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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第三章 秩序と断罪

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剣技の天才、魔法剣を使う

読んで楽しんで頂けると嬉しいです。

今回のオーディスワイアのおっさんぽさに笑ってもらえれば幸いです。


シリーズ名『方舟大地フォロスハートの物語』から《外伝》や登場人物の設定を読めるので、そちらもよろしくお願いします。

 朝になると窓を開け、窓際に飾った小鉢植物園テラリウムに光を浴びせる。自前の霧吹き(これも管理局に登録したら多少の金になるのか?)を使って少し水分を与えると、部屋を出て外へ向かう。


 まずは焔日ほむらびに向かって、いつもの祈りを捧げる──と、そこへやって来たリトキス。手には魔法の剣を持っている、昨日の宴会後に鞘も作ってやったのだ。

「おはようございます、火の神への祈りですか。熱心ですね」

 鍛冶屋にとって火の神と地の神は、欠かせない力の象徴だからな。と言うと、魔法の剣の使い方を教えてくれと言ってきた。一応昨日説明はしたが、実際使ってみないと分からないだろう。


 俺は倉庫にある、聖銀鉄鋼エルファリクスで作った盾を取り出して、リトキスから離れた場所に立つ。


「こう──ですか」

 剣を抜いて剣の魔法に集中すると、刀身から青白い凍気の刃が生成され、周囲に冷気を放ち出す。

「うわっ……これは、結構強力ですね」

つばに魔法の剣の影響が出なくなる様な措置はしてあるが、部分的なものだからな。注意して使え」

 盾を構えると俺は「撃って来い」と声を掛ける。


「いきますよ」

 リトキスは試し斬りをする感じで、凍気の刃を飛ばしてきた。盾で魔法の効果を軽減するが、弾かれた冷気が体を包み、一気に寒くなる。

 飛んできた斬撃の重さも、なかなかのものだ。かなり加減して振った攻撃でこれならば、リトキスの連撃に、この「魔法剣」が加われば鬼に金棒だ。


「ふぇえぇ──っくしょぃぃ──! チックショ──!」

 俺が盛大に()()()()をして悪態をくと、リトキスは笑い出す。

「ちょっ……なんですか、今のは──完全におっさん化してますよ」

 そう言って腹を抱えて笑い出す。

「やかましいわ、どうせ俺はおっさんだよ」


 剣に魔法剣の刃を乗せていると魔力を消費するので、戦闘終了したら、すぐに魔法剣を停止する事を説明して、倉庫に盾をしまい部屋へと戻る。

 玄関の下駄箱に乗せているテラリウムに水をやるのを忘れていた。小さな霧吹で水を与えていると二階からユナ、メイ、エアの三人が降りて来た。


 彼女らは朝の挨拶をして食堂の方へ向かう。

 おっといけない、今日は俺も朝食を作るのだった。

 調理場に慌てて向かうと、リーファとエウラがすでに料理を作っているところだ。


「すまん、遅れた──。おい、大丈夫か? エウラは料理が苦手らしいぞ」

 俺が言うとリーファは頷く。

「ええ、知っています。いま彼女が見ているのは馬鈴薯じゃがいもですから、砂時計さえ見ていれば大丈夫ですよ」

 俺はそれなら安心だなと、うっかり口にしてエウラからじとっと睨まれてしまう。調理場にある小さな冷蔵庫を開けると、林檎を薄く切って白葡萄酒(ワイン)(アルコールは飛ばしてある)と蜂蜜はちみつひたした物が入っていた。──そうだ、昨日のうちに用意していたのだった、すっかり忘れていた。


「何を作るのですか?」

「林檎と乾酪チーズのパイ包み焼き」

 リーファに尋ねられたのでそう答え、手を洗うとすぐに食材を用意して、一つ一つの材料を重ねていく。──林檎、乾酪、パイ生地、林檎、乾酪、パイ生地……それらをパイ生地で包んで、人数分を天火オーブンで焼き上げる。


 生野菜料理サラダは、リーファも作っていないようなので俺が用意する。

「エウラも手伝え、生野菜料理なら簡単だろ?」

 洗った野菜を切ったり、千切ちぎったりした物と、俺の作った調味酢ドレッシングを掛ければ完成だ。


 出来た物から食堂の方へ運ばせて、焼き上がった林檎と乾酪のパイ包み焼きを、皿に乗せて運んで行く。


 自分でこう言うのも何だが、俺の作る料理は皆「美味しい」と言って食べてくれる。ふふふふふ、悲しいかな。一人暮らしが長いと料理が上手くなる男が多いらしい……大きなお世話だ。

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