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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第二章 集いし者達

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エルニス(小獣人族)の来訪

『方舟大地フォロスハートの物語』から《外伝》や登場人物などの設定を読む事が出来るのでそちらもぜひ読んで評価や感想をいただけたらと思っております。

どうぞよろしくお願いします。

 管理局から出て鍛冶場に向かう途中で、変わった三人の獣人を見つけた。彼女らは背が低く、特徴的な耳を頭から生やし、きょろきょろと辺りを見回している。──エルニス(小獣人族)だろう。フォロスハートにエルニスがやって来るのは珍しい。俺もエルニスを見たのは、それが初めてだった。


 彼女らはレーチェが身に着けるのと同じ、ぴっちりと体を包む黒や白い衣服を身に纏い、それぞれの羽織はおり外套がいとうなどを身に着けているが、身体の線が浮き出る衣服を好んで身に帯びているらしかった。


「レーチェの親類かな?」

 そんな感想を口走るとエルニスの一人が、くるりとこちらを向いて、つかつかと空色に輝く革靴の(少し高くなった)かかとを鳴らしながら、こちらに近づいて来る。

 俺の目の前で立ち止まった彼女を見下ろす形になる。エルニスの背丈は、俺の腰くらいの高さしかないのだ。


「今あなたは聞き覚えのある名前を口にしましたね? 何と言いましたか……レーチャ……いえ、レーシェ……」

「レーチェ・ウィンデリア」

 俺が補足してやると、少女の姿の亜人──頭から黒いとがった長い耳が突き出ている──が、()()()笑顔を見せて、耳を動かしながら「それです!」と指を差す。

 声といい動作といい、何だか愛らしい少女の様であるが──、おそらくは年齢は見た目と比例しないだろう。彼女の事は、あくまで成人女性として扱った方が良さそうだ。


「あなたはレーチェ・ウィンデリアのお知り合いですか?」

 エルニスの女は(だいぶ)上にある、俺の顔に向けて話し掛ける。──ここは膝を突くべきなのだろうか? もしかすると、そうした行動を彼女らは嫌がったり、怒り出したりするのではないだろうか? レーチェからその辺りの事を聞いておくべきだった。長い黒髪と黒い長耳のエルニスの後方から、別のエルニスが二人やって来て、彼女の後ろに立った。


「こちらの男性はどなたですか?」

「ミリスリア様のお知り合いの方ですか?」

 などと声を出す少女──じゃない、エルニス達。俺は膝を折って屈み込み、彼女らの視線の高さに合わせる事にした。ずっと上を向かせるよりは、いいだろうと判断したのだ。


「レーチェは俺の旅団の仲間ですよ」

 そう言うとミリスリアと呼ばれた黒長耳のエルニスは、「おお」と声を上げて、じっと俺の目を見る。彼女からは甘い香りがしてきた。

 彼女の瞳は金色に近い色をしていて、ちょっと吊り目の気の強そうな目をしており、大きなその瞳でこちらを見ながら「ふむふむ」と頷いている。

「して旅団というのは何かな?」

 俺が説明しようとすると、後ろに居た銀髪のエルニスが耳打ちして、旅団の説明を始める──少々時間が掛かったが、彼女達を待つ事にした。


「おお、冒険者の──なるほど、なるほど。旅団の名とあなたの名前を尋ねてもよろしいかな?」

 そう言ってきたので、俺の名前と旅団名を告げると、彼女は頷いた。


「覚えておこう。すまないが我々はこれから、管理局という所へ行かなければならないのだが、──それがどこか教えてもらえないだろうか」

 彼女の求めに応じて道の先に見える、大きな建物を指し示し、あそこが管理局の入り口ですよと教えると、三人のエルニスは感謝の言葉を口にして頭を下げた。彼女らの頭には、それぞれ異なる形の耳が乗っていて、肌の色も三者三様だ。


「おお、あの大きな建物がやはり管理局だったか、ありがとうオーディスワイア殿。この礼をしに()()()、あなたの旅団に伺わせてもらいますぞ」

 彼女は仰々しくそう言うと、歩いて行った先で振り返り、小さな手を振り上げて別れを言い、道の先へ向かって行く。


 何とも愛らしい見た目をした種族だ。それでいて妙に女らしさを持ち合わせた見た目をしている。小柄なのだが肉付きが良く、むっちりとした太股やお尻が魅力的なのだ。……俺は別に幼女趣味という性癖はないのだが、エルニス特有の男を引きつけるフェロモンでも出ているのかもしれない──。そんな言い訳を心の中でしつつ、鍛冶場に戻る事にした。

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