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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第三章 秩序と断罪

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宿舎で歓迎会を開く

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 レーチェ達に宴会の準備は任せる事にして、俺は出来上がった魔法の剣の刀身を磨いて、仕上げに入る事にした。

 鍔や柄をリトキスの持っていた剣を参考にし、完成系を想像しながら刃を研いでいく。リトキスの持っていた剣は、意外にも普通の鋼の剣だったが、かなりの強化が施されており、うっかり刃に指を乗せたら、そのまま()()()と指が落とされそうな、──そんな切れ味になっていた。


「刃に止まった天道虫てんとうむしが、真っ二つになってしまったんですよ」などとうそぶくリトキス、俺はお返しに。

「俺の作った魔法の剣は使うと()()()禿()()()()()()()らしいぜ」と対抗する。


「禿げ上がってはいませんわ!」

 店を出て行こうとしたレーチェが怒り出し、彼女の側でカーリアが平謝りする。そんな二人をなだめながら、ユナが宿舎へ行こうと促す。


 全員が鍛冶場を出ると俺は一人残され、魔法の剣を磨き、刃を研ぐ。──光を反射する銀色の刃に、赤や青の呪文が浮かび上がる。

 我ながら渾身の出来だと満足感を感じながら作業に入る。鍔と柄を取り付けていると、目に見えて素晴らしい長剣が完成したのだと感じる。


「今夜は赤飯だな」

 俺はそう口にして手にした剣を軽く振ってみる。風を斬る音も断ち切ってしまったのか、音は聞こえない。そう考えるとわくわくする。

 後は鞘を作るだけだが、それは宿舎の方で行う事にし、鍛冶場を出て鍵をすると、宿舎へと向かう。


 宿舎に着く頃に焔日ほむらびは、ちょうど地平の先へ沈むところだ。反対側から青い月火つきびが登り始める。──二つの色が上空で混じり合い、空が紫色に変色していく。


 宿舎に入ると慌ただしく食堂で動き回っている連中を放っておき、倉庫に鍛冶で使った道具などをしまい、素材置き場に入って鞘を作る素材を集める。──って、木材や革はどこだ?


 ごそごそと部屋の中を漁っていると、開けっ放しにしたドアの方からエウラが声を掛けてきた。木材や革は倉庫の方だと思いますよと言って、通路の反対側にある部屋に入って行く。

 棚や壁際に立て掛けられていないのを見ると、エウラの言う通り倉庫の方にしまわれたのだろう。

 部屋を出ると彼女は倉庫の奥から、長い木材と丸められた革を手にして出て来た。


「奥にまだいくつかありますが、どれを使いますか?」

「ああ──、いい。後は俺がやるから、ありがとう」

 エウラから素材を受け取り、調理場の方を手伝ってくれないかと言うと。

「わたし……料理はあんまり……」

 という返事が返って来て「お、おう……」と、思わず生返事なまへんじしてしまう。


 とぼとぼと食堂へ向かう彼女の背中に頭を下げてから、倉庫の奥へ向かい、そこにある素材から魔法の剣を納めるに相応ふさわしい物を選び出す。

 丈夫でしなやかな木材に、革を張り付けて補強し、石突きや鍔元に使う金具も、剣の形と合う物を選ぶ──と、そこへヴィナーがやって来て、食事の用意が出来たと告げる。


「あのリトキスさんって凄い人なんですね。あの若さで『金色狼こんじきおおかみ』の団長に選ばれるくらいですから、凄く強いんでしょう」

 食堂へ向かいながらヴィナーは口にする。


「それはまあ──昔の話だが、あいつの連撃は正確で強力だったなぁ……。なにしろ多くの敵に囲まれても、反撃からの連撃で三体を一瞬で仕留める腕だったから。今はもっと強くなっただろうな」

 俺がそう言うと彼女は、「ガチ強じゃないですか」と溜め息を漏らした。


「カムイだって、これからもっと強くなるかも知れないだろう。──お前もな、こつこつと積み重ねて行け。若者よ」

「……おっさん臭い」

「おっさんなんだよ、悪かったな」

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