宿舎で歓迎会を開く
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レーチェ達に宴会の準備は任せる事にして、俺は出来上がった魔法の剣の刀身を磨いて、仕上げに入る事にした。
鍔や柄をリトキスの持っていた剣を参考にし、完成系を想像しながら刃を研いでいく。リトキスの持っていた剣は、意外にも普通の鋼の剣だったが、かなりの強化が施されており、うっかり刃に指を乗せたら、そのまますとんと指が落とされそうな、──そんな切れ味になっていた。
「刃に止まった天道虫が、真っ二つになってしまったんですよ」などと嘯くリトキス、俺はお返しに。
「俺の作った魔法の剣は使うと金髪を禿げ上がらせるらしいぜ」と対抗する。
「禿げ上がってはいませんわ!」
店を出て行こうとしたレーチェが怒り出し、彼女の側でカーリアが平謝りする。そんな二人を宥めながら、ユナが宿舎へ行こうと促す。
全員が鍛冶場を出ると俺は一人残され、魔法の剣を磨き、刃を研ぐ。──光を反射する銀色の刃に、赤や青の呪文が浮かび上がる。
我ながら渾身の出来だと満足感を感じながら作業に入る。鍔と柄を取り付けていると、目に見えて素晴らしい長剣が完成したのだと感じる。
「今夜は赤飯だな」
俺はそう口にして手にした剣を軽く振ってみる。風を斬る音も断ち切ってしまったのか、音は聞こえない。そう考えるとわくわくする。
後は鞘を作るだけだが、それは宿舎の方で行う事にし、鍛冶場を出て鍵をすると、宿舎へと向かう。
宿舎に着く頃に焔日は、ちょうど地平の先へ沈むところだ。反対側から青い月火が登り始める。──二つの色が上空で混じり合い、空が紫色に変色していく。
宿舎に入ると慌ただしく食堂で動き回っている連中を放っておき、倉庫に鍛冶で使った道具などをしまい、素材置き場に入って鞘を作る素材を集める。──って、木材や革はどこだ?
ごそごそと部屋の中を漁っていると、開けっ放しにしたドアの方からエウラが声を掛けてきた。木材や革は倉庫の方だと思いますよと言って、通路の反対側にある部屋に入って行く。
棚や壁際に立て掛けられていないのを見ると、エウラの言う通り倉庫の方にしまわれたのだろう。
部屋を出ると彼女は倉庫の奥から、長い木材と丸められた革を手にして出て来た。
「奥にまだいくつかありますが、どれを使いますか?」
「ああ──、いい。後は俺がやるから、ありがとう」
エウラから素材を受け取り、調理場の方を手伝ってくれないかと言うと。
「わたし……料理はあんまり……」
という返事が返って来て「お、おう……」と、思わず生返事してしまう。
とぼとぼと食堂へ向かう彼女の背中に頭を下げてから、倉庫の奥へ向かい、そこにある素材から魔法の剣を納めるに相応しい物を選び出す。
丈夫でしなやかな木材に、革を張り付けて補強し、石突きや鍔元に使う金具も、剣の形と合う物を選ぶ──と、そこへヴィナーがやって来て、食事の用意が出来たと告げる。
「あのリトキスさんって凄い人なんですね。あの若さで『金色狼』の団長に選ばれるくらいですから、凄く強いんでしょう」
食堂へ向かいながらヴィナーは口にする。
「それはまあ──昔の話だが、あいつの連撃は正確で強力だったなぁ……。なにしろ多くの敵に囲まれても、反撃からの連撃で三体を一瞬で仕留める腕だったから。今はもっと強くなっただろうな」
俺がそう言うと彼女は、「ガチ強じゃないですか」と溜め息を漏らした。
「カムイだって、これからもっと強くなるかも知れないだろう。──お前もな、こつこつと積み重ねて行け。若者よ」
「……おっさん臭い」
「おっさんなんだよ、悪かったな」




