も全員で冒険に出るという仲間達。体調や魔力、精神的な事も考慮して、適当に休みを取るよう言っているのだが(もちろん休めば自分の手取りが少なくなる──歩合制ぶあいせいという奴だ)、ここの皆は稼ぎの事と言うよりは、自らの装備や旅団の発展について考えている面も大きい。


 俺が給湯設備や洗濯機を開発したので、さらに生活を豊かにする、新たな発明をしてくれるのではと期待しているらしいのだ。

「過剰な期待は止めてもらいたいが……ま、こつこつとだな」


 火を付ける着火器ライターは、以前からこのフォロスハートにはあるし、後は塵紙ティッシュペーパーか? そんな風に思っていたが、ある日。管理局から「柔らかい紙」の製法と、原材料の培養に成功した。という報告書が配布された。

 それによると水の神の住む都市ウンディードで水田を作り、綿草という葉っぱが綿の様になる水草を育てる事に成功し、その葉を利用して柔らかい紙を作る事に成功したという。


 その開発者はまだ若い少年だと書かれていた、ウンディードでは、そのような若くして活躍できる錬金術師が居るのかと感心する。


 *****


 仲間を見送った後、これは俺も何か生活が豊かになる発明品を作らなくては──そんな気持ちになる。明かりに関しては、魔力結晶を使った燈籠とうろうや発光結晶がある。冷蔵庫などはかなり前から作られているらしい(属性の力があるので熱したり冷やしたりする物は製造し易い為か?)。


 石鹸せっけん綿織物タオル、密封容器に包帯なども作られている。その他の物となると──それらの物よりも品質を高めた物などか? もしくはそれらの物を、より効率的に作り出す方法などを見つけ出す事だろうか。

 錬金術であっても、それは容易な事では無いが、今はこの旅団、もしくは宿舎や錬金工房で使える物について考えてみよう──


 そんな風に思っていると門の方から、誰かが声を掛けているのが聞こえた。

 門を開けて出てみると数人の男が立っていた。一人はいかにも管理局の人間といった感じの優男だが、その背後に居る連中は武装しており、男の護衛といった体格だ。


「突然申し訳ありません。『黒き錬金鍛冶の旅団』の拠点は、あちらの鍛冶屋で間違いありませんか?」

 優男の言葉に肯定すると、彼は近頃問題になってきた、冒険者の若者から搾取する様な行為を働く、無名の旅団があるというので、彼ら(「秩序班」とか言うらしい)は探している最中なのだと語る。


「ここは宿舎──ですか? 中を見せて頂きたいのですが」

「それは構わないが、生憎あいにくと仲間達は全員冒険に出てしまって居ないのだが。それに『黒き錬金鍛冶の旅団』の素性については、お宅らの『技術班』から話を聞けば、うちが真っ当な旅団だという事は分かってもらえると思う」


 旅団員に話を聞きたかったら午後にでも来てくれと言うと、男は素直に「分かりました、技術班の人間に聞いてみます」と答えた。

「あ、ちょっと待て。その聞き慣れない旅団って『金の禿鷲はげわし──』とか言うのも入ってるか?」

 俺がそう尋ねると優男は少し考える間を置いた後で「ええ、その旅団はおそらく『黒』だと睨んでいます」と言った。


「禿鷲」について何か知っているのかと尋ねられたので、だいぶ前に「ブサイク」とか「ブサイヌ」、とかいう名前の男が来た事があると説明しておいた。

 男はその事を手帳に書き込むと、「情報提供に感謝します」と頭を下げて去って行く。

 あの胡散臭いふてぶてしい男は、どうやら道を外した者達の仲間らしい。もし今度やって来たら取っ捕まえて、管理局に突き出さなければなるまい。


 この限りある、狭い世界の中で仲間を食い物にするなど、決して許される事では無いのだ。

最後の部分「限りある」場所じゃなかったら良いのかというと、そうではありません。

しかし狭い範囲だとその悪質さがすぐに露呈する。といった意味合いで言っています。この事は今回の話のキモとなる事なので詳しくは触れません。

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