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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第二章 集いし者達

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精霊感応霊呪印の錬成

『風の道行く先を示したまえ。我にしるしを、我にきざしを、我に、我等に。あまねく時の中に惑う者に、しるべをお与え下さ──ぁあっ』

 俺は思わず声を上げた、三度目の失敗だ。砂とも灰とも分からぬ物へと朽ち果てた宝石を見て、怒りに震える。


「誰だ!『三度目の正直』などとほざいた奴は! ぶん殴ってやる‼」

「もったいない……」

 俺の後方で見ていたヴィナーが、ぼそっとつぶやく、じろりと睨むと彼女は──ふいっと顔を背けて鍛冶場の入り口の方を見る。


「くそぅ……俺の風の神への信仰心が足らないせいか? いや、まて、まだ決めつけるな。これは俺の未熟──そう、まだだ、まだおわってなぁぁぁぁぁぃい!」

 俺の絶叫を聞いてヴィナーが小声で「壊れた」と呟いたのが聞こえた。


 もう一度整理して考える。

 風の、そして雷の力を操る魔法の習得を──そこだ。風だけではなく雷への接近アプローチが足りなかった。

「雷は風だけの物じゃない。火山の中にも雷は発生している──「火」だ。風と火、この二つへの接近アプローチが必要だったのか」


 俺は日誌にその事を書き込むと、新たな詠唱を手元の布切れに書き殴る。

 よし、これだ。こう呼び掛けるのだ。間違いない!


 俺は立ち上がると素材保管庫を開けて、中から柘榴石ガーネットと火の精霊石と精霊結晶を取り出し、それらと翡翠ヒスイなどを集めて錬成台に配置していく。


『風の行く先、火の中に眠る雷。けぶる山に吹き上げる風のごとく、我に印を、我に兆しを、我に、我等に。普く時の中に惑う者に、標を示し、迷える者にお慈悲をお与え下さい』

 詠唱が終わると錬成台の上で、それぞれの素材が光へと変わり、緑と赤の光が混じり合うと黄色の光が生み出され、中央の柘榴石と翡翠に落下してジリジリと音を立てて放電する。


 錬成台の中央には翡翠と柘榴石が消えて、大きな黄玉トパーズが出現した。その宝石の中には白、あるいは蒼い刻印が刻まれ、光を反射する度に違った模様を映し出す。


「成功だ! よし。書いておこう」

 俺は黄玉を見ながら日誌に詠唱した呪文などを細かく書き記し、黄玉を取り付ける金の指輪の意匠デザインを考えていた。


「そうやって、考えながら作業するんですね。初めから答があるのだとばかり思っていました」

 ヴィナーが驚いた様子で口にした。

「人によって呼び掛け──呪文の詠唱が変わる事もある。魔法もそうだ、その使い手の()()()()()()()()()()()()()、それが()()()()()()()のだ。答えは人の違いによって変化するものだ」


 彼女は魔法使いの真理の一端に触れた様な表情をして見せ、こう述べた。

「今度は私が『轟雷』やその他の魔法を覚えて、旅団長を驚かせて見せますよ」

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