メイとの訓練
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ヴィナーに精霊感応霊呪印が付与された、黄玉を取り付けた金の指輪を渡し。レーチェは真紅鉄鋼で作り上げた魔法の剣を手に、エウラ、ユナ、リーファ、そしてヴィナーらと共に「暗黒の鉱山」へ向かい、魔法を使いまくって来いと指示を出しておいた(魔力の溢れる土地なので魔法を使い放題に近い状態になるのだ)。
その他の者達も冒険に行かせたが、鍛冶場にメイだけが残され、彼女は宿舎で稽古を付けてと言ってきた。
ここで逃げる訳にも行くまい。俺は覚悟を決めて旅団宿舎へと向かった。メイは敷地の奥にある物置小屋の中から、分厚い敷物を引っ張り出してきて、その上で闘おうと言ってきた。
敷物の広さはそれほどでも無いが、二枚を並べて敷くとそれなりの大きさになる。
靴を脱いで小柄な少女と向き合ったが、こちらは片脚が義足なのだ。革鎧を身に着け、拳に緩衝材を仕込んだ手袋を付けているとはいえ、メイの攻撃は激しい物だった。何とか横に回り込んで少女を捕まえようとしたが、俺はくるりと一回転して敷物に叩きつけられてしまう。
「ぐはぁっ、……! い、息が……!」
背中からまともに落下した衝撃で息が詰まる、その後も少女と真剣な組み手が始まったが、こちらの拳は躱され続けて反撃を受け、低い姿勢から懐に入り込まれて、背中(肩口)から体当たりする技を喰らい、大きく吹き飛ばされて敷物の端っこに尻餅をつく。
「ごほっ! ごほっ、……待て待て、俺を殺す気か。今、足が地面から離れたぞ」
そう言うと、少女はあっけらかんと言う。
「団長、背丈が練習用にちょうどいいからつい。威力は抑えてるし大丈夫でしょ?」
正に小さな鬼神である。だが俺も格闘には多少の覚えがある、やられっぱなしという訳にはいかない。
立ち上がると少女と向き合い、敷物の真ん中で再び壮絶などつきあいが始まった。こちらの攻撃を払って懐に飛び込もうとする少女の体を、横に移動しながら捕まえ、打撃の勢いを削ぎながら、彼女の首や腕を掴んで投げを打つ。
受け身を取らせない背中からの叩きつけを見舞うと、少女が「うぐっ」と声を漏らして呻いた。
綺麗に決まった首投げを受けたメイが、倒れたまま言った。
「……団長凄いね、格闘もやるんだ。こんな風に綺麗に投げられたのは初めてかも」
「体格差がありすぎて、こっちも倒れ込みながらじゃないと首に手が回せないんだ。訓練は他の奴とやりなさい」
呼吸を整えながら上半身を起こす──まったく、革鎧を着けていても腹部に痣が残りそうだ。手加減をしろ、手加減を。
「次はこれ」
メイはこちらの事など、お構い無しにそう言って、小屋から持ち出したのは殴打や蹴りの練習用に作った、打撃受けだ。仕方ない、彼女に付き合う事にして、午後まで小さな鬼神の暴れるままにしてやったのである。




