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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第二章 集いし者達

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メイとの訓練

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 ヴィナーに精霊感応霊呪印が付与された、黄玉トパーズを取り付けた金の指輪を渡し。レーチェは真紅鉄鋼アウラバルカムで作り上げた魔法の剣を手に、エウラ、ユナ、リーファ、そしてヴィナーらと共に「暗黒の鉱山」へ向かい、魔法を使いまくって来いと指示を出しておいた(魔力のあふれる土地なので魔法を使い放題に近い状態になるのだ)。


 その他の者達も冒険に行かせたが、鍛冶場にメイだけが残され、彼女は宿舎で稽古けいこを付けてと言ってきた。

 ここで逃げる訳にも行くまい。俺は()()()()()()旅団宿舎へと向かった。メイは敷地の奥にある物置小屋の中から、分厚い敷物マットを引っ張り出してきて、その上で闘おうと言ってきた。

 敷物の広さはそれほどでも無いが、二枚を並べて敷くとそれなりの大きさになる。


 靴を脱いで小柄な少女と向き合ったが、こちらは片脚が義足なのだ。革鎧を身に着け、拳に緩衝材かんしょうざいを仕込んだ手袋を付けているとはいえ、メイの攻撃は激しい物だった。何とか横に回り込んで少女を捕まえようとしたが、俺はくるりと一回転して敷物に叩きつけられてしまう。


「ぐはぁっ、……! い、息が……!」

 背中からまともに落下した衝撃で息が詰まる、その後も少女と真剣な組み手が始まったが、こちらの拳はかわされ続けて反撃を受け、低い姿勢からふところに入り込まれて、背中(肩口)から体当たりする技を喰らい、大きく吹き飛ばされて敷物の端っこに尻餅をつく。


「ごほっ! ごほっ、……待て待て、俺を殺す気か。今、足が地面から離れたぞ」

 そう言うと、少女はあっけらかんと言う。

「団長、背丈が練習用にちょうどいいからつい。威力は抑えてるし大丈夫でしょ?」

 正に小さな鬼神である。だが俺も格闘には多少の覚えがある、やられっぱなしという訳にはいかない。


 立ち上がると少女と向き合い、敷物の真ん中で再び壮絶な()()()()()が始まった。こちらの攻撃を払って懐に飛び込もうとする少女の体を、横に移動しながら捕まえ、打撃の勢いを削ぎながら、彼女の首や腕を掴んで投げを打つ。


 受け身を取らせない背中からの叩きつけを見舞うと、少女が「うぐっ」と声を漏らして呻いた。

 綺麗に決まった首投げを受けたメイが、倒れたまま言った。

「……団長凄いね、格闘もやるんだ。こんな風に綺麗に投げられたのは初めてかも」

「体格差がありすぎて、こっちも倒れ込みながらじゃないと首に手が回せないんだ。訓練は他の奴とやりなさい」


 呼吸を整えながら上半身を起こす──まったく、革鎧を着けていても腹部にあざが残りそうだ。手加減をしろ、手加減を。

「次はこれ」

 メイはこちらの事など、お構い無しにそう言って、小屋から持ち出したのは殴打や蹴りの練習用に作った、打撃受け(ミット)だ。仕方ない、彼女に付き合う事にして、午後まで小さな鬼神の暴れるままにしてやったのである。

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