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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第二章 集いし者達

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ミスラン猫の物語

番外編。

猫のお話。


 あたしは猫。都市ミスランに住んでいる白猫よ。

 あたしは街に住んでいるの、家に住んでいる訳じゃないわ。

 あたしは色々な場所で、色々な名前を付けられているみたい。


 シロ、クモ(雲?)、マフモフ(?)、モリー(??)などなど……意味は分からないわ。呼んでる本人に聞いて頂戴ちょうだい


 あたしが昔から通っている鍛冶屋の爺さんが死んで、もうここには来なくていいか。……そう思っていたけれど、オーディスワイアとか呼ばれている男が、あの爺さんの代わりに、あたしに煮干しをくれるようになったの。

 だから、ここにも通い続ける事になったわ。別にどちらでもいいのだけれど。


 この鍛冶屋に何度も訪れているうちに、沢山の奴らと出会う事になったわ。中にはあたしの顔を見ると、悲鳴を上げて逃げようとする失礼な奴も居るけれど、大抵はいい連中よ。煮干しもくれるし、たまに身体を洗おうとするのは止めて欲しいけれど、仕方ないわ……じっと我慢よ。


 *****


 ああ、ここの連中は鍛冶屋近くの建物に住んでいるのね。

 ある日、敷地から聞き覚えのある声が聞こえたので行ってみたら、鍛冶屋に集まって来る連中(めすが多いのよね、気のせいかしら)が、敷地内で闘っていた。

 驚いたけれど、練習していたみたいね。あたしも子供の頃は母親相手に、狩りの練習をしたものよ。


 この屋敷の庭に来ると、誰も居ない時もあるけれど、居る時は大抵あたしを撫でたり、抱っこしたりするの。けれどね、お腹を抱き抱えるのは止めて頂戴。


 ずいぶん、この鍛冶屋周辺に居る事が増えてしまったわ。たまに別のところに行くと「あら、ひさしぶりねぇクモちゃん」とか「どこへ行ってたんだ? お前の飯を俺が食わされてたんだぞ」とか言われるようになった。


 なんだかんだ言っても、あの鍛冶屋の連中と居ると居心地が良いのよね。……だから五日ほど別の場所を歩き回ったりしたわ。あたしは街に住む猫、言うなればミスランの猫よ。


 *****


 そうして何度も鍛冶屋に行ったり、行かなかったりしているとある日、店が閉めっぱなしになっているの。

 とうとう潰れたんだわ。

 そう思った。


 けれど店は建て直す事になったみたい。しばらくは鍛冶屋ではなく、あっちの屋敷の方へ行きましょう。メイやユナ、エウラは、あたしを見つけると必ず構ってくれるのよ。

 ……オーディスワイアも、煮干しを用意して待っていてくれているみたい。


 ああ、これが、「結婚できない男は猫を飼う」って奴なのかしら。

 でも良いじゃない。毎日若い雌に囲まれて、あなたは幸せそうなんだもの。

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