表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第三章 秩序と断罪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/585

歓迎会と副団長の座

シリーズ名『方舟大地フォロスハートの物語』から《外伝》や登場人物の設定を読む事ができるものを投稿しています。そちらも読んでもらえると嬉しいです。

 食堂に集まると簡単な祝宴が開かれた。リトキスは別に歓迎会など開かなくていい、という態度だったが、レーチェが押し切った。

「リトキスさんの為だけでなく、皆さんとの交流の為でもありますわ。思えばエウラさんやエアネル、レンネル、カーリアと多くの団員が入って来たというのに、歓迎会をしていませんでしたから」

「しょっちゅう宴会なんぞ開いている余裕は、うちの旅団には無いと、お前が言っていた気がするが? 旅団運営管理者として実際のところどうなんだ」

 俺の言葉にレーチェは、少しばかりあごに手を当てて考える──その結論は。


「だ、大丈夫ですわ!」

「おい、今どもったな⁉」

 追及しようとするとお嬢様ははぐらかし、リーファの持って来た皿を受け取ると、白いシーツを掛けたテーブルの上に並べる。


 祝宴と言ってもまあ簡素な物ではある。腸詰めに暗生草を使った調味料をえた物や、塩漬け肉に味を付けて低温で揚げた物。サンドイッチ、そして少々の赤葡萄酒(ワイン)や紅茶。──あとは林檎パイを切り分けた物が、大皿に乗せられて出された。


 リトキスはエウラやカムイ、ヴィナーなどと、すでに仲良くなった雰囲気ふんいきで会話をしている。──その半面、ウリスやカーリアは壁の花になっている。

 エアは料理に手を伸ばそうとし、それをレンにとがめられている。


「まあ、適当に始めて構わないでしょう。内輪のちょっとしたうたげですから」

 とレーチェが言い、皆が料理に手を伸ばす。──なぜ立食形式にしたのか、おそらく銘々(めいめい)が話し合いながら、飲み食い出来るようにとの配慮だろうが……俺は皿に、いくつかの料理を乗せるとカーリアの所へ向かう。


「遠慮せずに食え、育ち盛りなんだからな」

 空のままの皿を手にし、どれを取ろうかと迷っている少女は、俺が声を掛けるとサンドイッチと塩漬け肉の揚げ物を取った。


「団長──あの人、強いの? 全然そんな感じに見えない」

 少女は遠目からリトキスを見てそう評価する。彼女の考える強い男は、筋骨隆々(ムキムキ)の大男といった心象イメージなのだろう。


「それな。──よし、今度喧嘩(けんか)を売って来い。『ぬっふっふ、そんな貧弱そうな体の男など我が一撃で吹き飛ばしてくれよう』──とか言って」

 俺が以前カーリアが使っていた大仰な言い回しをすると少女は怒り出し、「エリステラは自分の事を『我』なんて言わない!」と、さらに「団長みたいなおっさんでもない」と言われてしまった。


「見た目で判断するな、見た目で。あんななりでも、ここミスランで五本の指に入る旅団の団長をしていた男だぞ。()()()()()()魔女っ子のカーリアなんぞ、片手で()()()()()()()()にされるわ」

 色々と納得がいかない様子で「む──っ」とむくれた顔をする。


 一皿目の料理を食べ終えるとレーチェが、俺とリトキスを呼んで挨拶をするように言う。俺にリトキスの「金色狼こんじきおおかみの旅団」時代の話をしろと言うのだ。


「あ──そうだな。リトキスは入団した当初は、いま一つ目立たない奴だったかな。だが半年くらいすると、若手の中でも剣技に優れた奴が居ると、噂に上がる様になっていったなぁ、俺と探索へ出たのはそんなに多くはなかったが。それでも相当な剣の使い手だというのは良く覚えている。「一撃のオーディス、連撃のリトキス」なんて事を言う奴も居たくらいだ」

 俺がそう言うと周りから「へぇ──」とか、「おぉ──」とか静かな歓声が上がる。

 言われた本人はいえいえ、と言う風に謙遜けんそんしているが。


「謙遜する事は無い。あの頃ですらあれだけ強かったんだ、──期待しているぞ」

 続けてリトキスが簡単な挨拶をする。なんともありふれた、お決まりの文句を述べた後で。

「オーディスワイアさんの率いる旅団に加わる事になるとは、思っていませんでした。かつてのこの人が『金色狼の三勇士』と呼ばれていた頃から、私達には憧れの様な人でしたから、とても光栄です。どうか団長共々よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げる。続けてレーチェがこんな事を言い出した。


「リトキスさんはわたくしの師匠でもあります。彼の強さや明晰めいせきな判断力などは、私には無いものですわ。だからここはリトキスさんに、副団長の座をゆずろうと思いますの」

 おぉ──と、仲間達の間から肯定的なのか、よく分からないが小さな歓声らしき声が漏れた。しかしリトキスはきっぱりと断ったのだ。


「いや、副団長はレーチェさんが続けてください。新入りの僕が副団長なんて、あなたが良くても旅団員は受け入れがたい事ですよ」

 反論しようとしたレーチェに「何を言われようと固辞します」と、彼女の意見を受け入れるつもりは無いと示す。


「まあそうだな。入ったばかりで副団長も無いだろう。まずは皆に実力を認めてもらってからでも遅くはない、それでいいだろ?」

 俺はそう言ってレーチェに引き下がるよう促す。


 彼女は渋々と言った感じで俺の意見を受け入れると、「わかりましたわ、私も性急過ぎました」と謝罪を口にして、宴会を続ける事になった。

カーリアの言う「エリステラ」は《外伝》で少し触れられています。

一風変わった魔法少女(?)が主人公の物語らしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ