魔剣士の誕生
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翌朝になると旅団員が鍛冶場に集合した。狭い店内に十一人もの団員が集まると、それだけで室温が上がってしまう。
「今日は三つの班に分かれて、それぞれの探索場所へ向かってもらう。レーチェ班、ユナ班、カムイ班に分かれてもらう」
それぞれの団員を振り分けると、レーチェ班にカーリアを組み込んで、ユナとかの班は先に探索に向かわせた。
「カーリア」と少女を呼ぶと、昨日作っておいた魔法の剣をカーリアに手渡す。
「今日からこの剣を使って中衛に立て。今まで後方から見ていた事を思い出し、どうやって仲間に協力すればいいかを見極めて戦う事に注意しろ。この剣は、今までの武器とは違った使い方を意識して使うんだ。その使い方は──」
俺は少女に魔法の剣の扱い方を教え、後は実戦で学ぶよう言う。彼女の事はレーチェに任せ、団員を送り出す──。レーチェも何か言いたそうにしていたが、俺の決断を信用したのか、特に何も口にせず「行って参りますわ」と応えて、鍛冶場を出て行く。
そして午後になると、一番早く帰って来たのがレーチェ達の班であった。何故かレーチェが怒った顔をして詰め寄って来る。
「ちょっと、ちょっと! 何なんですの⁉ あなたの作ったあの剣は⁉ お陰で髪が#$%&──!」
後半はよく聞き取れなかったが、リーファが言うには、カーリアが剣に火を(見た目には赤熱する熱波の刃を)纏わせた状態で振るうと、炎の刃が飛んで行き、敵を遠距離から攻撃できる。だが、中衛でいきなり剣に火を纏わせた時に、剣の先にあったレーチェの髪に火が付いて、戦闘どころでは無くなってしまったらしい。
「危うく丸焦げですわ‼」
そう激昂するお嬢様の後方で項垂れ、反省しているカーリアを呼ぶ。
「魔法剣を使う時は、周りに注意しろとあらかじめ言っておいただろう。……レーチェの頭が禿上がったらどうするつもりだ」
めっ、という感じでカーリアを叱っていると、レーチェが「禿てなんかいませんわ!」と長い金髪を優雅に手で靡かせる。その際、焦げて縮れた毛先が見えて「私の髪があぁぁ!」と大袈裟に喚く。
「長すぎるんだよ、冒険には不向きな波形髪も止めた方がいいんじゃないか」
「か、髪の優雅さは淑女の嗜みでしてよ⁉」
「え、淑女? どこどこ、どこですかぁ──?」
「あなた、私を怒らせたい様ですわね……!」
物騒な気配を漂わせたお嬢様の前にカーリアが立ちはだかり、「ごめんなさい!」と大きく頭を下げた。少女の真剣な謝罪に毒気を抜かれたのか、レーチェは一歩後退すると狼狽えた様子で。
「ま、まあ、誰にでも間違いはあるものですから、あまり人の過ちを責めるのも、よくありませんわね」
と矛を収めてくれた。
「それにしても、あなたいったい何を作って彼女に与えたんですの」
旅団の宿舎で食事をする前に、皆に食堂で話しをする事にした。
椅子に座りリーファに櫛を持たせ、髪を梳かせながら言うレーチェ。ふんぞり返る格好をしているが、胸を強調している様にしか見えない。
「カーリアには『魔剣士』として戦ってもらう。魔剣士とは、剣に魔法の効果を宿して、その属性の刃を斬撃と共に撃ち出す剣士の事だ」
俺は魔法の剣に四属性の力を纏わせて、斬撃として放つ仕組みを組み込んだと説明し、新しい魔法と剣を組み合わせた「魔法剣」をカーリアに使ってもらうと宣言する。
「その剣、私にも使えますの? 是非試してみたいですわ」
「カーリアの剣は四つの属性に対応する、錬成に苦労する物だったが、レーチェが使うのなら、風と土属性に対応した魔法の剣を作ればいいんだが。……でも何で、お前の使える攻撃魔法は対立属性なんだよ。お陰で魔法の剣を錬成するにしても、霊晶石が必要になるじゃないか……」
俺が思わず専門的な愚痴を零すと、お嬢様は言った。
「そんなの私が知りたいですわ!」




