昇華錬成
出来上がった銀の腕輪には、明確な変化が表れていた。
細かい花と蔦の意匠が美しい銀細工に、色とりどりの宝石の花が咲いたのである──それは柘榴石の花、青玉の花、翠玉の花、紫水晶の花の、四種類の美しい花が咲き誇る銀の腕輪だ。
「これは……?」
少女の驚きの声に、俺も少し興奮気味に答えたのである。
「昇華錬成だ」
俺は慌てて銀の腕輪に「鑑定」(探査魔法の一種)を掛けて性能を計ってみる。
「こりゃ、凄い」
自分の力でこれが成せたとは微塵も思っていない、これは正に昇華の奇跡が起きたのだ。
それはまるで、少女を護る為に生み出されたとしか言いようが無いものであった。通常の四大属性魔法の強化だけでなく(その威力強化倍率もとんでもない数値になっているが)、魔法抵抗、物理耐性強化、回避能力上昇など。
さらに「瞬間防壁」という特殊能力が発動するオマケ付きだ。
俺は少女に、君のお母さんや四大神が君を護る為に、昇華錬成を起こしたに違いないと言って、瞬間防壁の能力についても説明した。
身に着けた者が危機的状況になると、瞬間的に強力な防壁を張って守ってくれる能力だ。こんな特殊能力の付いた錬成物は、俺が聴いた話では三回も無い。途方もない数の錬成が行われた中でも、たったそれだけしか起きないからこその「奇跡」の錬成なのである。
「ありがとう、ございます……失敗しないでくれて……」
少女はまだぐずぐずと泣いていたが、鍛冶場には人が集まり出していた。先程の発光が人を呼び集めてしまったようだ。
俺はユナにこう言った。
「旅団のそのクソ野郎に言っておいてくれない? 絶対に失敗しないなんて噂を軽々しく流すんじゃねえ、って」
俺のその言葉に少女は笑い出して、相手は女の人ですよ、と言ったのだった。




