四大精霊の加護
お読み頂き感謝です。
やっぱり決めるところは決める主人公が良いですよね(ね⁉)。
四大精霊の加護──四つの異なる属性全てを一つの錬成具に調和させる、高位錬成の中でも特別に難しい特殊強化錬成だ。特殊強化とは固有名で呼び交わされる錬成の事で、これを行えるのは熟練の上に、精緻を極める業を持つ者だけだとされている。
「それを形見に……何故だ?」
俺の問いに少女は震えながら俯き、顔を見せない様にして言葉を紡いだ。
「旅団の……小隊の先輩が、魔晶石と精霊結晶をやるから、これでその銀の腕輪に『四大精霊の加護』を錬成して貰えと……それくらいの覚悟をして、強さを求めないとダメだからって……」
そうか、これは少女に対する嫌がらせだったのだ。随分と金の掛かった虐めだなと、心の中でその相手に盛大に罵声を浴びせる──と同時に俺の中に沸々と沸き上がる想いが、どんどんと大きく形を成していく。
それは四つの力が俺に「やれ」と呼び掛けている様に感じた。
この様に言うとそれは幻聴だとか、思い違いだとか言う輩が居るだろう。
だがそれは違うのだ、ここフォロスハートでは。
俺は確かに四大精霊の神──即ちこの浮遊する大地に存在する四柱の神の意志を感じた。俺が初めて四大精霊の加護を成功した時も、この「呼び掛け」を聴いたのだ。
俺は少女に言った。
「大丈夫だ、必ず成功させてみせる」
俺は素材保管庫に足を運ぶと、一つの物を掴んで錬成方陣台(様々な図形が描かれた円形の台)に少女が渡した銀の腕輪と魔晶石、それぞれの精霊結晶を意味ある形に配列し、保管庫から持って来た物もそれらに組み込む──さて。
俺は台の前に立つと深呼吸をして、自らの内なる者に呼び掛けるつもりで言葉を発する。
「偉大なる四柱の神に申し上げる、我々を導き賜え。我々はあなたの忠実なる僕、あなたの剣、あなたの盾であり、あなたの子である。我々に力と、そのお恵みをお与え下さい」
『古き石の言葉を聴け、大地を覆い、地の底で眠る水の如く穏やかに、大気の中にあなたは居る。空を暗黒が覆うとも、我等を照らし導き賜え。大いなる力は全てあなた方の御名の下に、我土に帰りし時には、あなたの胸に抱かれて、それを思い出す者なり』
そう唱えると、錬成台の中に置かれた魔晶石や精霊結晶が光を放った。淡い、優しげな光だ。
それらは台の上をくるくると旋回すると、中央に置かれた銀の腕輪に飛び込んで、辺りは静かになった。
「成功だ」
振り返ると少女はぱあっと花を咲かせる様に微笑んで、涙をぽろぽろと流したのである……
「精霊石」を「精霊結晶」に変更しました。




